特定一階段等防火対象物への避難器具設置【一動作式の避難器具が全てに必要というわけではない】

特定一階段等防火対象物への避難器具設置【一動作式の避難器具が全てに必要というわけではない】

特定一階段等防火対象物に避難器具を付ける場合の検討方法【消防施行規則27条】

特定一階段等防火対象物には一動作式の避難器具が必要という情報はいろいろなネット記事で確認できるかと思います。特定一階段等防火対象物とは簡単に、地下または3階以上の階に特定用途が存在しかつ、建物の階段が屋内階段1系統の場合をいいます。

特定用途とは不特定多数の人が収容できるような用途をさします。例えば、劇場、カラオケ、飲食店、物販店舗、ホテル旅館、病院、福祉施設や、これらの用途を収容する複合施設を指します。

以上の条件が重なる建物は使用する人がある程度決まっている事務所ビルや共同住宅等のに比べると火災時の人命に関する危険度が増すことから通常よりも厳し目の規制がかけられています。

特定一階段等防火対象物の避難器具に関する条文は消防法施行規則27条1項1号イに記載されています。条文引用文を記します。

消防法施行規則27条の条文

消防法施行規則27条

(避難器具に関する基準の細目)
第二十七条 避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目は、次のとおりとする

 避難器具のうち、特定一階段等防火対象物又はその部分に設けるものにあつては、次のイからハまでのいずれかに適合するものであること。

 安全かつ容易に避難することができる構造のバルコニー等に設けるもの。

 常時、容易かつ確実に使用できる状態で設置されているもの。

 一動作(開口部を開口する動作及び保安装置を解除する動作を除く。)で、容易かつ確実に使用できるもの。

消防法施行規則27条

条文を確認すると特定一階段等防火対象物だからといって全てに一動作式の避難器具が必要ということは書いてありません。

一動作式の避難器具が求められるのは「安全かつ容易に避難することができる構造のバルコニー等」or「常時、容易かつ確実に使用できる状態で設置されているもの」以外の場合に設置する場合は一動作式の避難機が必要という解釈になります。

では次に消防法施行規則第27条1項1号イ、ロに書かれている「(イ)安全かつ容易に避難することができる構造のバルコニー等」と「(ロ)常時、容易かつ確実に使用できる状態で設置されているもの」の例について書いていきます。

【イ】安全かつ容易に避難することができる構造のバルコニー等に設けるものとは

「安全かつ容易に避難することができる構造のバルコニー等」とは、「消防法施行規則の一部を改正する省令の施行について」(昭和48年6月6日付け消防予第87号。以下「第87号通知」という。)第6、3(1)イに示されている概ね2平方メートル以上の床面積を有し、かつ、手すりその他の転落防止のための措置を講じたバルコニーその他これらに準じるものをいうものであること。

消防予第170号 消防法施行規則の一部を改正する省令の施行に伴う消防用設備等の技術上の基準の細目に係る運用について

安全かつ容易に避難することができる構造のバルコニーという文言があります。消防上のバルコニーとは、「直接外気に開放された部分を有する煙が充満する構造でないもので、一定の面積を有するもの」をいいます。一定の面積とは概ね2㎡以上とされています。

またバルコニーが安全であるためには手すりや転落防止のためのなんらかの措置が取られている必要があります。この措置とは、建築基準施行令126条より安全上の高さは1.1m以上の手すり壁、さく、金網と定められています。

第百二十六条 屋上広場又は二階以上の階にあるバルコニーその他これに類するものの周囲には、安全上必要な高さが一・一メートル以上の手すり壁、さく又は金網を設けなければならない。

建築基準施行令126条

つまりは、バルコニーが直接外気に開放された2㎡以上の面積があり、かつ1.1m以上の手すりなどがある建物では一動作式の避難器具に変えて通常の避難器具を設けることができると読み取れます。

【ロ】常時、容易かつ確実に使用できる状態で設置されているものとは

「常時、容易かつ確実に使用できる状態」とは、緩降機等を常時、組み立てられた状態で設置する等、避難器具が常時、使用できる状態で設置された場合をいう。

消防予第170号 消防法施行規則の一部を改正する省令の施行に伴う消防用設備等の技術上の基準の細目に係る運用について

上記の通知文の説明では緩降機などの避難器具が「常時アームなどの固定物に取り付けられている状態」と説明しています。厳密に言えば常に使用できる状態でなければならないとされていますが、常時容易にかつ、確実に使用できる状態が求められ、もしそのような状態で設置されている場合は「一動作式で容易かつ確実に使用できるもの」として扱うことができることになります。

これは緩降機だけでなく、救助袋や避難はしごなどにも適用できる場合があります。避難はしごの例で言えば「金属避難はしごをあらかじめ床とフックを固定しておき、窓を開ければ1動作で外にぶら下げる」ような状態です。

一動作式の避難器具は緩降機と固定はしごが主流で、一動作式の吊り下げはしごは存在していません。なので容易かつ安全に使用できる措置をあらかじめ講じた設置がなされた吊り下げ避難はしごを取り付けることで一動作式の避難器具に替えて取り付けることが可能です。あくまでも

「常時、容易かつ確実に使用できる状態で設置されている」ことが条件となるので必ず管轄の消防署に相談に伺っていただくようお願いいたします。

問3 緩降機のアームを折りたたんで室内に入れておく等、常時、容易かつ確実に使用できる状態の一動作前の状態で避難器具を設置した場合、規則第27条第1項第1号ハに適合するものとして取り扱ってよいか。

お見込みのとおり

消防予第232号平成15年9月9日

上記のイorロ以外の場合に一動作式の避難器具が必要になる

一動作式緩降機
一動作式緩降機と黄色ベルトの着用具

これまで書いてきたことをまとめると、【イ】安全かつ容易に避難することができる構造のバルコニー等に設けるものまたは、【ロ】常時、容易かつ確実に使用できる状態で設置されているものでなければ「一動作の避難器具」を設置する必要があるということになります。

一般的に特定一階段等防火対象物は各フロアあたりの専有面積が広くない場合が多く、一動作式の避難器具を設置することがスペース的にも困難になるケースがほとんどです。

有効なバルコニーがあればさほど問題にはなりませんが、バルコニーを持たなこ物件が多いことも事実です。一動作式の緩降機を設置したいにもスペース的に難しいといった場合は前述した「【ロ】常時、容易かつ確実に使用できる状態」で吊り下げ式避難器具の設置ができるかどうかを検討してみるのもありかと思います。※その場合は必ず消防署に了承を取る必要があります。

※参考記事:一動作式の緩降機『かんこうき』とは

Blogカテゴリの最新記事