物件のテナント内覧に来たけれど自動火災報知設備が未設置だったというケースについて

物件のテナント内覧に来たけれど自動火災報知設備が未設置だったというケースについて
スケルトンの空き店舗
スケルトンの空き店舗

新規物件や居抜き物件の内覧で不動産屋さんに案内してもらうことになったとします。そのときに内装や設備工事を施工する業者さんが一緒についてきてくれれば良いのですが、なかなか難しかったりします。

物件を借りた後でよくあるのは、電気の容量が足りなかった、ガスの配管がない、自動火災報知設備などの消防設備が必要だけど設置されていない、本当は用途変更が必要だったなどです。

建築や設備関係に強い管理会社の管理物件である場合は、予め資料や現地で説明してくれることでしょう。我々の守備範囲である消防設備でも『契約したけど消防設備がついていなくて、設置することが必要になってしまった』と後に相談をいただくことがあります。

必要、不要などは専門家が現場を調査しないと判断が困難です。後に必要になってしまった場合はどちらの負担にするのか?特に決まったルールはないので『専有部は賃借人』・『共用部は賃貸人』・または設備自体がビル資産になるのですべて『賃貸人』・などをトラブル防止のために事前に話し合っておくとよいでしょう。

延べ面積500㎡未満の物件は特に注意

どのような用途で入居するのか?

tokyo japan

入居、内装工事後にビル全体に消防設備の未設置問題が発覚したとして、追加工事を宣告されることがあります。その主な例として『自動火災報知設備』の設置です。

厄介なことに、自動火災報知設備は、ビル全体に必要になることが多く、自分たちが入居する場所以外にもそれぞれ火災報知器を設置する必要がでてきます。そのような場合『誰が費用を負担するのか』が問題になります。

  • もともと消防設備が必要であったが何もついていなかった
  • 自分たちが入居したことでビル全体の用途が変わってしまい、新規に消防設備が必要になった。

このような問題が発生する物件は『延べ面積が500㎡未満の物件』で『入居する用途が特定用途』で『自動火災報知設備』が設置されていない場合に起こります。

特定用途とは、不特定多数の人々が利用できるような用途で、『劇場』『飲食店』『物品販売店』『ホテル』などが挙げられます。

自火報の設置基準と特定・非特定用途
防火対象物【令別表第一】特定用途は赤 通常の基準【述べ面積】
劇場等  
集会場等 
1イ
1ロ
300㎡以上
キャバレー
遊技場
性風俗特殊営業
カラオケ・個室ビデオ
2イ
2ロ
2ハ
2ニ
300㎡以上
300㎡以上
300㎡以上
全部
料理店
飲食店
3イ
3ロ
300㎡以上
物品販売・百貨店 300㎡以上
旅館・ホテル
共同住宅など
5イ
5ロ
全部
500㎡以上

・避難介助が必要な病院 ※1
・避難介助が必要な診療所 ※1
・上記2つを除く病院/診療所・有床助産所

・無床診療所/無床安産所

6イ1
6イ2
6イ3


6イ4

全部
全部
全部

300㎡以上

老人短期入所施設
老人デイサービス
特別支援学校

6ロ
6ハ
6ニ

全部
300㎡以上
300㎡以上

学校など 500㎡以上
図書館 500㎡以上
蒸気浴場
一般浴場
9イ
9ロ
200㎡以上
500㎡以上
車両停車場 10 500㎡以上
神社など 11 1000㎡以上
工場
スタジオなど
12イ
12ロ
500㎡以上
車庫など
航空機などの格納庫
13イ
13ロ
500㎡以上
全部
倉庫 14 500㎡以上
前項以外【事務所・美容室など】 15 1000㎡以上
複合用途【特定用途が入居】
複合用途【特定用途が入居なし】
16イ
16ロ
300㎡以上
各用途基準
地下街
準地下街
16・2
16・3
300㎡以上
500㎡で特定の合計が300以上
文化財 17 全部
アーケード 18  

延べ面積500㎡以上の物件は、自動火災報知設備が必須になることが多く大抵の物件に設置されているものと思われます(事務所ビルを除く)。500㎡未満で、もともと設置が必要でなかった物件に入居するような場合で、入居する物件の用途が『特定用途、表の赤字の用途』である場合は新規に自動火災報知設備の設置が必要になります。

450㎡の事務所ビルの1階に物品販売店舗が入居することになりました。物品販売店舗は『特定用途』なので、300㎡以上の建物には自動火災報知設備が必要になります。今までは事務所ビルであり、500㎡未満であったため、自動火災報知設備の設置が不要となっていました。

地下・3階以上に『特定用途』屋内階段が1系統の物件

特定一階段等防火対象物
特定一階段防火対象物

もう一つ注意が必要な物件があります。『地下・3階以上』に『特定用途』が入居する物件で、『屋内階段が1系統のもの』です。消防法令上では『特定一階段防火対象物』と呼ばれており、火災予防上最も警戒されている建物の形態になっています。

例えば、特定用途『劇場・遊技場・カラオケ・飲食店・物販・ホテル・病院・福祉施設・サウナ』が、地下又は3階以上に入居する物件で、屋内階段が1系統のものはビル全体に自動火災報知設備の設置が義務になります。

もしも入居する物件がこの『特定一階段等防火対象物』である場合は、自動火災報知設備が設置されているかどうかを確認する必要があります。すでに設置されているようであれば問題ありません。

参考記事:特定一階段等防火対象物

ホテル・避難介助が必要な施設・文化財

避難口誘導灯

『カラオケ・個室ビデオ』『旅館・ホテル』『避難に介助を必要とする方を収容する施設・有床診療所・有床助産所』『文化財』の4グループの用途では、面積に関係なく自動火災報知設備が必要になります。この場合、入居する物件が『300㎡未満』と『300㎡以上』で取り扱いが変わってきます。

※文化財の場合これから新たに入居するというようなことはないので、ここでは省きます。

延べ面積300㎡以上のもので自動火災報知設備がない物件
延べ面積が300㎡以上である場合は建物全体に『自動火災報知設備』が必要になります。複合用途(雑居ビル)の1テナントとして入る場合でもビル全体に自動火災報知設備が必要になります。居するテナントに自動火災報知設備の設置がなく、延べ面積300㎡以上ある場合は、ビル全体に自動火災報知設備が必要になります。
延べ面積300㎡未満で自動火災報知設備がない物件
延べ面積が『300㎡』未満の物件に入居する場合は次の3用途の部分のみに自動火災報知設備を設置すればOKです。 『カラオケ・個室ビデオ』・『旅館・ホテル』、『避難に介助を必要とする方を収容する施設・有床診療所・有床助産所』で延べ面積が300㎡未満の物件を『特定小規模施設』といいます。この特定小規模施設に該当する場合は、簡易式の自動火災報知設備を設置することができます。自動火災報知設備を設置する場合に比べて格段に費用を抑えることが可能になります。

参考記事:特定小規模施設用の自動火災報知設備で設置費用を安くする
参考記事:自火報設備・特定小規模用・住宅用火災警報器の違い

まとめ

  • 入居する物件に火災報知設備の設置があるか確認する
  • 延面積500㎡未満の物件には自動火災報知設備がついていないことがある
  • 現況設置がない場合でも設置基準により追加設置が必要になる
  • 事前に関連する利害関係者に確認協議しておく必要がある

参考:消防法施行令

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