倉庫を運営するお客様より「ここのところ頻繁に火災発報するのですがなぜでしょうか?」という相談をいただきました。この倉庫は弊社で管理させていただいている物件で差動式分布型感知器(空気感式)を使用しています。
感知器は大きく「スポット型」と「分布型」に分けることができます。スポット型は皆さんおなじみ?の、丸い形の感知器で、分布型は空気管という空洞の銅パイプを天井に張り巡らせ、だだっ広い倉庫、体育館などに設置されています。
空気管の原理を簡単に説明
空気管は感知器と接続されます。感知器から空洞の銅管が天井まで立ち上がり、天井を広範囲に巡り再び感知器に戻ってきます。
この感知器の原理は、空気管周りの温度が急激に温まると空気管内部の空気が熱により膨張します。その膨張を利用し感知器内部の接点が触れることにより火災信号を発します。
体育館や倉庫などの屋根は金属を使用している場合があります。気温差がある日は太陽の熱により屋根が高温になり、急激に天井付近の温度が暖められ発報してしまうことが考えられます。
その事象を防止するために、感知器内部にはリーク孔とよばれる空気を逃がすための孔が設けられています。空気管内部の空気が膨張しても膨張の原因が継続的でなければリーク孔により抜けていき誤作動を防止することができます。
誤作動原因について
空気管式は消防設備点検時に各種試験を実施します。その試験とは「作動試験」「作動継続試験」「流通試験」「接点水高試験」「リーク抵抗試験」です。
作動試験 作動継続試験 |
感知器が作動するか、作動が継続するかをチェック |
流通試験 | 空気管経路に漏れがないかをチェック |
接点水高試験 | ダイヤフラムの接点間隔が適切かどうかをチェックする |
リーク抵抗試験 | ダイヤフラム内の空気の漏れ値が正常かチェックする |
これらの試験を実施し感知システムの状態を判断していきます。
誤作動を起こす場合はこれらの数値が基準値外、または基準値内であるが経年劣化により数値が既定値よりも悪い方向にふれている場合です。システム自体は自然現象を利用したアナログなモノですので気象条件により左右されることもあります。
台風が近づくと大気の気圧が下がり空気管内部の空気が外側に引っ張られ発報しやすい状況がつくられ、古い感知器ではまれに発報してしまうことがあります。
参考:台風の一生【気象庁ホームページ】
感知器を交換
今回のケースでは空気管の漏れは確認できておらず、感知器交換を行えば誤作動することがないと考え感知器そのものを交換しました。空気管リニューアルも望ましいのですが、今回は応急処置ということもありお客様との相談の結果、感知器の交換のみで様子を見ることに。
設置状況にもよりますが、体育館や倉庫は外気による対流が多く、ほこりやチリ等が蓄積し年月を積み重ねリーク抵抗値を増加させます。また畑に近いような場所では土も空気により運ばれ発報しやすい状況がつくられます。
感知器交換・各種試験を実施
作動試験はテストポンプという注射器のような器具で既定の空気を送り込みます。旧式の感知器には作動灯が設けられていませんでしたが今回交換した感知器にはLED灯が設置されているため容易に感知器の作動を確認することができます。
まとめ
体育館や倉庫などの火災システムが頻繁に発報する場合は、空気管式感知器の異常が疑われますのでチェックしていただけると良いかと思います。また火災感知器の誤作動につきましては下記のリンクに記載しております。