自火報の警戒場区域をまとめるには
原則は1フロア1回線です
自動火災報知設備を新規に設置する場合はまず、警戒区域の設定を行い火災受信機の回線数を決めることから始まります。設置する対象物がエレベーター付き、300㎡の5階建て、と仮定すると通常「P型1級10回線」を使用することになります。警戒区域を割り振ると以下になります。
警戒番号 | 警戒区域名 | 床面積 |
① | 1 階 | 60㎡ |
② | 2 階 | 60㎡ |
③ | 3 階 | 60㎡ |
④ | 4 階 | 60㎡ |
⑤ | 5 階 | 60㎡ |
⑥ | 階 段 | / |
⑦ | エレベーター | / |
通常の設計では消防法施行令21条に基づき、警戒区域は2以上の回に渡らないものとするという文言があります。原則は1フロアを1つにまとめることができません。しかし、但し書きには総務省令で定める場合は良いという記載があります。
自動火災報知設備の警戒区域(火災の発生した区域を他の区域と区別して識別することができる最小単位の区域をいう。次号において同じ。)は、防火対象物の二以上の階にわたらないものとすること。ただし、総務省令で定める場合は、この限りでない。
e-gov:消防法施行令
次に総務省令を確認してみます。
令第二十一条第二項第一号ただし書の総務省令で定める場合は、自動火災報知設備の一の警戒区域の面積が五百平方メートル以下であり、かつ、当該警戒区域が防火対象物の二の階にわたる場合又は第五項(第一号及び第三号に限る。)の規定により煙感知器を設ける場合とする。
e-gov:消防法施行規則
総務省令(施行規則)を確認すると、1つの警戒区域が500㎡以下の場合は2フロアにすることができるとあります。条文のかつ、以下は階段、竪穴を煙感知器を設ける場合とあるので、このような場所に煙感知器を設ければ問題ないということになります。
この条文に当てはめて最初の警戒区域を設定し直してみます。
警戒番号 | 警戒区域名 | 床面積 |
① | 1階・2階 | 120㎡ |
② | 3階・4階 | 120㎡ |
③ | 5 階 | 60㎡ |
④ | 階 段 | / |
⑤ | エレベーター | / |
このように設定することが可能になります。
その他警戒区域の設定基準
警戒区域面積の上限と緩和要件
原則 | フロア警戒面積は600㎡以下で1回線とすること |
例外 | 主要な出入り口から見渡せる場合は1,000㎡以下 |
警戒区域の面積は上限値が設定されています。1警戒面積が600㎡を超える場合は別の警戒区域として設定する必要があります。例えば1階平屋で2,000㎡の床面積がある場合は、1つ目の警戒を600㎡、2つ目を600㎡、3つ目を600㎡、4つ目を200㎡とすることができます。警戒区域が4つ必要ということがわかります。
この要件には緩和規定があり、「主要な出入り口から見渡せる場合は1,000㎡以下」とすることができます。例えば展示場などの見通しの良い場所は避難経路が把握しやすくなっています。このような場合は600㎡以下である警戒区域を1,000㎡以下とすることができます。
警戒番号 | 警戒区域 | 床面積 |
① | 1階東側 | 600㎡ |
② | 1階西側 | 600㎡ |
③ | 1階南側 | 600㎡ |
④ | 1階北側 | 200㎡ |
この警戒区域が主要な出入り口から見渡せる物件であった場合は次のようにできます。
警戒番号 | 警戒区域 | 床面積 |
① | 1階東側 | 600㎡ |
② | 1階西側 | 600㎡ |
③ | 1階南側・1階北側 | 1,000㎡ |
④ | あき回線 | - |
警戒区域が少なくするメリットとデメリット
警戒区域を少なくすることで良いことと良くないことがあります。まず良いことは機器類の金額が安くなるということです。自動火災報知設備は回線数により金額が異なります。ごく一般的な小規模物件の場合は「P型1級10回線」又は「P型2級5回線」のいずれかを選択することになるかと思います。
P型2級はP型1級をシンプルにしたもので5回線以上の製品は認められていません。そのため小規模物件用として使用されています。警戒区域が5回線以上になるとP型1級を選択することになります。1回線増えて6回線になる場合でもP型1級を使用しなければなりません。このような場合の対策として今回書きました「警戒区域をまとめる」ことでP型2級を使用することができるようになります。
デメリットは警戒区域をミックスしているため、火災の特定が難しくなるという点です。自動火災報知設備が作動したときは、まず消火器を持ち現場に向かい初期消火を行います。警戒区域がフロアをまたがっている場合、火災発生場所を特定することに遅れをとる可能性があります。
設計上は可能だが管轄の消防署との打合せが必須
法令の条文に記載されている以上今回のように警戒区域をまとめることが認められています。ただし、全てがこのようにすることができるということではないので注意が必要です。
今回のような設計は、2001に発生した歌舞伎町火災による法改正にて、既存の建物に遡及して設置が義務付けられた建物に対して取られていた措置なので、新築物件や建物の用途変更に伴う工事の場合は、既存建物の状況や火災発生時の危険性を考慮し消防指導により設置が難しい場合があります。設置には消防署と打ち合わせをすることが必須となります。
- 警戒区域をまとめることができる
- 2フロア以上は不可
- 1警戒区域の面積は600㎡以下
- 主要な出入り口から見渡せる場合は1,000㎡以下
- 消防署との協議は必須
参考:特定一階段防火対象物