自動火災報知設備を設置してみた【超築浅店舗付きデザイナー住居】

自動火災報知設備を設置してみた【超築浅店舗付きデザイナー住居】

発信機

今回の依頼は、建物竣工後間もない超築浅物件です。築浅物件なのに自動火災報知設備の新規工事がなぜ必要なのか?と疑問をお持ちの方もいらっしゃることでしょう。

自動火災報知設備の設置基準は、例外はありますが原則「建物の面積」「建物の用途」によって決定されます。※例外は特定一階段防火対象物など

例えば、耐火構造、延面積480㎡の、1階部分を事務所として、それ以外の部分を共同住宅として設計した場合「自動火災報知設備」は法令による設置義務を免れることになります。

建物が建った後、気が変わって「やっぱり事務所として貸すのはやめて飲食店をいれよう」といった場合、事務所→飲食店に用途を変更することにより自動火災報知設備の設置基準に接触し建物全体に自動火災報知設備の設置が必要になってしまうのです。

建物が完成した後の新規工事

建物は各種工程を経てその状況に適した業者が順番に作業を行い、バトンをつなぎ完成を目指します。私たち消防設備業者は建物が建ち、天井ボールを貼る前までに各種配線をし、ボードを貼られた後に器具をつけていきます。

完成している建物はすでに仕上がっているので、どのように配線をするのかが課題になります。

仕上がりを気にしないであれば、モールなどで露出配線材料を多用し、コツコツと工事をしていけばよいのでしょうが、大金を使ってせっかく建てた建物なのだから新築みたいに仕上げたいというのが本音ではないでしょうか。

物件初期調査後・ファーストインプレッション

鉄骨造で天井裏が非常に狭く、天井上にはグラスウールがギッシリと敷き詰められています。ところどころ点検口はあるが覗いても梁だらけ。非常に厳しい戦いになることを覚悟をしつつ最小露出箇所を目指して施工する方針。

デザインと消防設備

隠蔽配線

消防設備の配置は消防法令により定められているため、好き勝手に設置することができません。法令により決められている範囲内で「しっくりくるところ」を探していくことになります。

共用部に発信機(押しボタン)やベルを収納する総合盤を設置するスペースがなかったので、各装置を個別に設置することでゆとりのある設置ができました。

火災感知器

既存物件は新築工事とは違い、デザイナーがいるわけではありません。設置場所に関して作業者のセンスが問われることになります。しっくりくるところにしっかりとハマれば既存物件でも新築同様に違和感のない安心感のある設置となることでしょう。

火災受信機を設置する

火災受信機

火災受信機は火災報知システムの制御する装置で、システムが作動したときに各種操作を実行しやすい場所に設置する必要があります。共用部や管理室に設置されることが多く、今回の物件は管理室がなく、共用部の一角に程よいスペースがあったため、収まりの良いこのスペースに設置することにしました。

火災受信機には電源となるAC100Vが必要になるので、受信機設置場所は分電盤から近いと作業的には簡単に済みます。

受信機設置前

受信機アンカーとめ

鉄骨造でALC仕上げでしたので、ALC用のアンカー4本で固定。最近の受信機は旧製品と比較して格段に軽量化されているので受信機の固定は容易になりました。

今回の火災受信機は自動試験機能付きのP型1級の10回線を使用しました。自動試験機能付システムは、各所に設置される火災感知器の遠隔試験機能や自動試験機能が付いています。※当該機能を使用する場合は火災感知器も自動試験機能付きである必要があります。

エレベーターがある物件ではエレベーターシャフト内部にも感知器が必要になります。通常はエレベーターシャフト上部に感知器点検用の点検口を設置しますが、既存物件の場合はこの点検口を設置することが容易ではないため、遠隔試験又は自動試験機能付きの感知器を使用することで適合させることができます。

遠隔試験や自動試験を行っていても感知器自体の目視点検は必要になるので、エレベーターの隙間から感知器が目視できるような場所に設置する必要があります。

完成と結果

店舗部の隠蔽配線

室内の隠蔽配線

室内の隠蔽配線2

ファーストインプレッションに対して隠蔽率98%を達成できました。

残念ながら隠蔽できなかった2%の部分は、火災受信機周りの電源供給配線関連で、ALC仕上げであったため埋め込みようがない場所で、PF管工事にて対応いたしました。受信機周り以外は100パーセント隠蔽できたので今回の仕事は大成功と言えます。

新規で自動火災報知設備の工事をお考えの方で隠蔽工事に興味がある方がいらっしゃいましたらご連絡お待ちしております。

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