差動式スポット型熱感知器の誤作動原因と交換・改修工事

差動式スポット型熱感知器の誤作動原因と交換・改修工事

自動火災報知設備の誤作動が発生しました。初期段階では原因が不明なので、現場を見て怪しい箇所を1つずつ洗い出していきます。特定方法の概要は別の記事に記載していますためここでは省略いたします。

今回は差動式スポット型感知器が原因である場合の内容になっています。この火災感知器は雨が多い梅雨や台風の季節または、寒い冬で暖房器具により室温を一気に暖めるような条件で誤作動を起こすことが大変多いです。余談ではありますが、なぜか連休中にベルが鳴るケースが多いような気がします。。。

差動式スポットとはどのような感知器なのでしょうか??

熱感知器【差動式】の誤作動

熱感知器が誤作動を起こす原因はというと、

  1. 気象条件
  2. 差動式スポットの劣化【リーク孔のつまり】
  3. ぶつけた

差動式スポット型に限っては、気象の変化によって感知器が影響を受けてしまうことがあります。誤作動の大半は2番のリーク孔のつまりであると考えていますが、気象の変化が起こった、そしてリーク孔も詰まっていた。といったケースで誤作動を起こっていると推察されます。

空調機付近に感知器を設置し誤作動を起している場合

エアコンや、温度上昇に影響を及ぼす空調機械が設置されているような場合では、リーク孔が原因であると言い切ることは難しく、新品に交換しても再度誤作動を起こしてしまう可能性があります。

差動式の熱感知器とは?

差動式画像
差動式スポット型感知器【熱感知器】

差動式の熱感知器はどのような感知器かといいますと、感知器内部に空気室があります。熱感知器に熱が加わると、感知器内部の空気室が熱膨張により膨らみます。一定の加速度で空気室が膨らむことでスイッチONになり火災信号を発します。

空気室とリーク孔はつながっていて、空気室に溜まった空気を排出する役目をしています。空気室が膨らむとスイッチONになりますが、膨らむよりも空気が逃げる量が多ければONにはなりません。差動式スポット型感知器は、空気室とリーク孔の構造による温度上昇率で作動する仕組みとなっています。

差動式の構造画像
差動式スポット型の構造

リーク穴が詰まると空気の逃げ場がなくなり空気室が膨らみやすくなります。今回の誤作動の原因はこのリーク孔のつまりであると断定いたしました。

リーク孔の詰まりと加熱試験

熱感知器は加熱試験機という通称【熱棒ねつぼう】を使用して作動チェックをしていきます。リーク孔が詰まっている感知器は加熱試験機を当てると直ぐに発報を示すLEDランプが点灯します。

正常の感知器は試験後、2,3秒後に発報します。なので、リーク孔がつまり気味な感知器は点検時になんとなく『この感知器は作動が早めなのでそのうちにご作動を起こす可能性があるぞ!』という予測を立てることができます。

誤作動を起こさないための対策

差動式スポット型感知器が原因で誤作動を起こす場合は、リーク孔詰まりである可能性が大であります。設置状況にもよりますが、リーク孔は長期間空中に舞うホコリ、チリ、湿気などにより徐々に詰まり気味になります。※設置されている感知器の全数が詰まるというわけではありません。

誤作動を起こすと消防署に通報されて物件を消防車が囲むということが頻繁に起こっています。そのような状況を避けるためには、メーカー耐用年数でのリニューアルを推奨しております。火災感知器類は15年とされています。交換しなければ罰せられたり、義務ということはありません。あくまでも目安なのでこの頃合いを見て交換していただければ誤作動を起こす確率はグッと少なくなることでしょう。

感知器を交換してみた

古い差動式スポット型画像

今回誤作動を起こした感知器を交換していきます。差動式スポット型熱感知器はベースと本体が1セットになっており、熱感知部の通称ヘッドを回転させベースから切り離します。ベースとヘッドは爪のような端子で接続されています。この端子部分には一般的にDC24Vが常時流れています。

ベースを取り外す画像

天井に固定されているビス類を外し、端子に接続されている線を1本ずつ切り離していきます。この火災感知器警報回路は切ると火災受信機で断線信号を受信し警報音が鳴り響きます。また切った配線がショートしてしまうと全体にベル、サイレンが鳴り響きますので、火災受信機で一定の操作が必要になります。

新品に交換・加熱試験

差動式スポット加熱試験画像

ということでリニューアルが完了しました。最後に加熱試験でチェックして問題がなければOKです。交換後はしばらく様子見でその後誤作動が起こらなければ無事完了ということになります。

火災感知器の誤作動については長期戦になることが多いですが、予め様々な角度から考察していくことでスムーズな改修工事が可能になることでしょう。リニューアルということで同時に定温式スポット型感知器【熱感知器】の交換もさせていただきました。

定温式スポット型工事画像
ホコリが蓄積した定温式スポット型感知器

定温式スポット型熱感知器はホコリ、チリなどで誤作動を起こすことはありません。また一般的にも低温式スポット型は誤作動を起こす確率は大変低いため、原因の特定をする場合はこの感知器意外で探していくことになります。※ぶつけて凹むと発報するのでご注意願います。

まとめ

  • リーク孔が詰まると空気の逃げ場がなるなる
  • 空気の逃げ場がなくなると空気室が膨らみ発報する
  • 誤作動対策は耐用年数での交換を推奨
  • 定温式は誤作動を起こしにくい
  • 定温式はぶつけてへこむとすぐ発報する

参考記事:緊急事態!火災報知器の誤作動よくある原因【非火災報】

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