特定小規模施設用の火災報知器は原則3フロアにまたがっては使えません【例外あり】

特定小規模施設用の火災報知器は原則3フロアにまたがっては使えません【例外あり】

特定小規模用無線感知器を3フロア以上で使用するための条件

多くの民泊や旅館業を運営者から「特定小規模用の無線式感知器」の設置に関するお問い合わせをいただいております。この種の感知器は、有線式を設置するより大幅にコストを抑えられ非常に優てたものです。しかし、取り付けられる場所にはいくつか制限があります。今回は、頻繁に寄せられる質問をまとめ解説いたします。

【原則】特定小規模用自火報は3フロアにまたがり使用できない

特定小規模用の火災感知器の特性と警戒

特定小規模施設用自火報
特定小規模施設用自火報

特定小規模施設用の自火報は何台使用しても1警戒

特定小規模用の感知器はそれぞれの感知機関で無線通信を行い、煙を検知した際に各感知間に火災発生信号を送るとともに全ての感知器に内蔵されたスピーカーが警報を鳴らす仕組みとなっています。

また、感知器は常時相互に通信を行っているため、一つでも感知器が故障し通信が途絶えると、他の感知器がそのエラーを検知し警報を発することで、安全性を高めています。

感知器はどのメーカーの機種でも基本的に15台まで接続が可能です。仮に15台設置する施設があった場合は、商品を開封しそれぞれを無線接続設置をおこないます。

15台で使用する場合はそれぞれ無線通信ができるように設定します。設定では全ての感知器が同期するように1グループを作っていきます。

特定小規模施設用の感知器は複数台の無線式感知器で1つグループをつくり建物を警戒します。つまり、1警戒(グループ)で建物を警戒する仕組みです。

【原則】特定小規模用無線感知器は2フロアまで使用可能

火災受信機が作動した画像
警戒区域番号とエリア

前節では特定小規模用の無線感知器の特性について記述しました。少し話が変わって自動火災報知設備の警戒区域の原則について書いていきます。

結論を書くと原則、特定小規模用の無線式感知器は2フロアまで使用することができます。3以上のフロアでは使用することができません。これらについては消防法施行令21条2項1号が根拠となります。

自動火災報知設備の警戒区域(火災の発生した区域を他の区域と区別して識別することができる最小単位の区域をいう。次号において同じ。)は、防火対象物の二以上の階にわたらないものとすること。ただし、総務省令で定める場合は、この限りでない。

消防法施行令21条2項1号

この条文にでてくる警戒区域とは、警戒しているエリアを指しています。画像で説明すると警戒番号が左の1.2.3.4.5で、警戒区域が「1階」「2階」「3階」「9階」「10階」になります。1番警戒が1階、2番警戒が2階、3番・・・。

これが警戒区域です。消防法施行令21条2項1号の条文どおり1警戒区域が2以上にわたっていないことが確認できます。次に同条文中に「総務省令で定める場合は、この限りでない」というただし書きがあります。

総務省令で定めている消防法施行規則23条条文を記します。

令第二十一条第二項第一号ただし書の総務省令で定める場合は、自動火災報知設備の一の警戒区域の面積が五百平方メートル以下であり、かつ、当該警戒区域が防火対象物の二の階にわたる場合又は第五項(第一号及び第三号に限る。)の規定により煙感知器を設ける場合とする。

消防法施行規則23条

このただし書きは、1警戒あたりの面積が500㎡以下であることと、2階の階に渡る場合は煙感知器を設けることとされています。

条文中にある「第五項(第一号及び第三号に限る。)の規定」はここではあまり重要ではないので割愛します。

これらをまとめると次のようになります。

警戒区域まとめ

原則:1警戒あたり1フロア
例外:1警戒あたり500㎡以下で警戒できる場合は2フロアにまたがって良い
結論:3フロア以上では警戒区域を設定できない(階段、エレベーターシャフトなどを除く)

※参考:火災受信機の警戒区域をまとめられる要件

【例外】特定小規模用の無線感知器が3フロア以上でも使用できる場合

一戸建てと共同住宅が前提条件

次に3階以上に渡って警戒区域を設定できる場合について書いていきます。前提条件として現在の用途が「一戸建て」又は「共同住宅」であることが必要です。

一戸建ての要件

1、地階を含む階数が3以下であること。
2、 延べ面積が300㎡未満であること。
3 、3階又は地階の宿泊室の床面積の合計が50㎡以下であること。
4 、全ての宿泊室の出入口扉に施錠装置が設けられていないこと。
5 、全ての宿泊室の宿泊者を一の契約により宿泊させるものであること。
6 、階段部分には、煙感知器を垂直距離7.5m以下ごとに設置すること。
7、 特定小規模施設用自動火災報知設備は156号省令第3条第2項及び第3項の規定(25号告示第2第5号を除く。)により設置すること。

一戸建ての場合はこれらの要件が合致してる場合に特定小規模用の無線式感知器を使用することができます。7の「156号省令第3条第2項及び第3項の規定」はどのように設置する?感知器には非常電源をつけること等の規定なので、設置前に消防署に事前相談に行くことから割愛します。

共同住宅の場合

1、特定小規模施設であること。
2、階段室型(階段室が一のものに限る。)であること。
3、2の階段は、屋外に設けるもの又は平成14年消防庁告示第7号の基準に適合したものであること。
4、自動火災報知設備の設置を要する部分が6以上の階にわたらないこと。
5、特定小規模施設用自動火災報知設備は156号省令第3条第2項及び第3項の規定(25号告示第2第5号を除く。)により設置すること。

これらをまとめると、延べ面積が300㎡未満で屋外階段又は直接外気に触れた排煙条有効な開口部があり、6フロア以上にならないということになります。これらの要件が合致すれば特定小規模用の無線式感知器を設置することができます。
5の「156号省令第3条第2項及び第3項の規定」はどのように設置する?感知器には非常電源をつけること等の規定なので、設置前に消防署に事前相談に行くことから割愛します。

無線式のメリットとデメリットについて

無線式の感知器が使えるとコスト面で最大のメリットを享受することができます。しかし無線式にはデメリットがあります。それは電波問題です。

1戸建ての場合は大きな窓や室内に階段(竪穴区画)があることから電波障害的問題が起こることは稀ですが、共同住宅の場合は注意が必要です。

共同住宅は構造が鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨(S造)によって作られていることが多く、また開口部や界壁の状況により電波障害を起こす可能性があります。東京などの建物密集地域では隣接建物との距離が小さく、また周辺の状況の変化により電波の受信状況が芳しくなくなるケースが想定できます。

電波状況が悪く使用できなくなると再度有線で検討する必要が発生し不要なコストがかかってしまいます。共同住宅に無線式感知器を使用する場合は十分に検討する必要があります。

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