消防署の立入検査・査察では、火災予防のための消防関係法令が適正に守られているかどうかを確認します。もしも適正に運用されていない場合は不備事項としてあげられ、すみやかに是正する必要があります。
法令違反に多いものは、防火管理者未選任、消防計画未作成、法令点検未実施、避難通路物品障害、火気設備の設置不備などが挙げられます。
違反をそのままにしておくとホームページ上で物件や違反内容を公表されることがあります。実際に公表されている物件に関しては総務省消防庁のHPで確認することができます。
消防署による立入検査
立入検査については消防法第4条、消防法第16条の5に明文化されています。立入検査は火災予防のために必要があるときという条件が付けられています。個人の住宅については緊急の必要がある場合以外は除外されています。
また、査察に入る時間制限や事前通告の必要はありません。いつでも入ることができます。歌舞伎町火災以前は規定がありましたが、現在はその規定がなくなりました。
第四条
消防長又は消防署長は、火災予防のために必要があるときは、関係者に対して資料の提出を命じ、若しくは報告を求め、又は当該消防職員(消防本部を置かない市町村においては、当該市町村の消防事務に従事する職員又は常勤の消防団員。第五条の三第二項を除き、以下同じ。)にあらゆる仕事場、工場若しくは公衆の出入する場所その他の関係のある場所に立ち入つて、消防対象物の位置、構造、設備及び管理の状況を検査させ、若しくは関係のある者に質問させることができる。ただし、個人の住居は、関係者の承諾を得た場合又は火災発生のおそれが著しく大であるため、特に緊急の必要がある場合でなければ、立ち入らせてはならない。
2 消防職員は、前項の規定により関係のある場所に立ち入る場合においては、市町村長の定める証票を携帯し、関係のある者の請求があるときは、これを示さなければならない。
3 消防職員は、第一項の規定により関係のある場所に立ち入る場合においては、関係者の業務をみだりに妨害してはならない。
4 消防職員は、第一項の規定により関係のある場所に立ち入つて検査又は質問を行つた場合に知り得た関係者の秘密をみだりに他に漏らしてはならない。第四条の二 消防長又は消防署長は、火災予防のため特に必要があるときは、消防対象物及び期日又は期間を指定して、当該管轄区域内の消防団員(消防本部を置かない市町村においては、非常勤の消防団員に限る。)に前条第一項の立入及び検査又は質問をさせることができる。2 前条第一項ただし書及び第二項から第四項までの規定は、前項の場合にこれを準用する。
消防法4条
第十六条の五
市町村長等は、第十六条の三の二第一項及び第二項に定めるもののほか、危険物の貯蔵又は取扱いに伴う火災の防止のため必要があると認めるときは、指定数量以上の危険物を貯蔵し、若しくは取り扱つていると認められるすべての場所(以下この項において「貯蔵所等」という。)の所有者、管理者若しくは占有者に対して資料の提出を命じ、若しくは報告を求め、又は当該消防事務に従事する職員に、貯蔵所等に立ち入り、これらの場所の位置、構造若しくは設備及び危険物の貯蔵若しくは取扱いについて検査させ、関係のある者に質問させ、若しくは試験のため必要な最少限度の数量に限り危険物若しくは危険物であることの疑いのある物を収去させることができる。
2 消防吏員又は警察官は、危険物の移送に伴う火災の防止のため特に必要があると認める場合には、走行中の移動タンク貯蔵所を停止させ、当該移動タンク貯蔵所に乗車している危険物取扱者に対し、危険物取扱者免状の提示を求めることができる。この場合において、消防吏員及び警察官がその職務を行なうに際しては、互いに密接な連絡をとるものとする。
3 第四条第二項から第四項までの規定は、前二項の場合にこれを準用する。
消防法第16条の5
査察内容とよくある指摘事項
指摘事項については、防火管理者関係が非常に多くなっております。手続きが複雑でそのままにしてしまった、ということがよくあります。その他に消防点検の未点検や未改修といった具合でしょうか。。。消防査察では、過去に実施された消防手続きや、法定消防点検の実施状況、点検の不良事項、及び実際に立入検査で確認した事項について指摘されることになります。主な指摘事項については下記のとおりです。
主な指摘事項 | 改善方法 |
防火管理者関連の未選任 | 選任届を届出 |
消防計画関連の未作成 | 消防計画を作成・届出 |
消防設備点検未実施 | 点検を実施・報告 |
防火対象物点検未実施 | 点検を実施・報告 |
自衛消防訓練未実施 | 訓練通知書を届出 |
消防設備の未設置及び未改修 | 不備事項を改修・報告 |
火気設備の不適 | 改修・報告 |
避難通路・避難階段物品障害 | 物品の撤去 |
防炎物品の不適 | 撤去・または防炎製品に交換 |
その他 |
容易な是正とそうでないもの
書類関係の不備や、簡単な消防設備の改修であれば比較的容易に是正が可能ですが、消防設備が本来必要なのに未設置である場合や、内装構造に関する場合は難易度が高くなります。
特に居抜き物件では、もともと使用していた店舗に不備があり、そのまま引き継いでいるケースがあるので注意が必要になります。居抜きでもこれからテナントを使用するといった場合は消防署による使用検査があります(物件の規模や用途によってない場合もある)。心配な方は仲介業者さんに相談されるとよいでしょう。
違反を放置するとネットで公開されることがある
もしも査察で指摘事項をもらってしまった場合は『いついつ迄に改善します』という改修計画書を消防署へ提出します。改修前に火災が起こってしまうと大変なのでできるだけ早く改修することが求められます。
指摘事項を放置しているとインターネット上で公表されることになります。実際に総務省消防庁のホームページでは違反対象物と該当するテナント名及び不備事項が重大な違反という名目で公表されています。