前回は消火器の放射性能・使用温度範囲・耐食性について書きました。今回は消火器の各パーツの基準について書いていきます。消火器は様々な部品を組み合わせて製造していきます。その部品『キャップ・ホース・パッキン・ノズル・ろ過網』について説明したいと思います。
①消火器が必要になる用途と面積
②地下・無窓階・3階以上の基準
③消火器を何本設置するか?『単位面積』
④消火器を何本設置するか?『消火器の能力単位』
⑤消火器の付加設置が必要な場所について
⑥消火器の歩行距離と設置する高さ
⑦消火器の種類と適応性
⑧火災の種類『A火災・B火災・C火災』
⑨大型消火器について
⑩能力単位を減らせる場合
⑪自動車用消火器について
⑫消火器の放射性能『前回』
⑬使用温度・耐食・厚さ『前回』
⑭キャップ・プラグ・パッキン『今回』
⑮ホース・ノズル・ろ過網『今回』
⑯安全弁・使用済表示など
⑰携帯運搬装置・安全弁など
⑱圧力調整器・指示圧力計
⑲加圧源ガス・その他内部部品
⑳本体塗料・表示について
㉑消火器の内筒
㉒二酸化炭素充填比率
㉓本体塗色・表示について
消火器パーツについての規格
キャップ・プラグ・パッキン・バルブ
キャップ、プラグ、パッキンは消火器本体を密閉するためのパーツです。
- 蓋にパッキンをはめこむこと
- パッキンが圧力に耐えること
- パッキンは消火薬剤に侵食されないこと
- 有効な減圧機構を設ける(メンテナンス時開栓時危険防止)
減圧機構とは消火器内圧を調整する弁で、メンテナンス時に蓋を開けたときに内圧がかかっていると蓋が飛んできて危険です。
バルブ
- ハンドル車式のバルブは『1回転4分の1』で全開すること
- バルブ開放した時『分離、脱落しないこと』
高圧ガス法適用の消火器、加圧用ガス容器
高圧ガス保安法の適用を受けている蓄圧式消火器、加圧用ガス容器には容器弁を設けることとされています。容器弁とはガス容器の栓のことで、火災時はこの線が解放することで薬剤を放出させます。
容器弁の決まりごと
- 二酸化炭素を充填するものは『24.5MPaの圧力を』、その他のものは『容器の耐圧試験圧力を5分間』に漏れ、著しい変形を生じないこと
- 安全弁を有すること
二酸化炭素は高圧のため容器弁が『24.5MPa』の圧力に耐えられるものを使用しなければなりません。
24.5MPaは250Kgの圧力です。Kgのほうがイメージしやすいでしょう。
相当な高圧に耐えることが要求されているのです。
安全弁とは圧力の逃がし弁のことで、容器から圧力が移動し、何らかの理由で基準圧力値以上の力が加わった場合に、安全のため自動的に開放し減圧させるしくみの弁が『安全弁』です。
⑮ホース・ノズル・ろ過網
消火器のホース
消火器には一部のものを除いてホースを取り付けなければなりません。
ホースが不要な消火器 |
4キロ以下のハロン消火器 |
1キロ以下の粉末消火器 |
この2つの消火器以外はホースが必要です。簡単な覚え方を考えてみました。
ハロン4キロ(はし)と粉末消火器1キロ(しょういち)
『しょういち~ はしをしっかり持ちなさい! ホースで叩くわよ!!』
小学1年生になった正一くんは、お母さんから箸の持ち方について毎日毎日注意されています。
ホースについての規格
- 漏れ変形のないこと
- 長さは、消火薬剤を有効に放射できるもの
- 据え置き式の消火器は有効長さ『10メートル以上』
- ホースを延長する場合延長操作により変形、亀裂、その他の異常を生じないもの
ノズル
ノズルは薬剤噴射の噴射口のことです。この口により勢いよく薬剤を放射することができます。
開閉式と切替式ノズル
消火器ノズルは『開閉式』と『切替式』のノズルを使用することができません。
開閉式ノズル | ノズル開閉ができるもの |
切替式 | 液体系消火器で霧状・棒状放射が選択可能 |
以上の2つは原則使用することができません。しかし『据置式消火器』『背負式消火器』は開閉・切替ノズルを使用することができます。
開閉、切替操作が円滑に行われ漏れその他障害がないこと
- 開閉式ノズルは0.3MPaの圧力を5分間加える試験を行った場合に漏れなきこと
- 開閉式ノズルで栓を施しているものは、使用温度範囲で漏れを生じないもので、かつ、作動させた場合において確実に消火薬剤を放射できること
- 内面は、平滑に仕上げられたものであること
以上の決まりがあります。
ろ過網
消火器にはろ過網を設置する消火器があります。
手動ポンプにより作動する水消火器 |
ガラス瓶を使用する酸アルカリ消火器 |
強化液消火器 |
化学泡消火器 |
この4種類の消火器にはろ過網が必要になります。この4種類を簡単に覚える方法を考えてみました。
手(手動)柄(ガラス)をたてた京(強化液)香(化学泡)
血液をろ過する人工透析機器メーカー社長の京香さんは、近所で発生した火災現場で応急・救護活動をしました。京香さんの行動の結果、幸いにも死者はいませんでした。その功績が認められ消防署から表彰されました。お手柄の京香さんです。
ろ過網の決まりごと
- ろ過網の目の最大経は、ノズルの最小径の3/4以下
- ろ過網の目の部分の合計面積は、ノズルの開口部の最小断面積の30倍以上
ろ過網はこの2つの条件に該当する必要があります。
まとめ
- 各種パーツに個別の規格がある
- キャップにはパッキンを入れ、パッキンが圧力に耐えること
- パッキンは消火薬剤に浸食されないこと
- 有効な減圧機構を設けること
- 高圧ガスの容器には容器弁を設ける
- 消火器には原則ホースを取り付け、はしと正一は取付不要
- 据え置き式、背負い式消火器は、開閉式・可変式ノズルが使用可能
- ろ過網は『手(手動)柄(ガラス)をたてた京(強化液)香(化学泡)』で必要
次回は ⑯安全弁・使用済表示 ⑰携帯運搬装置・安全弁の規格について書いていきます。