連結送水管は消防隊が一早く消火活動を行えるよう、あらかじめ建物に設置されている消火用配管のことであります。消防ポンプ車とホースを送水管につなぎ配管を伝って各階の放水バルブまで加圧水を送り込みます。もともと配管設備があるので消防隊が内外ホースをつないでいく手間が省けます。また連結送水管には乾式(かんしき)湿式(しっしき)があります。
高層建築物や延べ面積が広い物件は設備の中間にブースターポンプや中間水槽を設置していることがあります。配管が長くなればなるほど圧力損失がおこるため、中間に補助ポンプを設置し再加圧します。
この配管は一定の基準以上の建物には設置義務化されています。
設置基準
連結送水管が必要な防火対象物
- 地下を除いた階高が7以上
- 地下を除く階高が5以上で延べ面積 6,000㎡以上
- 地下街で延べ面積 1,000㎡以上
- 延長 50mのアーケード
上記の防火対象物には連結送水管を設置しなければなりません。ワタクシどもで管理させていただいている物件などでもあるのですが、『5階建てで6,000㎡ないのに設置されている』物件もあったりします。このような場合は消防署の指導や各市区町村の条例で決められている場合があるようです。
また放水に使用する放水口(放水バルブ)は3階以上の階に設置することになっています。
連結送水管の設置基準
- 放水口は『3階以上の階』『地階』に設置
- 階の各部分から放水口までの水平距離は『50m』以下
- 上記でアーケードの場合は『25m』以下
- 放水口は消防隊が有効に消火活動を行える場所に設置
- 主管の径は『100A』以上
- 送水口は『双口型』であること
- 11階以上の部分に設ける放水口は『双口型』とし、放水用具を格納した箱を設置する
- 送水口及び放水口には見やすい箇所に標識を設置
- 送水口のホース接続口は地盤面から『500mm以上1,000mm以下』に設置
- 放水口のホース接続口は床面から『500mm~1,000mm』以下に設置
- 配管は専用とする ※連送の性能に影響ない場合はこの限りでない
といった基準が設けられています。
消防署の指導などで放水口が2階に設置されている場合もありますが、3階以上か地階に設置することになっています。
送水口と放水口はホースを接続するため、床面からの高さ『50センチから1メートルまでの』制限があります。
配管は連結送水管のみの専用配管とする必要がありますが、性能に影響がない場合は専用としなくてもよいとされています。
兼用配管の例として、同じ消防設備で屋内消火栓と兼用で使用されている場合があります。連結送水管の送水口から途中で屋内消火栓用配管と接続されます。消火栓配管に接続する前に逆止弁が設置されます。消火栓配管から送水口方面への逆流を防止しています。
設備の構成
- 送水口
- 配管
- 放水口
- テスト弁
- 高架水槽(湿式のみ)
- 各種弁類(逆止弁、水抜き弁)
消防ポンプ車とホースを繋ぐための送水口。送水口から各階へ水を送るための配管。各階に送水するためのホースを接続する放水口。屋上には放水試験をするためのテスト弁があります。
乾式と湿式
連結送水管には乾式と湿式がある
簡単に言うと配管内部に水があるか無いかでして、乾式は消防ポンプ車が水を送り込むまでは配管内部が空になっています。対して湿式は常に水が張ってあります。湿式の場合はあらかじめ水が張ってあるので消防ポンプ車がやってきて送水口に水を送り込むと同時に放水が可能であるため素早い消火活動が可能になります。
湿式連結送水管には高架水槽が設置されています。水槽内には常時水が補給されるよう給水管が設置されています。高架水槽から連結送水管に水が落ちていき水を張ることができます。高架水槽は満水になるとボールタップが働き給水を自動停止します。
連結送水管の耐圧試験
耐圧検査はいつ実施するのか
初回の耐圧試験 | 建物竣工より10年が経過 |
2回目 | 初回の耐圧試験より3年 |
3回目以降 | 全開の耐圧試験より3年毎 |
連結送水管はビルの竣工から10年経過後に耐圧試験をしなければいけません。10年経過後は3年枚に実施していくことになります。耐圧試験では実際に配管に水圧をかけ漏れや破損がないか調べていきます。漏れがある場合は漏れ箇所を特定し改修します。
耐圧試験の方法
送水口に水を送っていきます。配管内部に水を充満させたら徐々に水圧で設計圧力まで加圧していきます。いきなり水圧をドーンとかけてしまうと配管が割れてしまう恐れがあるので、段階的に圧を加えていきます。
配管が老朽化している場合で水損事故が懸念されるような場合は事前にエアー加圧試験を行い、漏れがないようであれば水圧をかけるということも可能であります。
送水口から加圧ポンプを使用し規定圧力まで上げていきます。圧力は配管長さや摩擦損失によって変わってきます。連結送水管は地上から上の階に配管が立ち上がっていくようなケースがほとんどなので。【上階が入り口で下に伸びていくような建物もある】
送水口側で規定圧力まで上げていきます。同時に屋上のテスト弁等で圧力を測定します。圧力値は上に行けば行くほど低くなります。低層階は水の重さが加わるため圧力値が高くなります【水筒圧】。
圧力が安定したところでそのまま3分間経過を見ます。もしも配管のどこかで漏れていることがあれば、ジワジワ圧力が低下していきます。安定していれば漏れが無いということが分かります。
圧力漏れが考えられる場所と原因
配管は設置環境により経年劣化することがあります。特に地中埋設部分は湿気が高いため他の部分より腐食しやすく漏れる確率が高くなります。その他漏れ原因については表をご覧ください。
送水口周辺 |
パッキンの劣化・接続部の腐食 |
送水口周辺弁類 | 逆止弁・水抜弁の腐食・故障 |
配管周り | 配管の割れ・接続部分の腐食 |
屋上周り弁類 | 逆止弁の漏れ |
地中埋設部分 | 配管・弁類の腐食等 |
漏れていた場合は改修工事をすることになります。漏れ箇所によって改修の方法が異なります、簡単な改修であれば部品の交換で済みますが、地中埋設部分で漏れている場合は、埋設部分を再利用せず、新規に送水口を設け既存の漏れがない場所まで新規配管工事をし途中接続します。
耐圧試験前にチェックすること
- 各階・各ヶ所の放水口バルブが閉止していること
- 水抜き弁が閉止していること
- その他の機器に影響をがないようにチェックする
湿式の場合は予め水が貼ってあるので閉止状態になっているはずですが、乾式の場合は 配管内に水を送り込む前にバルブの閉止状態を確認します。放水口が開いている場合は水損事故を起こすことになりますので必ず確認します。
湿式の場合は予め水が貼ってあるので閉止状態になっているはずです。
まとめ
- 明確な設置基準がある
- 乾式と湿式がある
- 建物竣工から10年が経過したら耐圧試験
- 10年経過後は3年毎に耐圧試験
- 圧力漏れヶ所は速やかに改修する