火災感知器が作動したとき、「ベル」又は「非常放送」が鳴動します。2つの鳴動方式の違いは、「自動火災報知設備の火災受信機」で鳴らすか、「非常放送設備アンプ」で鳴らすかです。
非常放送は、比較的大規模物件に設置されています。例えば、建物の収容人員が一定数を超える場合は非常放送設備が設置義務になるため、放送設備の音声警報で火災を周知させることが一般的です。
非常放送が装備されている物件でもときたまベル鳴動を採用している現場もあります。放送設備は電子音声により「何階で火災が発生しました」などの細かい情報により案内ができるためベル鳴動よりも優れていると言えます。
ベル鳴動から放送鳴動へ切り替える
今回携わった物件は、非常放送が設置義務でしたが、放送による鳴動方式ではなく自動火災報知設備の火災受信機によるベル鳴動であったため、これを期に放送鳴動に切り替える作業を実施します。
ベル鳴動の場合は原則的に水平距離25mに1個ベル「地区音響装置」を設置することが義務付けられています。放送設備の場合は原則各居室に水平距離10mに1個スピーカーを設けます。※居室用途により免除できる場合がある。
放送設備で鳴動させる場合は非常放送設備の設置基準に基づいてスピーカーが設置されていることが条件となるため、旧基準で設置されている場合では地区音響装置として認められません。
放送による鳴動では詳細情報を周知できる
非常放送での火災放送は、プログラムにより「何階の火災感知器が作動しました。次の放送をお待ちください」といった案内を自動放送してくれます。
この鳴動方式は、火災感知器の発報信号を火災受信機経由で非常放送アンプに送り、どこで火災が発生したかエリアを特定した放送案内を行います。
大きな建物では、ベルや放送をビル全体に一斉鳴動させると、かえってパニックになることがあり、それを避けるために火災が発生した一部のエリアのみ鳴動する「区分鳴動」を採用することがあります。
区分鳴動は地上5階建て以上で、延べ面積が3,000㎡を超える場合に採用されます。
アンプ容量とスピーカーの数
非常放送アンプは設置するスピーカーの個数により容量が変わってきます。アンプはメーカーにより多少差異がありますが、60w、120w、240w、360wといった段階で生産されています。
万が一の増設分を見越して多少余裕を持ったものを選択する必要があります。スピーカー側にも1W、3Wの選択が可能です。
設置したスピーカーの中心から1m離れた場所で92デシベル以上の音圧(L級スピーカ)が必要になりますので上記の条件を満たした上で設計、設置する必要があります。
スピーカーを設置したらベルを撤去
スピーカーを設置したら既存のベルを撤去していきます。撤去しないと放送とベルが同時に作動することになります。放送中にベルが鳴動していると放送内容が聞こえず安全に避難することができません。
また、非常放送を設置する場合はBGMなどの音響を強制的に停止させる措置をとる必要があります。この場合にはカットリレーを用います。カットリレーはテナント内で有線や任意の音楽を流して営業しているとき、放送設備が作動した際、音響を遮断させます。
工事が完了後したら消防署へ設置の届出
工事が完了したら設置後4日以内に消防設備設置届を提出します。設置届は各種試験データ、図面などを添付します。届出資料をもとに後日管轄の消防署による立会検査が実施されます。また、非常放送設備の工事は消防設備士甲種4類の資格が必要です。