前回は消火器が何本必要かどうか計算するための『単位面積』と『必要能力単位』について書きました。
『3つのグループ』に分けて『耐火構造・難燃材料』かどうかで、単位面積を確定させ、該当する用途の面積で割り、必要能力単位を割り出すことができました。
今回はさらに、『追加して設置する必要がある付加設置』について書いていきたいと思います。付加設置が必要な場所は、『少量危険物取扱所』『指定可燃物取扱所』『電気設備』『多量の火気を取り扱う場所』です。
乙6の学習リスト
①消火器が必要になる用途と面積
②地下・無窓階・3階以上の基準
③消火器を何本設置するか?『単位面積』『前回』
④消火器を何本設置するか?『消火器の能力単位』『前回』
⑤消火器の付加設置が必要な場所について『今回』
⑥消火器の歩行距離と設置する高さ
⑦消火器の種類と適応性
⑧火災の種類『A火災・B火災・C火災』
⑨大型消火器について
⑩能力単位を減らせる場合
⑪自動車用消火器について
⑫消火器の放射能力
⑬使用温度・耐食・厚さ
⑭キャップ・プラグ・パッキン
⑮ホース・ノズル・ろ過網
⑯安全弁・使用済表示など
⑰携帯運搬装置・安全弁など
⑱圧力調整器・指示圧力計
⑲加圧源ガス・その他内部部品
⑳本体塗料・表示について
㉑消火器の内筒
㉒二酸化炭素充填比率
㉓本体塗色・表示について
⑤消火器の付加設置が必要な場所について ※重要
消火器の付加設置が必要な場所については下記のとおりです
- 少量危険物・指定可燃物を取り扱う場所
- 電気設備・多量の火気を使用する場所
になります。このような場所は通常の場所より危険性が高いため個別の設置基準が設定されています。
少量危険物・指定可燃物を取り扱う場所
少量危険物・指定可燃物がある防火対象物では消火器の設置が必要になる場合があります。指定数量とは消防法により危険物に設定されている数量のことです。
少量危険物とは、『指定数量未満』指定数量の『1/5以上』ある状態を言います。例えば灯油の場合は『第4類 ・第2石油類・非水溶性液体 』に該当し指定数量は『1,000L』になっています。
『1,000L』の5分の1以上指定数量未満であるものが少量危険物なので、『200L~999L』が『少量危険物』に該当します。
指定数量
第1類 | 第1種酸化性固体 | 50kg |
第2種酸化性固体 | 300kg | |
第3種酸化性固体 | 1,000kg | |
第2類 | 硫化リン | 100kg |
硫黄 | 100kg | |
第1種可燃性固体 | 500kg | |
鉄粉 | 500kg | |
第2種可燃性固体 | 500kg | |
引火性固体 | 1,000kg | |
第3種 | カリウム | 10kg |
ナトリウム | 10kg | |
アルキルアルミニウム | 10kg | |
アルキルリチウム | 10kg | |
第1種自然発火性物質 禁水性物質 |
10kg | |
黄リン | 20kg | |
第2種自然発火性物質 禁水性物質 |
50kg | |
第3種自然発火性物質 禁水性物質 |
300kg | |
第4類 | 特殊引火物 | 50L |
第1石油類 非水溶性液体 | 200L | |
第1石油類 水溶性液体 | 400L | |
アルコール類 | 400L | |
第2石油類 非水溶性液体 | 1,000L | |
第2石油類 水溶性液体 | 4,000L | |
第3石油類 非水溶性液体 | 2,000L | |
第3石油類 水溶性液体 | 4,000L | |
第4石油類 | 6,000L | |
動植物油類 | 10,000L | |
第5類 | 第1種事故反応性物質 | 10kg |
第2種自己反応性物質 | 100kg | |
第6類 | 酸化性液体 | 300kg |
さて、本題に入っていきます。消火器を設置する場合はこの『指定数量』と『少量危険物の数量』を使用して『能力単位』を求めます。
少量危険物の能力単位 = 『少量危険物数』 ÷ 『指定数量』
以上の能力単位が必要になります。
軽油を500L 貯蔵する場合の能力単位 能力単位 = 500 / 1000 能力単位 = 0.5 小数点以下は切り上げるため能力単位1の消火器を設置する
指定可燃物に対する付加設置
指定可燃物は『綿花』『木毛・かんなくず』『ぼろ』『くず』『糸』『わら』などの燃えやすい物を指します。これらは非常に燃えやすく、火の広がりも大変早いため消火活動が著しく困難になります。そのため指定可燃物は、『指定数量』を設け、取り扱いに対して規制されることになります。
指定可燃物の能力単位
能力単位 = 『可燃物の数量』 ÷ 『指定可燃物の単位✕50(定数)』
以上の能力単位が必要になります。
指定可燃物『わら 指定数量1,000kg』を500トン貯蔵する場合 ※500トンをキロに直す必要があるため500トンに1,000をかけます。 能力単位 = 500,000(kg) ÷ 1,000(kg) ✕ 50(定数) 能力単位 = 10 能力単位が10以上になるように消火器を設置します
指定数量の500倍以上は大型消火器が必要
指定数量の500倍以上を取り扱う場合は大型消火器を設置することが必要になります。大型消火器は『A火災-10』『B火災-20』以上の能力単位をもつ消火器を指します。A火災は普通火災、B火災は油火災です。ここでは出てきませんが、C火災は電気火災のことを言います。
話を戻しますと、『指定数量の500倍』で大型消火器の設置が必要になります。
電気設備
電気設備がある場所にも消火器の付加設置が必要になります。電気設備は『電気室』『キュービクルがある場所』が該当します。
これらの電気関連の部屋は単純に『100㎡』以下ごとに1本必要になります。連想して覚えるとしたら、
電気 = 100V なので、『100㎡』と覚えるとよいでしょう。
~100㎡ | 1本 |
101~200㎡ | 2本 |
201~300㎡ | 3本 |
301~400㎡ | 4本 |
といった具合です。次は『火気設備』に行きます。
多量の火気使用がある場所
多量の火気使用がある場所は主に『ボイラー室』があげられます。ボイラー室は『床面積』を『25』で割った数が能力単位になります。
能力単位 = 『床面積』 ÷ 『25㎡』
以上の能力単位が必要になります。
あるところにボイラー室がありました。このボイラー室の脇には25メートルプールがありました。 ここの面積は『250㎡』ありました。能力単位は? 能力単位 = 『250㎡』 ÷ 『25㎡』 能力単位 = 『10』 能力単位は10 となります。 実際、このようなことはあり得ませんが、25メートルプールと関連付けて覚えるとよいでしょう。
※飲食店の厨房設備【火を使用する設備】は令和1年10月より消火器の設置が義務になりました。
まとめ
- 消火器の付加設置基準がある
- 少量危険物を取り扱う場所の基準
- 指定可燃物を取り扱う場所の基準
- 電気設備を設置する場所の基準
- 多量に火気を使用する場所の基準
次回は⑥『消火器の歩行距離と設置する高さ』⑦ 消火器の種類と適応性』 について書いていきたいと思います。