自動火災報知設備をはじめとする消防設備の設置義務は、原則『用途』『面積』『収容人数』の3つの条件で決まります。その中でも、火災の危険性があり、被害が甚大になることが想定される用途では、面積に関係なく設置対象となる用途があります。自火報が面積に関係なく必要になる用途は下記のとおりです。
- カラオケボックス・個室ビデオなどの個室サービス
- 避難のために介助が必要になる福祉施設・有床診療所・助産所
- 老人短期入所施設
- 旅館・ホテル
- 格納庫
- 文化財
- 特定一階段防火対象物
これらの用途は『面積に関係なく』自動火災報知設備の設置が義務になります。面積に関係がないのでどんなに小さい物件でも自動火災報知設備が必要になります。
自火報の設置には大きな費用がかかってしまうため、オーナー様、事業者様にとっては悩みの種になっていることでしょう。そのような悩みを解消するために『延べ面積が300㎡未満』の下記の用途には、簡易式の自動火災報知設備が設置可能です。
- カラオケボックス・個室ビデオなどの個室サービス【2項ニ】
- 旅館・ホテル【5項イ】
- 避難のために介助が必要になる病院・有床診療所・助産所【6項イ】
- 老人短期入所施設【6項ロ】
- 老人デイサービス・厚生施設・保育所で入居、宿泊させるもの【6項ハ】
※これらの用途で延べ面積が『300㎡未満』
上記の施設で延べ面積が『300㎡未満』の建物を『特定小規模施設』・特小(とくしょう)と呼びます。この特定小規模施設に該当する場合は『特定小規模施設用自動火災報知設備』の設置が可能になります。
特小自動火災報知設備が安く済む理由
特小の自動火災報知設備は感知器が作動した際に相互に無線通信し、同時に火災警報を鳴らす仕組みになっています。そのため、必要箇所に感知器を設置することでシステムが構築されてしまうという優れモノであります。
本来自動火災報知設備は、システムを制御するための『火災受信機』を設置し、各階に『非常ベル・押し釦』を設置します。そこから配線を分配し各火災感知器に配線を接続するという大掛かりな工事が必要になります。特小の場合、これらの配線工事や電源工事を必要としません。そのような理由から、設置費用が安くすむのであります。
火災感知器について
特定小規模施設に自動火災報知設備を設置する場合は『特定小規模施設用自動火災報知設備』の設置が可能となっています。この自動火災報知設備は、感知器自体に『煙センサー又は、熱センサー』『音響装置』『無線通信器』『6年持続する蓄電池』が一体化した構造になっています。感知器作動と同時に通信・連動し、一斉に火災警報本体が鳴動します。
この特小用火災報知設備を設置する場合には、自動火災報知設備を設置するために必要な『消防設備士甲種4類』の国家資格を必要としません。資格がない方でも設置OKとなっています。
※部屋のどの部分に設置するか?建物のどの場所に設置すればいいか??消防手続きに必要な設計図作成や、各種申請があるため、実際には一式まとめて消防設備業者が取り付けているというのが現状です。
複合用途に設置するケース
様々な用途が混在するような施設を『複合用途』といいます。複合用途の場合は『延べ面積300㎡以上』で自動火災報知設備の設置が義務になります。延べ面積が『299㎡』の場合は自動火災報知設備の設置義務はありません(特定一階段防火対象物を除く)。
延べ面積『299㎡』で一部が『カラオケボックス・旅館等』が入居する場合は、カラオケや旅館部分のみ自動火災報知設備の設置が必要になります。このようなケースでは該当する部分にのみ『特定小規模施設用の自動火災報知設備』を設置すればOKというルールになっています。
まとめ
- 面積に関係なく自動火災報知設備設置が義務になる用途がある
- 自動火災報知設備を設置するより大幅に安く済む
- 特定小規模施設に特小用の自動火災報知設備が取り付け可能
- 特小感知器は、センサー、音響、無線通信機能が一体化した装置