デザイナーズ物件の自動火災報知設備の新設工事
有難いことに新しいお客様より自動火災報知設備の新規工事のご発注を頂きました。誠にありがとうございます。今回の物件は東京都某所のデザイナーズ築浅物件です。きれいに仕上げるよう気合をいれて施工させていただきました。
設置の経緯は、共同住宅仕様の物件ですが 3階以上に民泊、旅館施設として使用する場合は特定一階段等防火対象物に該当してしまうことから今回の設置に至りました。
屋内階段が1系統で、地下又は3階以上に「不特定多数」の人々が入ることができる施設がある防火対象物のことを言います。
特定一階段等防火対象物になると通常の規制く加え「再鳴動式の火災受信機」「階段竪穴区画7.5mに1個煙感知器」が必要になります。通常の階段は15mに1個煙感知器があればよいです。
施工の流れ
- 現場調査
- 設計図作成、着工届作成、管轄消防署に事前相談
- 配線(電源配線、幹線配線、枝線配線)
- 器具の取り付け
- ブレーカーの設置工事
- 作動試験
上記の流れで各工程をこなしていきます。きれいに仕上げるためには現場調査に時間をかけ建物の隅々までしっかりとチェックします。現場調査が上手くできれば仕上がりの質(配線の隠蔽率)は格段に良くなります。
現場調査【鉄筋の場所と隠蔽配線のルートの把握】
今回は鉄筋コンクリート造(RC)のため、複数箇所コンクリートに穴を開ける作業があります。コンクリートの内部はいくつもの鉄筋が縦横に走っており、振動ドリルで貫通工事を行っても鉄筋にぶつかってしまっては配線ルートを開通させることはできません。
再度穴のあけ直しとなれば大きな時間のロスになるため、鉄筋探査機を使用し、あらかじめ鉄筋の場所を把握しておき貫通作業時間を短縮できるように調査します。
着工届を作成し管轄消防署に事前相談
現場調査が済んだら設計図、着工届を作成します。設計は主に「火災受信機を設置する場所」「押し釦を設置する場所」「火災感知器の種類の選定」「火災感知器の配置場所」を法令の基準通り図面に配置します。
着工届は法令に適合しているかどうか、管轄消防署との見解に相違がないかについて確認するためのもので、法令により施工の10日前までに届出をする必要があります。
設置基準については消防法施行令や消防法施行規則に明記されています。
配線(電源配線、幹線配線、枝線配線)
屋外配線
自動火災報知設備の新設工事に必要な配線は ①システムを動かすための100V電線 ②自動火災報知設備のフロアにまたがる幹線 ③各フロアの感知器をつなぐ枝線の3系統を準備する必要があります。
①の電源線は電灯ブレーカーから電源を供給します。ブレーカーは建物によって設置場所が異なります。屋内であったり、屋外であったり、地下であったり様々です。
今回の物件は屋外に設置されているためしっかりと防水処理を行いながらルートを造りを行います。屋外配管のルートは「PF管」や「PFD管」を使用します。
PF管は自己消火性能を持ったフレキシブル樹脂配管です。PFD管はPF管を2重構造にしたアップグレード版のようなものです。いづれも屋外で使用できます。PF管の自己消化性能については過去記事(燃焼実験動画あり)に書いてあるのでご興味がありましたらご参照ください。
屋内配線【幹線と枝線】
消防設備に使用する配線は「耐火配線」「耐熱配線」「一般警報用配線」があります。状況に応じて3つの配線を使い分けて配線作業を行います。
画像の配線を確認すると左側が警報用配線(OP)、中央が耐熱配線(HP)です。警報用配線は耐火耐熱電線認定委員会の評定品となっております。今回は耐火配線は使用しないので耐熱配線と警報用配線のみ使用しました。
自動火災報知設備の配線の種類と使い分け | ||
耐火配線 (FP) |
火災受信機 ~ 非常電源間 火災受信機 ~ 中継機 ※中継機に非常電源が内蔵されている場合は警報配線でよい |
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耐熱配線 (HP) |
火災受信機 ~ 地区音響装置 火災受信機 ~ アナログ感知器 アナログ感知器 ~ アドレス発信機 |
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警報用配線 (AE、OP) |
火災受信機 ~ 表示灯(例外あり) 火災受信機 ~ 一般感知器、発信機 |
器具の取り付け
配線が完了しましたら各種器具を取り付けていきます。特にどの器具から取り付けるというルールはないのでできる作業から行っていきます。基本的には共用部班、居室班、その他の作業と言った具合で分かれて行います。
画像の装置は火災受信機というもので、システムのすべてを制御する機械です。火災受信機にはAC100Vと建物各所に送られた配線を接続していきます。
火災受信機は1台設置すれば良いことに対して、画像の装置(総合盤)は法令の基準により定められた方法により設置します。この装置には押し釦と非常ベルが内蔵されています。
押し釦の設置基準は「歩行距離50m」に1台必要で、非常ベルは「水平距離25mに1台」必要になります。各々の距離が規定の範囲内に収まるように設置していきます。小規模物件の場合はフロアに1台設置すれば足りてしまいます。
ブレーカーの設置工事
自動火災報知設備を稼働させるためには火災受信機にAC100Vの供給が必要になります。また、消防設備は専用回路で受電する必要があります。空きブレーカーがない場合は新規に増設をする必要があります。
今回は自動火災報知設備と誘導灯の新設工事を行っているので専用回路を新規に2個増設しました。設置したらストッパーの赤キャップを取り付けます。
消防設備のブレーカーは専用回路であることに加え、漏電ブレーカーの一次側で受電する必要があります。漏電ブレーカーの1次側から受電することで、万が一消防設備ではない回路で漏電によりブレーカーが落ちても、漏電ブレーカーの前側から受電することで消防設備のブレーカーには影響せずそのまま使用することが可能です。
作動試験
すべての工程が完了したら作動試験を行っていきます。作動試験は「絶縁試験」「共通線試験」「予備電源試験」「予備電源によるベル鳴動試験」「各種感知器の作動試験」を行います。
これらの試験データは試験完了後に消防署に提出する「設置届」の必要的記載事項になります。設置方法や誤りがあると、是正するまで消防検査に合格できません。しっかりと確実に行う必要があります。
試験名 | 内容 |
絶縁試験 | 配線の絶縁が正常かどうか調べる 自動火災報知設備の場合は0.1MΩ以上の数値があればOK |
共通線試験 | 共通線(C線)は警戒区域7つまで使用できます。8つ以上になっていなければOK |
予備電源試験 | バッテリーの容量が規定値以上であればOK |
予備電源によるベル鳴動試験 | 主電源(100V)を落としてバッテリーでベルの鳴動を行う試験 |
感知器試験 | 各種感知器が作動するか、感知器の警戒区域が正常になっているか確認 |