防火管理者と統括防火管理者の違いについて【統括防火管理者は誰がなるのか?】

防火管理者と統括防火管理者の違いについて【統括防火管理者は誰がなるのか?】

建物の防火管理をするためには「防火管理者」の資格を取得する必要があります。さらに防火管理者には「統括防火管理者」という制度があります。

この制度は複数の権限に分かれている防火対象物に対して、統括防火管理者を選任して各防火管理者と協議して防火対象物を維持管理していこうというものです。

建物の使い方は多様で、ビル一棟を同じオーナーが使用している場合や、複数のテナントを入居させている場合があります。

ビル一棟をまるごと1人の防火管理者によって管理することを「単一管理権限」といい、ビルオーナーの権限で防火管理者を選任することでそのビルまるごと防火管理をすることができます。※地域によっては認められていないケースもある。

一方で複合用途のテナントビルは、各テナント専有部に対して1名の防火管理者を選任した上で、防火対象物全体の防火管理を統括する目的で統括防火管理者を1名選任することになります。

防火管理者と統括防火管理者の違いは部分的 or 全体的にの違いです。
※統括防火管理者は「防火管理者の資格」があれば選任することができます。

【原則論】ビルパターンによる防火管理形態の違い

動力消防ポンプ
動力消防ポンプ

冒頭で記述しました通り防火管理の方法はいくつかあります。さらに深掘りしていきますと3パターンの管理方法があります。

1つ目はビル一棟を1つの管理権原者が使用している場合です。この場合はまるごとオーナーさんが使用しているようなものなので、オーナーさんなどの管理権原者が防火管理者を選任(自分が防火管理者となる)し建屋すべての防火管理をおこなう方法です。

2つ目は複数の管理権限があるテナントビルで、統括防火管理者をたてずに1つ目と同じように他のテナントの防火管理も単一権限で防火管理者が一括しておこなう方法です。この方法は一般的ではなく、別権限のテナントの管理をビル側で行うことになり責任の所在がはっきりできなくなりおそれがあります。

3つ目は複数の管理権限のあるテナントビルで、各々のテナントが自分の持ち場である専有部を防火管理し、各防火管理者の中から統括防火管理者を選任し、統括防火管理者と各防火管理者が連携し防火管理を行う方法です。実際の複合用途の運用はこの方法がほとんどです。責任の所在も明確になります。

  権限者がビルまるごと同じ権限で防火管理を行う テナントの入居があるがビル側の権限者が防火管理を行う テナント入居があるがテナント各々で防火管理を行う

統括防火管理者

※統括防火管理者が必要な防火対象物

不要 不要 必要
※防火管理者の中から選任する
ビル側防火管理者 必要 必要
テナント防火管理者 不要 必要

統括防火管理者が必要な防火対象物

統括防火管理者が必要な防火対象物を簡単に下の表にまとめます。

下の防火対象物で管理について権限が分かれているもの
高層建築物 【高さが31mを超えるもの】
地下街 【消防長又は消防署長が指定するもの】
準地下街 【特定用途が入居するもの】
避難困難者施設【6項ロ】 地階を除く階数が3以上かつ収容人員10人以上
特定防火対象物 地階を除く階数が3以上かつ収容人員30人以上
非特定用途防火対象物 地階を除く階数が5以上で収容人員50人以上

統括防火管理者は誰が選任するのか?

高天井

統括防火管理者は各防火管理者の中から協議により選任するということを記載しました。運用上、便宜上ではビルオーナー側で選任することが望ましいとされています。

理由としては、防火管理者の仕事のうち建物の消防設備の点検や整備を行わせるのはテナント側ではなくビルオーナー側であることが一般的だからです。しかし、消防法8条の2の条文を見てみると「全体について防火管理上必要な業務を統括する防火管理者を協議して定め」という文言があります。

なので法令上では統括防火管理者はビル側で選任しなければならないということではなく、各テナントから選任された防火管理者で協議して統括防火管理者を定めるという事になっています。

第八条の二 
高層建築物(高さ三十一メートルを超える建築物をいう。第八条の三第一項において同じ。)その他政令で定める防火対象物で、その管理について権原が分かれているもの又は地下街(地下の工作物内に設けられた店舗、事務所その他これらに類する施設で、連続して地下道に面して設けられたものと当該地下道とを合わせたものをいう。以下同じ。)でその管理について権原が分かれているもののうち消防長若しくは消防署長が指定するものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちからこれらの防火対象物の全体について防火管理上必要な業務を統括する防火管理者(以下この条において「統括防火管理者」という。)を協議して定め、政令で定めるところにより、当該防火対象物の全体についての消防計画の作成、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施、当該防火対象物の廊下、階段、避難口その他の避難上必要な施設の管理その他当該防火対象物の全体についての防火管理上必要な業務を行わせなければならない。

一旦話がそれますが、複合ビルのテナント側に消防査察が入った場合での指摘事項に「統括防火管理者を選任すること」という一筆が加えられることがあるます。

統括防火管理者はオーナー側では?という疑問があると思いますが、これは消防条8条の2の条文を解釈すると、統括防火管理者は「協議により定め」であるためテナント防火管理者に対して他の防火管理者と協議して統括防火管理者をたててくださいという指摘です。

※ワタクシはビルオーナーサイド以外で選任された統括防火管理者を見たことがありません。

まとめ

  • ビルの形態により防火管理方法が変わる
  • 防火管理方法は主に3パターにわかれる
  • 統括防火管理者はビル側の管理者でなくてもよい
  • テナントの指摘事項に統括防火管理者の項目が載ることがある

消防法条文はこちら

書類作成や手続きのご依頼が可能です

消防特化型行政書士事務所

タイムラン防災では行政書士事務所を併設しているため、お客様に代わり各種手続きや書類作成業務をお請けすることが可能です。お困りごとがございましたらお問い合わせください。【タイムラン行政書士事務所】

Blogカテゴリの最新記事