
自動火災報知設備の発信機(押しボタン)を押したらどうなるか??については『きっとベルがなって大騒ぎになる』くらいは皆さんご存知かとおもいます。ボタンを押した経験があるという方もない方も、今回は実際にどのような形で自動火災報知設備・非常放送設備が作動するかをご紹介したいと思います。
まず、ボタンを押したら『ベル』または『サイレン』がなります。ベルかサイレンかにつきましては、建物の仕様によって異なります。小規模の物件はベル・大規模はサイレンがなるでしょう。なぜ大規模物件はサイレンかというと、規模が大きくなると非常放送設備の設置が義務になり、ベルの代わりに放送設備によって緊急放送をするためです。
参考記事・非常放送を設置する建物:非常警報設備の設置基準
参考記事・発信機について:自火報・発信機の復旧方法とあれこれ
ボタンを押してから復旧まで

発信機を押すと『発信機が押されています』が点灯
発信機を押したらベルや放送が鳴ります。ベルの場合と放送の場合では少しフローが異なります。簡単にご紹介します。
1、ベルの場合
- 発信機ボタンを押す
- 火災受信機が信号を受信
- 各所に設置されているベルが鳴る
- 押されたボタンを元に戻す
- 火災受信機で復旧操作
2、放送の場合
- 発信機のボタンを押す
- 火災受信機が信号をキャッチ
- 火災受信機から非常放送へ連動信号を送る
- 非常放送が自動放送を開始
- 押されたボタンを元に戻す
- 火災受信機で復旧操作
- 非常放送アンプで復旧操作
という流れになります。非常放送を使用した場合は、火災受信機と非常放送アンプのどちらも復旧操作が必要です。順番的には、はじめに火災受信機、2番目に非常放送を復旧する必要があります。
火災受信機を復旧しなければ非常放送のアンプに火災信号が入りっぱなしになるためです。
1 ベル鳴動の場合・自動火災報知設備で完結
非常放送設備を装備していない建物は非常ベル『地区音響ベル』が鳴動します。赤いゴングで法令では『90デシベル』以上の音圧が必要とされています。非常ベルは一斉鳴動方式と直上階鳴動方式があり、ビル全体で一斉に鳴り響く方式と、火災階+直上階で鳴り響く方式があります。
非常ベルの音圧については消防法施行規則25条の2、1号イに記載されています。
ベルを鳴動させるためには火災受信機からベルに『DC24V』を送る必要があります。発信機や火災報知器が作動すると火災受信機のプログラムによりベル回路に電気を流し込みます。ベル回路は通常時は『0V』で非常時に『DC24V』が流れる設計になっています。

発信機に中にある復旧ボタン
異常がなく復旧したい場合は、まず発信機を復旧してから火災受信機で復旧操作を行います。発信機の復旧は、発信機の蓋をあけレバーを操作することで押されているボタンを元の状態に戻します。戻りきった後に火災受信機で復旧操作をすれば元あった状態に復旧します。

火災受信機で復旧操作を行う
2 非常放送連動型の場合

非常放送設備が起動したら『火災』点灯
非常放送連動型の場合は、押しボタンを押すことで火災受信機が作動します。火災周知音響をスピーカー(放送設備)を使用している場合では、ベルの設置がありません(まれにベルの設置がある)。
押しボタンが押されたら、火災受信機を経由して非常放送に連動火災信号が送られます。信号を受信した非常放送設備は自動的に各所に設置されているスピーカーへ『音声案内』や『サイレン音響』を送ります。非常スピーカーを使用する場合は法令で『92デシベル』の音圧が必要とされています。ベルは『90デシベル』でしたが非常放送になると2デシベル追加されます。
音圧については消防法施行規則25条の2、2項3号イに記載されています
非常放送連動を復旧させる方法
非常放送設備を復旧させるには
- 発信機の内部にある復旧レバーを操作
- 火災受信機を復旧
この2つの操作が完了していることが必要になります。前項のベル鳴動で記載しました操作を完了後非常放送で復旧操作をすることになります。火災受信機が復旧されていないままの状態では、非常放送アンプに火災信号が入りっばなしになってしまうためです。
一旦非常放送を止めたいという場合は、火災受信機の『非常放送連動停止』ボタンを押すことにより入力信号を一時的に強制停止することが可能になります。
発信機の押しボタンを作動させたらどうなるか!?【動画】
弊社で実際に実験機を使って動画を作ってみました。火災受信機が火災を受信してから非常ベルと放送設備の違いについて説明していますのでよろしければご参照ください。実際の映像でみると多少わかりやすいかと思います。
火災を発見したら押し釦を押してください
もしも火災を発見し、近くに発信機をみつけた場合には『発信機』押してください。押さなかった場合でも周囲に『火災感知器』が設置されているため、煙や熱を感知した火災報知器が自動的に作動することになります。しかし、発信機を押すことで一秒でも早く館内の皆さまに火災を知らせる必要があるため、躊躇せずドヤ顔でボタンを押していただくようお願い申し上げます。
あとがき
押しボタンは自動火災報知設備の手動起動装置です。通常自動火災報知設備は各所に設置されている感知器が自動的に働き火災を感知するものですが、火災発生から感知器作動まで多少時間がかかってしまいます。
もし火災を確認したらすぐ押しボタンを押すことで被害を最小に抑えることができます。
火災受信機が正常に作動すれば、周囲に火災を知らせることができるだけでなく、火災に対応した自動的な仕組みが取られてケースがあります。
例えば、「エレベーターが自動的に避難階に下りて使用できないようになる」「避難経路の電気錠が解除される」「警備会社に自動通報が行き2次的な対応がとられる」「音声警報付きの誘導灯が作動する」等があげられます。
また、宿泊を伴う福祉施設では消防署に自動的に通報が行う「火災通報装置」が設置されていることがあります。火災による被害者を最小にするために1分でも1秒でも早く火災を周囲に知らせ、また避難を円滑にするため、火災を発見したら押しボタンを押していただくようお願い申し上げます。