防火区画を形成するための設備である防火設備の一つに防火ダンパーがあります。防火ダンパーは、防火区画を貫通する空調ダクト内に設置されています。壁や天井が防火区画になっているのに、空調ダクトから火や煙が出ていってしまっては区画をしている意味がなくなってしまいます。
防火ダンパーは、ダンパー本体と、そのダンパーを動かすためのレリーズ部に分かれています。ダンパー本体はダクトを塞ぐような形で羽が展開する仕組みになっています。
そんな防火ダンパーも長年使用していると動かなくなってしまうことがあります。どのような場合かと言うと
- ダンパーの固着により作動しなくなる
- レリーズの故障により作動しなくなる
です。いずれか片方による場合もあれば、同時にだめになることもあります。そのような場合には、ダンパー本体の交換および、レリーズの交換を同時に行えばほぼ元通りになることでしょう。
ただ、ダンパー本体を交換するとなるとかなり大掛かりになってしまいます。そのようなときは、内部清掃やメンテナンスで復旧させるという方法があります。とはいえ、一度腐食したものは、いつかまた同じような状態になる可能性が高く、数年後にもとの状態になることを前提にメンテナンスを行います。
防火ダンパー、レリーズが動かなくなる原因
防火ダンパーが動かなくなるとき
ダンパーが動かなくなる場合のほとんどがダンパー軸や羽の固着によるものです。空調ダクト内部は、24時間365日風に吹かれています。乾いた風、湿気を含んだ風、油を含んだ風、ホコリを含んだ風など、様々な気流が防火ダンパーを通過して行きます。
ダンパー本体を動かすことは、点検時くらいで、ほとんどないことでしょう。風に吹かれながらも、ほとんど動かされずそのままということが重なり、設置条件が悪い場所ではダンパーの動きが悪くなってしまいます。
レリーズが動かなくなるとき
レリーズにはモーターとスプリング(ばね)が使用されています。制御盤から起動信号が入るとそのままスプリングを一気に開放します。レリーズのばねは非常に強力で、一気に勢いよくダンパー軸に力を伝えます。
※電気信号で一旦モータを動かしバネを起動させる方式のレリーズもあります。
起動後、元通りに戻すためには復旧作業を行います。復旧操作はモーターによる自動式と、手でレバーを元通りの位置に戻す手動式があります。どちらの操作にせよ、レリーズ本体に掛かる負荷が大きく、何度も起動、復旧をくりかえすと頑丈な装置でも劣化してしまいます。
また湿度が高いような場所では、端子台が腐食することがあります。このようなケースも動かなくなる理由の一つに挙げられます。
ダクトの中を覗いてみると
ダクトの内部を覗いてみるとダンパーと温度ヒューズが現れました。長年風を受けたダンパー、温度ヒューズ起動装置がひどく劣化していることがわかります。ダクト内部は様々な状態の空気が通過するため想像より劣化している場合があります。
日々の積み重ねでホコリはたまっていきます。埃が水、油と混じりダンパーに付着すると、羽や軸がロックすることがあります。レリーズのバネがいくら強力だからといってもダンパーが固まってしまうとビクともしません。
さいごに
簡単に防火ダンパーとレリーズの不作動について書いてみました。ダンパー本体の交換は非常に大掛かりで簡単ではありません。長期で安全に使用するため定期的なメンテナンスをすることをオススメいたします。