特定一階段等防火対象物 (以下、特一)と呼ばれている種類の建物があります。この特一に該当すると、面積に関係なく強制的に「自動火災報知設備」の設置が義務付けられます。
【特定一階段等防火対象物の定義】
消防法施行令21条1項7号
七 前各号に掲げる防火対象物以外の別表第一に掲げる防火対象物のうち、同表(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項又は(九)項イに掲げる防火対象物の用途に供される部分が避難階以外の階に存する防火対象物で、当該避難階以外の階から避難階又は地上に直通する階段が二(当該階段が屋外に設けられ、又は総務省令で定める避難上有効な構造を有する場合にあつては、一)以上設けられていないもの
これまでにでてきた建物のほか、(1項)劇場、集会場(2項)遊技場、ナイトクラブ、カラオケボックス、個室ビデを関連(3項)飲食店(4項)物販店舗、(5項イ)ホテル、旅館、民泊(6項)病院、老人ホーム、幼稚園、保育園などなどの福祉施設(9項イ)サウナなど蒸気浴場などがある場所が、建物の地下または3階以上にあり、地上に直通する階段が2系統以上ない建物
屋外階段は1系統でもOK
特一は、地下または3階以上の階に「特定用途」が入居する建物で、「屋内階段が1系統」の建物をいいます。強制的に自火報の設置が義務になるくらい火災による危険度の高い建物という位置付けになっていると言うことができます。
特定用途(いろいろな人が使用可) | 非特定用途(使う人が決まっている) |
劇場、カラオケ、飲食店、お店、ホテル、病院、スーパー銭湯、その他 |
マンションやアパート、学校、図書館、倉庫、事務所、不動産店舗、美容室、整体院、その他 |
特定用途とは、「不特定多数」の人々が使用する用途で、例えば、飲食店、物販、ホテルなどです。細かい用途に関しましては消防施行令別表第一に記載されていますので、よろしければ下リンクをご参照ください。
また、特一(とくいち)は、自火報の設置義務以外にも、消防法令上の避難はしごの設置基準や、防火管理体制に関する取り扱いが通常の規制よりも厳しくなります。
特定一階段等防火対象物の概要
(特定一階段防火対象物)
e-Gov:消防法施行令21条1項7号
別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項又は(九)項イに掲げる防火対象物の用途に供される部分が避難階(建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第十三条第一号に規定する避難階をいう。以下同じ。)以外の階(一階及び二階を除くものとし、総務省令で定める避難上有効な開口部を有しない壁で区画されている部分が存する場合にあつては、その区画された部分とする。以下この号、第二十一条第一項第七号、第三十五条第一項第四号及び第三十六条第二項第三号において「避難階以外の階」という。)に存する防火対象物で、当該避難階以外の階から避難階又は地上に直通する階段(建築基準法施行令第二十六条に規定する傾斜路を含む。以下同じ。)が二(当該階段が屋外に設けられ、又は総務省令で定める避難上有効な構造を有する場合にあつては、一)以上設けられていないもの
ざっくり書きますと、避難階以外の階の地下、3階以上に特定用途
階段は屋内階段なので、もし屋外階段であれば「特定一階段等防火対象物」には該当しないということになります。
特定一階段を確認するチェックリスト
- 避難階以外の地下または3階以上に、特定用途が入居ている
- 避難階への直通階段【屋内階段】が1系統
- 屋内避難用階段が2系統ある場合、区画壁があり2系統の階段を使用することができない
上の全てに該当すると「特定一階段等防火対象物」になります。
※特殊な建物もあるので一概には言えませんが、原則的に特一対象物となります。
【例1】
地上3階/屋内階段1系統
参考記事:特定用途と非特定用途
該当する場合
特一に該当する場合は、屋内階段が1系統で地下又は3階以上に特
上の図は単純に屋内階段が1系統なので、
では、階段が2系統ある場合はどうでしょうか?
特定用途の例
劇場、集会場、キャバレー、遊技場、性風俗、カラオケ、飲食店、物販、ホテル、病院、福祉施設、蒸気浴場 ※特定用途と非特定用途
番外編
通常倉庫は非特定用途のため、図の場合は特一にはなりません。ですが、使用しているテナントが飲食店営業の倉庫や、物販に付随する倉庫の場合は、特定用途として取り扱われています。特定用途に付随する倉庫や事務所の場合はご注意ください。
該当しない場合
特一は屋外に避難階段が設置されている場合は該当しません。
特定一階段等防火対象物に該当する場合の影響
再鳴動式自動火災報知設備が義務設置になる(延べ面積が300㎡未満の場合は特定小規模施設用自火報が使用可)
特一に該当する場合は面積に関係なく建物全館に義務設置になりま
現在の製品はほぼ全て再鳴動になっています。
また、階段室の竪穴区画に設置する煙感知器は、
また令和6年7月23日に省令が改正され延べ面積が300㎡未満の建物であれば特定小規模施設用自火報を使用することができるようになりました。特小自火報は無線式のため比較的容易に設置することができ大幅なコスト削減が期待できます。省令改正についてはこちらの記事をご覧ください。
特一もOK!特定小規模施設用自火報(無線式)使える範囲が大幅に広がりました【省令改正】
一動作式の避難器具が必要
【ベランダ・バルコニー以外に設置の場合】
避難器具を設置している場所がベランダやバルコニーまたは、
参考記事:1動作式の緩降機
防火対象物点検が義務になる
特定一階段等防火対象物で全体の収容人数が30人以上の場合は防火対象物点検が義務になります。防火対象物点検では、建物が適正に防火、避難上維持管理できているかどうかをチェックします。点検は建物すべての入居テナントが義務になり、共用部の点検も必要になります。
まとめ
特定一階段防火対象物に該当する場合は様々な規制がかかってきます。これらに関する消防設備の改修工事等はタイムラン防災へご相談ください。
わかりやすい記事でした。
さて、トクイチに該当しない例で、図が屋内階段になっていましたが、屋外階段が正しいのではないでしょうか。(開口部のない区画壁のところ)
ご指摘ありがとうございます。非常に助かります。
早速ですが訂正させていただきました。
今後とも何卒よろしくお願いいたします。