自動火災報知設備の発信機(手動起動ボタン)周りのことや、操作後の復旧操作について書いていきます。
発信機の役割
発信機(押しボタン)には2つの役割があります。1つ目は人間が火災報知を発信できる機械であること。2つ目は消火栓ポンプを遠隔起動するためのスイッチであることです。
消火栓が設置されていない防火対象物の場合は前者で、設置されている場合は2つの機能を使うことになります。発信機は手動の火災感知器でありポンプ起動のスイッチとして使用されています。
発信機と火災感知器の違い
発信機と火災感知器は同じ電線の同じ回路で接続されています。火災感知器が熱や煙を感知し自動的にスイッチが入る仕組みであります。発信機は人間が押すことによりスイッチが入ります。
火災感知器は誤作動を防止するために『蓄積機能』というものがあります。熱や煙を感知したら即時にベルを鳴らすのではなく何秒か蓄積した状態が続いた場合にベルやサイレンが鳴ります。対して発信機は人間が押すスイッチのため蓄積機能があってはすぐ火災を知らせることができません。そのために蓄積機能を解除させるための配線、接続が行われています。
発信機起動フローと復旧の方法
発信機を押したらすぐベル、サイレンが鳴り響きますが、特に問題はなく、元通りに戻すまでの手順を書いていきます。
- 発信機を押す
- 火災受信機で火災表示+発信機表示 (音響装置が鳴る)
- 発信機を元の状態に戻す
- 火災受信機で復旧ボタンを押す
火災受信機を復旧する前に必ず発信機を押されていない元通りの状態に戻す必要があります。押されっぱなしになると信号が入りっぱなしになるため受信機で復旧操作はできません。必ず発信機を復旧してから火災受信機で復旧操作を行います。
消火栓付きの場合【消火栓遠隔起動装置】
次は消火栓設備がある場合を見ていきます
- 発信機を押す
- 火災受信機で火災表示+発信機表示+ポンプ起動
- 発信機を元の状態に戻す
- 火災受信機で復旧ボタンを押す
- 消火栓制御盤でポンプ停止ボタンを押す
消火栓がある場合は発信機は火災発報と消火栓ポンプ遠隔起動スイッチの役割を果たします。消火栓を復旧させるためには発信機を元の状態に戻してから、火災受信機を復旧操作を行った後、消火栓ポンプ制御盤でのポンプ停止操作が可能になります。いきなりポンプを復旧しようとしても遠隔起動スイッチ(発信機)が押されていると信号が入りっぱなしになるため復旧できません。
発信機には電話機を差し込むことで通話ができる
『P型1級の発信機』の場合は電話機を差し込むことができ、発信機 ⇔ 火災受信機間で通話することができます。『P型2級』には電話機能はありません。この項目は消防設備士4類の試験に出てくる必須項目であります。
発信機のカバーを開け電話を差し込むと火災受信機には『電話表示』と音声警報で『電話です』または『プルルルル』といったブザーがなります。受信機側でも電話機を差し込むことで互いに通話することができます。火災受信機にあらかじめマイクが搭載されている製品もあり、電話を差し込まなくても通話できる受信機もあります。
発信機の設置基準について
発信機を設置する場合はいくつかのルールがあります。
- 各階の各場所からの歩行距離が『50m』以下になるように設置
- 廊下・階段・出入り口付近に設置
- 消火栓がある場合はその直近に設置
- 床面から押しボタンはの高さ『0.8~1.5m』に設置
- 発信機の近くには表示灯を設置
- 表示灯は赤色の灯火で15°の角度から10m離れた場所で確認できること
といろいろ細かいルールがあります。この決まり通りに設置していくわけであります。
非火災時よくあること
まれに火災感知器が誤作動を起こすとがあります。火災感知器が作動するとベルやサイレンが鳴り響きます。その時にベルの音を止めようと発信機のボタンを押す【実際は止まりません】ということがおこります(意外と多いです)。
このような場合火災受信機で復旧しようとしても押しボタンが押されているため復旧はしません。押されている発信機を元通りの状態に戻した後、火災受信機で復旧操作を行います。
まとめ
- 発信機を押せば即時にベル・サイレンが鳴る
- 消火栓がある場合は遠隔起動スイッチになっている
- 復旧操作は発信機を元の状態に戻してから行う
- P型1級の発信機は電話を差し込める
- 設置には様々な基準がある
- 復旧しない場合は発信機を元通りに戻してから行う