防火対象物用途の収容人員・算定基準について

防火対象物用途の収容人員・算定基準について
池袋南口公園の画像

建物・ビルなどの防火対象物を使用するときに、何人を収容して物件を使用するのか??の『収容人員』を算定することが求められます。収容人数は総務省令により各用途ごとの算定基準に従って計算していくことになります。

収容人員は何に使用するのかと言うと、防火管理者が必要かどうか?消防設備の設置が必要か??など、とても重要な数字となります。今回は防火対象物の収容人員・算定基準について書いていきたいと思います。

算出手順

  1. 該当の用途を確認する
  2. その用途による算出基準で計算する
  3. 人数が確定する

収容人員で決まること

消防用電話ジャック画像

収容人員を算出する目的について書くと、

  • 甲種防火対象物・乙種防火対象物を分ける
  • 防火管理者が必要か不要か
  • 消防設備の設置基準

防火対象物には甲種と乙種がありこの分け目は『収容人員』で決まります。次に、『収容人員』により防火管理者の選任が必要かどうかが決まります。消防設備『避難器具』『非常警報設備』などの消防設備は『収容人員』で算定します。

収容人数を算定することによって消防関係法令の決まりごとに対して落とし込んでいきます。

参考記事:防火管理者の選任基準【甲種・乙種 防火管理者講習について】
参考記事:避難器具の設置基準
参考記事:非常警報設備の設置基準

算定基準について

非常階段画像

算定基準は『用途』別で『床面積』『椅子の数』『従業員数』『ベッド数』『その施設を使用する人数』などで決めていきます。用途によって算定基準が違うので注意が必要です。

用途別に算定基準の説明をいたします。用途とは消防法施行令別表1に記載されている項目です。

防火対象物【令別表第一】特定用途は赤
劇場等  
集会場等 
1イ
1ロ
キャバレー
遊技場
性風俗特殊営業
カラオケ・個室ビデオ
2イ
2ロ
2ハ
2ニ
料理店
飲食店
3イ
3ロ
物品販売・百貨店
旅館・ホテル
共同住宅など
5イ
5ロ

・避難介助が必要な病院 ※1
・避難介助が必要な診療所 ※1
・上記2つを除く病院/診療所・有床助産所

・無床診療所/無床安産所

6イ1
6イ2
6イ3


6イ4

老人短期入所施設

老人デイサービス

特別支援学校

6ロ


6ハ


6ニ
学校など
図書館
蒸気浴場
一般浴場
9イ
9ロ
車両停車場 10
神社など 11
工場
スタジオなど
12イ
12ロ
車庫など
航空機などの格納庫
13イ
13ロ
倉庫 14
前項以外【事務所・美容室など】 15
複合用途【特定用途が入居】
複合用途【特定用途が入居なし】
16イ
16ロ
地下街
準地下街
16・2
16・3
文化財 17
アーケード 18

参考記事:特定用途と非特定用途

1項に掲げる防火対象物【劇場・集会場】

1項は『劇場』『集会場』であります。劇場、集会場の人数算定は

  • 従業員数
  • 固定椅子数【1人用】
  • 固定椅子長椅子【椅子の横幅を0.4mで割った数】1未満はきり捨てる
  • 立ち見席【床面積を0.5で割った数】
  • その他の部分の床面積を0.5で割った数

を順番に足して行きます。合計が収容人員になります。

【例】従業員300人
   固定椅子1人用 【100脚】
   固定椅子長椅子 幅1m 【10脚】
   立ち見席 【100㎡】
   その他の部分の面積 【100㎡】

300人+100人+20人+200人+200人 合計820人也

収容人員が820人で従業員が300人の施設なんてあるのだろうか??

2項・3項に掲げる防火対象物【キャバレー・遊技場・性風俗・カラオケ・個室ビデオ・飲食店】

2項・3項は同時に見ていきます。2項のキャバクラ、ホストクラブの『キャバレー』、パチスロなどの『遊技場』、『性風俗店』『カラオケ店』『個室ビデオ店舗』『飲食店』などが該当します。

算定方法は『遊技場』と『遊技場以外』に分けて算出します

『遊技場の人数算定』

  • 従業員の数
  • 遊戯のための機械器具をしようして遊戯を行うことができる者の数
  • 観覧、飲食又は休憩の用に供する固定椅子
    【椅子の幅を0.5mで割った数】※1未満は切り捨て
【例】従業員 30名
   遊戯可能人数 600名
   固定椅子長椅子【1m】 10脚

30人 + 600人 + 20人  合計 650人

『遊技場以外の人数算定』

  • 従業員の数
  • 固定長椅子【椅子の幅を0.5mで割った数】※1未満は切り捨て
  • その他の部分の床面積を3㎡で割った数
【例】従業員の数 10名
   固定椅子1人用 20脚
   固定長椅子1.2m 30脚
   その他の部分の面積 60㎡

10人 + 20人 + 60人 + 20人  合計110人

4項に掲げる防火対象物【百貨店・物販店舗】

4項は物品を販売する店舗で『百貨店』『おみやげ店舗』『スポーツショップ』などなど、

人数算定

  • 従業員の数
  • 従業員以外で使用する飲食又は休憩室の床面積を3㎡で割った数
  • その他部分の床面積を4㎡で割った数
【例】従業員 5名
   休憩スペース 60㎡
   その他の部分 100㎡

5人 + 20人 + 25人  合計 60人

5項に掲げる防火対象物【ホテル・旅館・共同住宅】

5項は『ホテル・旅館』『共同住宅』に該当します。マンション・アパートの共同住宅は居住者の数がそのまま収容人員としてカウントされます。

『ホテル・旅館の人数算定』

  • 従業員の数
  • 洋室 【ベッドに対応した数】
  • 和室 【宿泊室の床面積を6㎡で割った数】
  • 集会・飲食または休憩の用に供する部分
    固定椅子 【椅子の長さを0.5で割った数】
    その他の部分 【床面積を3で割った数】
【例】従業員 50人
   洋室 【シングル30 ダブル30】
   和室 【30㎡ 10部屋】
   飲食スペース 【長椅子 1m 20脚】
   その他の部分 【120㎡】

50人 + 30人 + 60人 + 50人 + 40人 + 40人
合計 270人

6項に掲げる防火対象物【福祉施設・病院・老人ホーム・幼稚園】

6項は福祉施設関連が該当します。6項は該当項目が多くあります。人員算定には3通りのパターンなのでそこまで難しくありません。

6項イ 病院・診療所
6項ロ・ハ 社会福祉施設・その他の社会福祉施設
6項ニ 幼稚園・特別支援学校等

『6項イ 病院・診療所』

  • 医師・歯科医師・助産師。薬剤師及び従業員の数
  • 病院内の病床数
  • 待合室の床面積を3㎡で割った数
【例】 先生 5人
    看護師 10人
    病床 20床
    待合室 60㎡

5人 + 10人 + 20人 + 20人  合計 55人

『社会福祉施設』

  • 従業員の数
  • 老人の数
  • 乳児・幼児の数
  • 身体障害者の数
  • 知的障害者及び保護者の数
以上の方の数を合算して求めます

『幼稚園・特別支援学校等』

  • 教職員の数
  • 幼児・児童・生徒の数
以上の方の数を合算して求めます

7項に掲げる防火対象物【学校】

7項は学校です。学校は教職員と生徒や学生の数を合算して求めます。

  • 教職員
  • 生徒・学生
【例】 教職員 30名
    学生 3000人
    合計 3030人 

マンモス校ですね

8項に掲げる防火対象物【図書館・博物館】

8項は図書館や博物館です。

  • 従業員の数
  • 閲覧室・展示室・展覧室・会議室。休憩室の合計面積を3㎡で割った数
【例】 従業員 100名
    展覧室 60㎡
    展覧室 60㎡
    休憩室 30㎡

100人 + 20人 + 20人 + 10人  合計 150人

スタッフが多いですね。実際このようなことは無いと思います。

9項に掲げる防火対象物【蒸気浴場・公衆浴場等】

9項は今ではすっかりお馴染みになったスーパー銭湯などが該当します。

  • 従業員の数
  • 浴場・脱衣場・マッサージ室・休憩室などの合計を3で割った数

11項に掲げる防火対象物【神社・寺院・教会】

11項は神聖なる施設です。

  • 神主・巫女さん・僧侶・牧師の数
  • 従業員の数
  • 礼拝・集会室の合計を3㎡で割った数

10項・12項・13項・14項に掲げる防火対象物

10項・12項・13項・14項は従業員の数を合算して算出します。

10項 停車場
12項  工場
13項 車庫・駐車場・航空機格納庫
14項 倉庫

15項に掲げる防火対象物【事務所・美容室・整骨院等】

15項は今まで出てこなかった『事務所』『整骨院』『接骨院』『美容室』『不動産店舗』などの用途が該当します。

  • 従業員の数
  • 従業員以外の方が使用するスペースの合計を3㎡で割った数

16項に掲げる防火対象物【複合用途ビル・雑居ビル】

16項は複合用途で使用する防火対象物であります。今までご紹介してきた用途がいくつも複合的に入居するような物件で、各用途の算定基準を合計します。

17項に掲げる防火対象物

17項は重要文化財です。

  • 床面積を5㎡で割った数

まとめ

  • 算定基準に従って収容人員が決まる
  • 算定により甲種・乙種防火管理者が決まる
  • 算定により防火管理者の有無が決まる
  • 収容人員で設置義務になる消防設備がある
    『避難器具』『非常警報設備』
  • 各項の用途により設置基準が異なる
  • 収容人員は防火安全上大変重要な数値である

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