厨房設備のフードやダクトを自動的に消火するための設備がある。フード内消火とかダクト消火とか言われていますが着工届や設置届には『フード等用自動消火装置』と記載しています。
この装置の設置には『消防設備士甲種3類』の資格が必要になります。
参考記事:消防設備士を取ろう
消防設備士の中で甲3類は12個ある設備士資格の中で6番目に受験者が多い資格になりますので設備の設置自体は全体からすると少ない方に入るかと思います。
このフード・ダクト消火装置は比較的大きな建物に設置されていますが、飲食店チェーン店さんや、電車の高架下店舗などは自主設置しているところがワタクの知る限り大変多いです。
フード等用自動消火装置が設置される場合
ざっくりと設置基準を書くと
- 厨房設備で床面積200㎡
- 最大消費熱量350kw(30万kcal)をこえる
上記の場合は『フード等用自動消火装置』と『SPスプリンクラー』を併設することにより消火装置を免除できる
上記の条件にあった場合は二酸化炭素消火設備orハロゲン化物消火設備or粉末消火設備を設置しなければいけないことになっております。しかしこれらの消火設備の設置は大掛かりにな工事になり大変お金がかかってしまうことから消防庁さんが、+スプリンクラーを併設すれば特例を適用し簡易的な消火設備【フード・ダクト消火】でOKですということにしてくれています。
厨房設備で200㎡で最大熱量350kwの厨房となると大きいビルやホテルなのでしょうから普通にSP【スプリンクラー】の設置はあると思いますのでダクト消火を設置すればOKということになります。
フード・ダクト消火設備の構成
装置の構成は受熱部・放出部・制御部に分けられます。ダクト内に設置されている感熱センサから制御盤に信号が送られると自動的に消火薬剤から放出部のノズルへ圧力がかかりキャップを吹き飛ばし消火活動を開始します。画像は厨房のグリスフィルター内部に設置されているノズルです。ノズルは厨房用フード内各所に設置します。
フード消火が設置されていな場合は温度ヒューズ溶解によりダンバーが作動します。ダンパーはストッパーになっている温度ヒューズが溶けるとスプリングにより自動的にガラリを閉鎖させます。しかし消火装置が設置されている場合は自動的にガラリが閉じてしまったらダクト内部の温度センサーが熱を感知できなくなり自動消火ができません。そのために温度ヒューズではなく溶けないストッパーを設置してガラリが閉じないようにすることが必要になります。
消火ノズルはフードの四つ角、中間、グリスフィルター内部に設置されますが、5m以上ダクト内部にも設置されます。フード周辺だけでなくダクト内部にも油がたまってしまうので火が中に入ってしまった場合ダクト内の油に燃え移り建物に燃え広がってしまします。
火災予防のために定期的な清掃が必要になりますが、もしも火が入ってしまった場合この消火設備が燃え広がりを防いでくれます。
その他制御系
消火装置が作動すると当時に制御盤から『ガス停止』と『ファン停止』『火災受信機への表示』信号を送られます。
厨房内に供給するガスを停止させるためにガス遮断弁を強制的に停止させます。供給するガスを止めることにより燃え広がりを防ぎます。また同時に厨房から排出されるファンを強制的に停止することにより火を厨房外部に送り込まないよにします。これらの信号を制御盤によりコントロールしています。
同時に消火装置が作動したことを火災受信で監視できるようにする措置も必要になります。この信号も制御盤から送られます。
※消防署との協議により法令設置以外の自主設置では受信盤と接続しないてもよい場合もある。
手動による放出も可能
自動消火装置という名目ではありますが手動でも放出することが可能です。ボタン一つで消火が可能ですので、消火器を探したり火元に近づくこともなく安全な消火活動が可能です。実際火災が起こってしまったらパニックになることも想定できるのでボタンを押すことだけを覚えておけば大丈夫です。またボタンを押し忘れてしまってもセンサーが熱を感知すれば自動的に消火されるのでこの消火設備は優れているのであります。
必要な届出と消防立ち会い検査
この設備の設置には『着工届』と『設置届』が必要になります。施工10日前までに着工届を、施工後4日以内に設置届を提出します。
着工届
- 防火対象物概要表
- 簡易消火装置の概要表
- 案内図【google、ヤフー、ゼンリン社などの地図】
- 各種図面【平面、天伏、厨房図、消火装置設置図、各承認図】
- 仕様書など
設置届
- 試験結果
- 着工届で変更になったり追加になった資料
これらの資料をもとに後日消防署による立会検査を実施することになります。実際に試験用薬剤を放出するか、AIRで試験するかはまちまちですが、作動試験を実施して『放出』『ガス遮断』『ファン停止』『受信機表示』を確認します。
検査後ご異常がない場合は検査済証が発行されすべての工程が完了となります。
まとめ
- 設置基準により施工する
- 感熱部・放出部・制御部に分けられる
- ガス遮断・ファン停止・火災受信機への信号が必要
- 手動による消火も可能
- 消防署への届出・検査が必要