統括防火管理者とは、様々な用途のテナントが入居するような複合用途物件で選任される、防火管理者の代表者です。複合用途のテナント・共用部などはそれぞれ管理権原が別れています。管理権原者は自分の持ち場を担当しつつ、協議して統括防火管理者を選任し、防火管理・維持・緊急時の対策、対応を行います。
統括防火管理者は各テナントなどの管理権原者(防火管理者)にあれやこれやと防火管理に関する指示を出します。例えば通路にものを置いていないか、消防訓練の実施や参加などが該当し、防火管理上必要な業務について統括することとされています。
統括防火管理者は防火管理者の資格があれば誰でも選任可能です。選任は『統括防火管理者選任届』を提出することで完了します。選任後は各管理権原者で協議して作成した『全体の消防計画』を提出することが必要になります。
統括防火管理者選任と届出関係
統括防火管理者が必要な防火対象物
統括防火管理者が必要なものは、管理権原が別れているもので下記のとおりです。
高層建築物 | 【高さが31mを超えるもの】 |
地下街 | 【消防長又は消防署長が指定するもの】 |
準地下街 | 【特定用途が入居するもの】 |
避難困難者施設【6項ロ】 | 地階を除く階数が3以上かつ収容人員10人以上 |
特定防火対象物 | 地階を除く階数が3以上かつ収容人員30人以上 |
非特定用途防火対象物 | 地階を除く階数が5以上で収容人員50人以上 |
特定用途とは不特定多数の人々が自由に出入りできるような物件を言います。老人ホームや福祉施設などは不特定多数の出入りはありませんが、火災が発生した際の被害が大きくなることが想定されるため特定用途に指定されています。
統括防火管理者の選任と全体の消防計画
統括防火管理者になるには防火管理者の資格が必要になります。甲種乙種どちらでも選任が可能となっています。統括防火管理者という専門資格はなく、防火管理者を取得していれば選任することができます。選任の際には『統括防火管理者選任届』を管轄の消防署に提出します。同時に『全体の消防計画』を提出することが必要になります。
全体の消防計画は、各々の管理原限者が提出している消防計画とは別に、ビル全体の消防計画を定めたもので、消防計画とは別に作成し届出る必要があります。
※統括防火管理者、全体の消防計画は連名で行うことが可能です。
ビルオーナーが統括防火管理者の場合の例 |
防火管理書類 |
オーナーが提出する関連書類 | 統括防火管理者選任届 全体の消防計画 防火管理者選任届『共用部・専有部』 消防計画『共用部や専有部』 |
各テナントが提出する書類 | 防火管理者選任届(管理権原範囲分) 消防計画(管理権原範囲分) |
といった具合で書類を作成し提出していきます。
全体の消防計画に記載されている事項
『全体の消防計画』は各管理権原者と協議した上で作成します。その内容の一部を箇条書してみます。
- 管理権原の確認
- 防火管理の一部を委託する場合の業務に関する事項
- 全体の消防計画における消火、通報、避難訓練の実施について
- 廊下、階段、避難口、防火区画、防炎区画、避難階段の維持管理について
- 火災、地震などの災害が起こった場合における活動について
- 火災の際に消防隊に建物の構造や必要事項の情報提供、消防隊の誘導に関すること
- その他全体の防火管理に関する事項
これらの事項を書式化していきます。初心者の方には少しむずかしいこともあるかと思いますが、消防庁がひな形と書き方の見本を用意しているので自力でやってみるのもよいかと思います。時間がなかったり、相談しながら作りたいという方であれば我々のような専門業者に相談してみるのもよいかと思います。
管理権限が替わったらその都度更新が必要です
複合用途ビルでテナントが入れ替わった場合はその情報の更新が必要になります。全体の消防計画には統括防火管理者を筆頭にその建物の管理体系を記載したテナントの連携状態が実名で記載されています。
入居したら情報を追加し、退去したら情報を削除します。常に現在の状態を保ちつつ適正な状態にすることが求められています。
統括防火管理を単一権限にする方法
統括防火管理は単一の防火管理と比較して、すべきことが多く管理が複雑だったりします。そのような場合は、ビル全体を「単一権限」にして防火管理者が全体の権限を持つといった方法があります。
統括防火管理者の代わりにビル全体の防火管理者を立て、すべての権限を含めた消防計画を届け出れば手続きは完了です。統括防火管理の選任や全体の消防計画は不要です。
ただ、この場合すべての管理権限についての防火管理者が責任を持つということになるので、複数権限にして責任を分散するという方法が一般的です。
関連会社同士が入居していたり、マンションに小さな事務所や店舗が併設していて火災の危険がほとんどないような場合では単一権限で管理を行っていることもあるます。
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参考:消防法