私たちは消防設備業者なので消防関係法令集を用いて調べごとをします。最近ではインターネットでe-GOV法令検索を使えば簡単に調べることができます。
消防関係法令は消防法、消防法施行令、消防法施行規則、各自治体による条例、自治体の長が発する規則などがあります。
これら決まり事をグループで分けたものですが法令の体系を知ることで理解できることでしょう。また、なぜこのように決まり事が分けられているのかについても理由があります。
今回の法令の体系について消防法を軸に書いていきたいと思います。
消防関係法令の種類
法令 | 法令の内容 | |
国 | 消防法 | 国会により制定される |
消防法施行令【政令】 | 内閣が定める命令 | |
消防法施行規則【省令】 | 総務大臣が定める命令 | |
自治体 | 条例 (法律の範囲を超えられない) |
自治体の議会が定める |
自治体の長の定める規則 | 知事、市町村の長が定める |
一般的に消防法(法律)は、国会で制定される決まりごとを指します。
つまり消防法は消防法のみを指し、消防法施行令、消防法施行規則、自治体の長の規則は「命令」と呼ばれています。
条例は自治体の議会で制定するため広義の意味での法律となります。消防でいえば火災予防条例が該当します。条例は地域の特徴、風土に合わせ自治体独自のルールを制定することができます。
「法律(消防法)」と「命令」をあわせた総称を「法令(消防法令)」と呼びます。命令は法律の範囲内で定めることができます。法律の範囲を超えてしまうとその決まりは無効となります。
話がそれます「建築基準法」の場合は「建築基準施行令」「建築基準施行規則」といった体系になります。
消防法の細目については政令省令に委任
法令のイメージ | |
消防法 | 法律 【大枠】 |
消防法施行令 | 政令 【細部】 |
消防法施行規則 | 省令 【より細部】 |
消防法は国会で制定されたルールです。法令集を見るとわかりますが、消防法にはざっくりとした大枠についての決まりごとが書かれており、細目については施行令【政令】で定めます。
さらに施行令よりも一段下の施行規則【省令】は、法律よりも具体的な内容が載っていますが、その細目については施行規則【省令】で定める的な記載があります。
法律→政令→省令と下位ルールになればなるほど細目についてより詳細に記載されることになります。なぜこのようなことになっているかというと、法律を変えるためには国会の議決が必要になるからです。
政令や省令は法律に比べ改正することが容易であるため、後からでも簡単に変えられるように細かな基準は政令や省令に委任されているのです。
例えば消防法施行令21条2項3号では、「感知器は総務省令で定めるところにより」という文言があります。この場合は、総務省令(消防法施行規則)で具体的な感知器を設置する基準を定めます。
あとから感知器を設置する基準を変えたくなった場合は、内閣が施行令を改正する必要はなく、総務大臣が施行規則を変えればよいので法律、政令を変えるよりは容易です。
消防法施行令21条2項3号
自動火災報知設備の感知器は、総務省令で定めるところにより、天井又は壁の屋内に面する部分及び天井裏の部分(天井のない場合にあつては、屋根又は壁の屋内に面する部分)に、有効に火災の発生を感知することができるように設けること。ただし、主要構造部を耐火構造とした建築物にあつては、天井裏の部分に設けないことができる。
条例、各自治体の長が定める規則
各自治体には議会を設置する必要があります。地方公共団体は法律の範囲内でその自治体の風土に合わせた独自のルールを制定することができます。この議会で定めたルールが条例です。議会があれば条例を制定することができるので、市町村議会によっても条例を定めることができます。
話がそれますが東京23区(特別区)は市と同等の扱いとなるため同区による条例制定も可能です。また、自治体の長(知事、市町村長)は規則を制定することができます。
条例による独自の消防設備設置基準
消防設備の設置をする際に自治体によっては火災予防条例により独自の設置基準を設けている場合があります。東京では東京都が、それ以外の地域の場合には札幌市、青森市、仙台市、横浜市などの「市」が条例を設けていることがあります。
消防法施行令による設置基準で施工したが、条例により別の基準があってやり直しということも十分にありえます。通常消防設備の工事は工事前に着工届を管轄の消防署に届出する必要があります。その届出をもとに消防署が審査をしますが、着工届が省略できる軽微な工事をするときには注意が必要になります。
また、消防設備点検で条例による設置義務があった場合に見落としてしまうことも想定できます。作業前に予めチェックしておく必要があります。
条例に付加された設置基準の例
自動火災報知設備を例にして消防法施行令の設置基準と東京都火災予防条例により付加された基準を見ていきます。
まず消防法施行令21条に自動火災報知設備を設置しなければならない建物についての決まりがあります。例えば共同住宅は通常延べ面積が500㎡以上の建物に設置しなければなりません。条例による基準がなければ施行令通り設置すれば問題ありません。
しかし東京都では火災予防条例で、耐火構造、イ準耐火構造以外の建物は延べ面積が200㎡以上ある場合自動火災報知設備を設置しなければなりません。これが条例による付加設置です。付加設置基準は各自治体により規定があるなし様々です。消防に関する業務を行う上で条例についてチェックすることは非常に重要であると言えます。
共同住宅の自動火災報知設備の設置基準 | ||
消防法施行令21条 【内閣が定めた命令】 |
東京都火災予防条例41条 【東京都議会の議決にて制定】 |
|
通常階 | 延面積 500㎡以上 |
耐火、イ準耐火構造以外で 延べ面積 200㎡以上 一般的な木造住宅などが該当 ※準耐火・耐火構造の木造があるのでそれ以外の木造 |
地階 無窓 3階以上 |
床面積 300㎡以上 |
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11階以上の階 | 全て |
第四十一条
東京都火災予防条例
次に掲げる防火対象物には、自動火災報知設備を設けなければならない。
一 令別表第一(五)項ロに掲げる防火対象物(主要構造部を耐火構造としたもの又は建築基準法第二条第九号の三イ若しくはロのいずれかに該当するものを除く。)で延べ面積が二百平方メートル以上のもの
消防法の罰則については
消防法には罰則が設けられています。罰則の内容は、懲役、罰金、勾留、過料になります。※過料は行政上の義務違反に対する制裁のため刑罰にが該当しません。別記事に書いていますのでこちらをご参照いただければと思います。
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