消防設備の設置は『義務設置』と『自主設置』があります。義務設置は消防法令に規定されている設置基準に該当する場合で、該当しない場合は自主設置となります。
自主設置は自ら火災予防のために設置するもので、『法令の基準外ではあるけれど安全安心を考えて』・『施設の管理課に求められて』または『行政による指導で』というケースで設置されます。
自主設置でも消防設備は消防設備
消防設備を設置することになったら『義務でも自主でも消防設備である』ことは変わりありません。なので勝手に独自の基準で設置してよいということではなく、あらかじめ管轄の消防署による承認が必要になります。承認は、義務設置と同様に『着工届』を工事着する前の10日前までに提出します。
※着工届を省略できる『軽微な工事』を除く
参考記事:消防設備の着工届が省略できる軽微な工事
着工届とは
着工届とは、工事に着手する10日前までに提出する設計書であります。届出の内容は下記のとおりです。
- 着工届表紙
- 防火対象物の概要表
- 設備の概要表【設備ごとに概要表の様式が異なる】
- 平面・天伏・立面・その他関係する書類
- 上記の図面に設備の配置や設計内容を記載
- 使用する機器の承認図
- 案内図【物件の地図】
- その他
設計は各種設備の設置基準どおりに然るべき設備をプロットし漏れがないように落とし込みます。この設計書を管轄の消防署や役所が確認し、適or否を判定します。否の場合は再設計になります。
第十七条の十四
消防法第17条の14
甲種消防設備士は、第十七条の五の規定に基づく政令で定める工事をしようとするときは、その工事に着手しようとする日の十日前までに、総務省令で定めるところにより、工事整備対象設備等の種類、工事の場所その他必要な事項を消防長又は消防署長に届け出なければならない。
着工届を提出しなかった場合【過去に誰かが言っていた話】
概要
- 事務所ビル【450㎡くらい】に自動火災報知設備を設置
- 既存消防設備【消火器・避難器具・誘導灯】
- 消防設備点検を6ヶ月毎に実施【3年に1度提出】
- 自動火災報知設備を設置した
- 着工届を提出しなかった
- 設置届も提出しなかった
- 消防設備点検の更新で自動火災報知設備が報告書に記載
- 消防署から連絡が入る
※特定一階段等防火対象物ではない。
事務所【令別表第一 15項】『延べ面積1,000㎡』で自動火災報知設備が義務設置になります。この物件で設置義務に該当しないということで自火報を自主設置してしまったということでした。
設置後、6ヶ月毎の消防設備点検で報告書の内容が更新になり自動火災報知設備の項目が乗っかりました。担当の消防官が今までのデータと違うことに気がつき連絡がきたそうです・・・その後どうなったのかまでは聞いていません。
罰則規定についても法令条文でシッカリと記載されています。
第四十四条
次のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金又は拘留に処する。
消防法第44条の1
一 第三条第一項の規定による命令に従わなかつた者
消防署は管轄内の物件データを保有しています。データは『面積』『テナント情報』『消防設備情報』『防火管理者情報』『消防訓練情報』『各種点検情報』などです。届出をせず新規に設置や移設がなされてしまうと、データ情報を更新できず適正な火災予防ができなくなってしまいます。なので、実際に設置されている消防設備は消防署のデータとリンクされている必要があります。
よくある消防設備の自主設置
飲食店の火気設備 | フード・ダクト消火 |
鉄道高架下のテナント | フード・ダクト消火 |
各種物件でオーナーの意向 | 自動火災報知設備 |
同上 | 避難器具 |
消防設備の自主設置でよくあるケースで、飲食店舗の厨房にフード消火設備を設置することがあります。厨房設備は『コンロ』『フライヤー』など多量の火気を使用します。本来は消火器のみでOKということもありますが、コンプライアンスを重視した企業はプラスアルファで自ら火災予防のため自主設置をしています。鉄道高架下の店舗などは延焼防止のため導入されていることが多いです。
自動火災報知設備が自主設置されるケースで多いのが、下階が店舗などで使用し、上層階に住居があるといった物件です。このような物件は延べ面積『300㎡』から設置義務が生じます(※火災予防条例により300㎡未満でも設置義務になる物件がある)。
300㎡に満たす設置義務は無いけれど人が居住し何かあっては心配である、という人格者のオーナーさんが自主的に設置しています。
まとめ
- 消防設備は義務設置と自主設置がある
- 自主設置でも着工届が必要である
- 着工届を提出しなかった場合罰則がある