屋内消火栓の代替設備としてパッケージ型消火設備を使用することがあります。パッケージ型を設置することができれば、本来屋内消火栓に必要な水源、ポンプユニット、配管類、消火栓BOX、ホース、ノズルなどの必要な部品が1つのBOXに組み込まれているため、大幅に費用を抑えることができます。
ただ、この消火設備はどこでも設置できるというものではなく、設置及び維持に関する技術上の要件に適合してなければ使用できません。また、パッケージ型消火設備はⅠ型とⅡ型があります。今回は簡単にこれらの基準などについて書いていきます。
パッケージ型消火設備【屋内消火栓を代替】
パッケージ型消火設備を設置するにはいくつかの要件があります。その要件をざっくり書きますと、
- 設置できる用途どできない用途がある
- 耐火建築物 地階を除く階が6以下で延面積3,000㎡以下
- 耐火建築物以外 地階を除く階が3以下で延面積2,000㎡以下
- 火災のとき煙が著しく充満するおそれのある場所では使用不可
- 無窓階では使用不可
- 地下では使用不可
といった具合です。設置できる用途、できない用途があります。できない用途の方が少ないため書いていきますと、
駐車場 |
13項イ |
航空機などの格納庫 |
13項ロ |
倉庫 | 14項 |
地下街・準地下街 | 16項 2.3 |
文化財 | 17項 |
アーケード |
18項 |
となります。パッケージ型の場合は屋内消火栓設備と違い、水源を持たず、長時間の消火活動ができません。そのため、火災の場合に大きな被害が想定される場所へは設置できないことになっています。
その他Ⅰ型とⅡ型があります。Ⅰ型はハイスペックで、Ⅱ型は少しだけスペックを少し落としたものとなっています。
Ⅰ型 | ハイスペック |
Ⅱ型 | Ⅰ型をダウングレード |
耐火構造と耐火構造以外
パッケージ型は、建物の構造が耐火構造か、耐火構造以外かで設置基準が異なります。まず、耐火構造に設置する場合は、地階を除く階が6以下で延面積3,000㎡以下となります。
耐火構造以外に設置する場合は、地階を除く階が3以下で延面積2,000㎡以下となります。耐火構造以外(鉄骨造で耐火処理がされていない等、木造)では耐火構造よりも使用できる範囲が狭められています。
耐火構造 | 地階を除く階が6以下で延面積3,000㎡以下 |
耐火構造以外 | 地階を除く階が3以下で延面積2,000㎡以下 |
また、耐火構造でも耐火構造以外でも、Ⅰ型を使用しますが、条件によりⅡ型を使用可能です。その条件は、
Ⅰ型 | Ⅱ型 | |
耐火構造 |
地階を除く階が6以下 |
地階を除く階が4以下 延面積1,500㎡以下 |
耐火構造以外 | 地階を除く階が3以下 延面積2,000㎡以下 |
地階を除く階が2以下 |
パッケージ型が使用できる用途と条件【まとめ】
パッケージ型消火設備(屋内消火栓を代替)は、屋内消火栓の設置基準に準じております。屋内消火栓の場合は、建物の延面積用途により設置基準が異なります。設置基準は建物の面積で確定しますた
用途と設置可能な条件
防火対象物【令別表第一】 特定用途は赤で記載 |
耐火構造 | 耐火構造以外 | |
劇場等 集会場等 |
1イ 1ロ |
地階を除く階6以下 延面積3,000㎡以下 |
地階を除く階3以下 |
キャバレー 遊技場 性風俗特殊営業 カラオケ・個室ビデオ |
2イ 2ロ 2ハ 2ニ |
同上 | 同上 |
料理店 飲食店 |
3イ 3ロ |
同上 | 同上 |
物品販売・百貨店 | 4 | 同上 | 同上 |
旅館・ホテル 共同住宅など |
5イ 5ロ |
同上 | 同上 |
・避難介助が必要な病院 ・無床診療所/無床安産所 |
6イ1
|
同上 |
同上 |
老人短期入所施設 |
6ロ 6ハ 6ニ |
同上 |
同上 |
学校など | 7 | 同上 | 同上 |
図書館 | 8 | 同上 | 同上 |
蒸気浴場 一般浴場 |
9イ 9ロ |
同上 | 同上 |
車両停車場 | 10 | 同上 | 同上 |
神社など | 11 | 同上 | 同上 |
工場 スタジオなど |
12イ 12ロ |
同上 | 同上 |
車庫など 航空機などの格納庫 |
13イ 13ロ |
設置不可 | 設置不可 |
倉庫 | 14 | 設置不可 | 設置不可 |
前項以外【事務所・美容室等】 | 15 | 同上 | 同上 |
複合用途【特定用途入居】 複合用途【特定用途なし】 |
16イ 16ロ |
同上 | 同上 |
地下街 準地下街 |
16・2 16・3 |
設置不可 | 設置不可 |
文化財 | 17 | 設置不可 | 設置不可 |
防火対象物の状況により判断し、階高、面積基準に適合する場合はⅡ型を選択することができます。
火災時に煙が充満する場所は設置不可
火災時に著しく煙が充満する場所にパッケージ型消火設備を使用することはできません。煙が充満する場所とは、外気に開放できるような開口部がないような場所です。パッケージ型消火設備は消火薬材量が限られ、消火活動がうまくいかなかった場合に避難することが求められます。
無窓階や地下、その他『火災時に著しく煙が充満する場所』以外の場所に設置することが求められます。
参考記事:消防法上の無窓階定義
後付けで倉庫に設置する場合
仮の話ですが、竣工当時は屋内消火栓が必要なく、問題なく検査をクリアした物件があるとします。長年使用していて『窓を潰してしまった』『なぜだか中2階ができていて床面積が増えている』ということがあった場合、屋内消火栓の設置が義務になり設置しなければなりません。
そこでパッケージ型消火設備を設置するということで計画を立てていましたが、調べると倉庫には設置できないということがわかりました。そのような場合、パッケージ型消火設備を設置する代わりに『動力消防ポンプ』を設置することができます。
屋内消火栓を後付けするとポンプ、配管、水源などを新たに設置する必要があり、大がかりな工事になります。代わりに動力消防ポンプを選択すると比較的、費用も施工面でも有利にできることでしょう。
参考記事:動力消防ポンプを設置してみた
参考:消防法