特定一階段等防火対象物とは/該当するとどのような消防法令規制があるか

特定一階段等防火対象物とは/該当するとどのような消防法令規制があるか

高天井

特定一階段等防火対象物 (以下、特一とします)と呼ばれている種類の建物があります。この特一に該当すると、面積に関係なく強制的に「自動火災報知設備」の設置が義務付けられます。

特一は、地下または3階以上の階に「特定用途」が入居する建物で、「屋内階段が1系統」の建物をいいます。強制的に自火報の設置が義務になるくらい火災による危険度の高い建物という位置付けになっていると言うことができます。

特定用途(いろいろな人が使用可) 非特定用途(使う人が決まっている)

劇場、カラオケ、飲食店、お店、ホテル、病院、スーパー銭湯、その他

マンションやアパート、学校、図書館、倉庫、事務所、不動産店舗、美容室、整体院、その他

特定用途とは、「不特定多数」の人々が使用する用途で、例えば、飲食店、物販、ホテルなどです。細かい用途に関しましては消防施行令別表第一に記載されていますので、よろしければ下リンクをご参照ください。

また、特一(とくいち)は、自火報の設置義務以外にも、消防法令上の避難はしごの設置基準や、防火管理体制に関する取り扱いが通常の規制よりも厳しくなります。今回は簡単に

特定一階段等防火対象物の概要

別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項又は(九)項イに掲げる防火対象物の用途に供される部分が避難階(建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第十三条第一号に規定する避難階をいう。以下同じ。)以外の階(一階及び二階を除くものとし、総務省令で定める避難上有効な開口部を有しない壁で区画されている部分が存する場合にあつては、その区画された部分とする。以下この号、第二十一条第一項第七号、第三十五条第一項第四号及び第三十六条第二項第三号において「避難階以外の階」という。)に存する防火対象物で、当該避難階以外の階から避難階又は地上に直通する階段(建築基準法施行令第二十六条に規定する傾斜路を含む。以下同じ。)が二(当該階段が屋外に設けられ、又は総務省令で定める避難上有効な構造を有する場合にあつては、一)以上設けられていないもの

e-Gov:消防法施行令

ざっくり書きますと、避難階以外の階の地下、3階以上に特定用途が入居していない物件で、地上または避難階への直通避難階段(屋内階段)が1系統のものを言います。

階段は屋内階段なので、もし屋外階段であれば「特定一階段等防火対象物」には該当しないということになります。

特定一階段等防火対象物のチェック

特定一階段を確認するチェックリスト

  • 避難階以外の地下または3階以上に、特定用途が入居ている
  • 避難階への直通階段【屋内階段】が1系統
  • 屋内避難用階段が2系統ある場合、区画壁があり2系統の階段を使用することができない

上の全てに該当すると「特定一階段等防火対象物」になります。
※特殊な建物もあるので一概には言えませんが、原則的に特一対象物となります。

【例1】
地上3階/屋内階段1系統

参考記事:特定用途と非特定用途

該当する場合

特定一階段防火対象物

開口部の内区画壁画像

特一に該当する場合は、屋内階段が1系統で地下又は3階以上に特定用途が入居する防火対象物です。
上の図は単純に屋内階段が1系統なので、地下か3階以上の用途を確認すればすぐわかります。

では、階段が2系統ある場合はどうでしょうか?階段が2系統あれば、特一に該当しませんが、下の図の場合開口部のない区画壁が設置されています。この場合は2系統の階段を使用することができません。そのため、特一となります。実際の物件では、3階建ての長屋の3階に飲食店が入っている場合などが考えられるでしょう。

特定用途の例

劇場、集会場、キャバレー、遊技場、性風俗、カラオケ、飲食店、物販、ホテル、病院、福祉施設、蒸気浴場  ※特定用途と非特定用途

番外編

特定一階段防火対象物の画像
単体の用途が非特定でも主たる用途が特定の場合は特定用途になる

通常倉庫は非特定用途のため、図の場合は特一にはなりません。ですが、使用しているテナントが飲食店営業の倉庫や、物販に付随する倉庫の場合は、特定用途として取り扱われています。特定用途に付随する倉庫や事務所の場合はご注意ください。

該当しない場合

建物の構造
開口部がなくても屋外階段なので該当しない
開口部がなくても屋外階段なので該当しない

特一は屋外に避難階段が設置されている場合は該当しません。稀に、パっと見で屋外階段のような形状をしている場合や、確認申請で屋内階段となっている場合があるので注意が必要です。

特定一階段等防火対象物に該当する場合の影響

再鳴動式自動火災報知設備が義務設置になる

P型2級火災受信機
再鳴動式の火災受信機P型2級

特一に該当する場合は面積に関係なく建物全館に義務設置になります。また、火災受信機は再鳴動方式の設置が必要です。再鳴動式は火災感知器が作動し、ベルが鳴動した際、状況の確認などで一時的に音響を止めても、一定時間が経過したら再びベルが自動的に鳴動する仕組みです。

一昔前の火災受信機は、レバーを下げることでベル【地区音響】を停止していました。この受信機だと、一旦レバーを下げてしまうと戻すまでベルが鳴動しないので、火災の発生を周知することができなくなってしまいます。

現在の製品はほぼ全て再鳴動になっています。

また、階段室の竪穴区画に設置する煙感知器は、従来ですと15mに1台設置することになっていましたが、特一では7.5mに1台設置する必要があります。

参考記事:既存の建物に自動火災報知設備を設置してみた

一動作式の避難器具が必要
【ベランダ・バルコニー以外に設置の場合】

一動作式菅鋼機
一動作式緩降機

避難器具を設置している場所がベランダやバルコニーまたは、常時使用できる状態でない場合は、1動作で展開する避難器具を設置することが義務になります。1動作で展開できる避難器具は緩降機がメインとなりますが、建物自体に設置する固定式の避難器具も1動作で展開できるため、設置されている場合があります。

参考記事:1動作式の緩降機

防火対象物点検が義務になる

特定一階段等防火対象物で全体の収容人数が30人以上の場合は防火対象物点検が義務になります。防火対象物点検では、建物が適正に防火、避難上維持管理できているかどうかをチェックします。点検は建物すべての入居テナントが義務になり、共用部の点検も必要になります。

まとめ

特定一階段防火対象物に該当する場合は様々な規制がかかってきます。これらに関する消防設備の改修工事等はタイムラン防災へご相談ください。

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