投資用物件は大小さまざまな形態で存在しています。その中でも消防設備関連で維持コストのかかりにくい物件があります。それは『①延べ面積300㎡未満の屋外階段の物件』か『②300㎡未満で地上2階建て、階段は屋内・屋外どちらでも可』です。
ときたま延べ面積が299㎡で屋外階段の建築物に出会うことがあり、消防設備の維持管理のコストがかかりにくい条件に該当しています。その理由について説明したいと思います。
延べ面積300㎡未満である屋外階段の物件
自動火災報知設備が不要になる
300㎡未満の場合は消防設備の設置義務に引っかかりにくく、設置する設備がごくわずかになります。また、300㎡未満で建てられる物件は低層階のためエレベータの設置も不要になります。エレベータの設置コスト及び維持コストが不要になります。
階段は屋内ではなく屋外階段が欲しいところです。屋外階段で延べ面積が300㎡未満の物件では、一部の用途を除き、どの階に入居させても『自動火災報知設備』の設置が不要になります。
『カラオケ・個室ビデオ』
『旅館・ホテル』
『避難に介助を必要とする方を収容する施設・有床診療所・有床助産所』
『文化財』
これらの用途を入れる場合は設置義務が発生しますが、300㎡未満のため部分的に簡易式の自動火災報知設備を設置できるため、費用を大幅に抑えることが可能になります(※ビルまるごと上記の用途で使用する場合は簡易式が使用できない場合があります)。
ということにより、自動火災報知設備の設置義務、点検義務が発生しません。
収容人数が50人以下である場合は非常警報も不要
ビルの収容人数が50名未満(無窓物件の場合は20名未満)である場合は非常警報設備(非常押しボタン)の設置も不要になります。この設備は、押しボタンとサイレンが一体化しているもので、どこかの階でボタンを押した場合、それ以外の階でもサイレンが一斉に鳴動するという警報設備です。
この設備に関して言えば、自動火災報知設備を設置することに比べての設置コストが1/3、1/4ほどですみます。
その他の消防設備
その他設置することになると思われる消防設備は『誘導灯』『避難器具』『消火器』です。誘導灯は竣工時の電気工事に含まれていることがほとんどであると思います。消火器は設備工事が不要です。
避難器具ですが、3階以下で使用する場合は、設置が簡単な『避難はしご』や『避難ロープ』を設置することができます。これらの避難器具は、窓の腰壁に金具を引っ掛けて使用可能なため、大掛かりな工事が発生しません。(開口部がない、避難器具を固定するためのアンカーを打つ必要がある場合を除く)
防火対象物点検が不要になる
防火対象物点検とは、防火管理の維持がしっかりとされているかどうかをチェックするためのもので、該当する場合は年に1回点検し、消防署へ報告する義務が発生します。
この点検は『特定一階段防火対象物』か『収容人員が300人以上で特定用途』で義務が発生します。今回の『300㎡未満で屋外階段』の建物ではどちらの条件にも該当することがなく、点検義務は発生しません。
なぜ防火対象物点検義務が発生しないかというと『屋外階段』であるためです。屋外階段の場合は特定一階段防火対象物の条件から外れるので、さまざまなコストが削れるというメリットがあります。
特定一階段防火対象物になるとどうなるか?
- 自動火災報知設備の設置が義務になる
- バルコニーがなければ1動作式の避難器具が必要になる
- 防火対象物点検が義務になる
まとめ
- 『延べ面積300㎡未満で屋外階段の建物(地下のある物件を含む)『延べ面積300㎡未満で地上2階建て、階段は屋内外どちらでも可』、の建物は維持コストが安くなる
- 一部の用途を除き自動火災報知設備が不要になる
- 収容人員次第で非常警報設備も不要になる
- 誘導灯、消火器、避難器具の設置が必要になることがある
- 3階以下では簡易的な避難はしご、避難ロープが使用できる
- 防火対象物点検が必要ない
- 設置した『誘導灯』『避難器具』『消火器』『非常警報』の消防設備点検は必要になる
面積が大きくテナント満室フル稼働できるような場合は消防設備を設置したほうが利回りは高くなると思いますが、延べ面積が300㎡付近である場合はあえて299㎡に下げ条件を満たすように建てることができればランニングコストがかかりにくい物件が出来上がります。
参考:消防法施行令