共有不動産に自動火災報知を設置してみた!【消防設備設置と管理行為】

共有不動産に自動火災報知を設置してみた!【消防設備設置と管理行為】

施工中の物件

共有不動産に自動火災報知設備を設置してきました。共有不動産は所有権が単独となっていないもので、所有権者が2人以上いる場合をいいます。ビルの名称が〇〇共同ビルという名称になっている場合は共有不動産となっている確率が高いです。

我々は主にビルオーナーからの依頼を受けて建物に「自動火災報知設備」「非常放送設備」「誘導灯」「消火器」などの消防設備を設置しており、ビル所有者が何人もいる共有ビルの場合はなかなか受注に至らなかったり、受注までに時間がかかるケースがあります。

自火報設置の経緯と所有権について

今回ご依頼いただいた不動産は長屋のような物件で、3件がつながっているような不動産です。1つの建物を3名で共有しており、居室の一部の用途変更に伴い建物全体に自動火災報知設備が必要になりました。消防法令では用途変更があるとその建物の面積等に応じで設置義務が発生します。

所有権が単独の不動産ではオーナーに建物すべての使用、収益、処分が認められています。所有権は排他的な権利のため所有権者以外に対して絶対的な権利を行使することが認められています。一方、所有権が複数に及んでいる場合は自己の持分についてのみ行使することができます。

共有物の変更、管理、保存

共有物について権利を行使するためには原則、自己の持ち分を基準として権利を行使することになります。簡単に言うと多数決で決めるということです。自分の持分が多ければ多いほど意思決定に影響するということです。

共有物についての権利行使は「変更行為」「管理行為」「保存行為」の3つの行為により方法が異なります。

変更行為は建物や土地の全体を売却する場合などが該当します。この場合は全員の同意がなければ行えません。

管理行為は全体の賃貸や改修工事などが該当します。我々がよく請け負っている建物全体の自動火災報知設備設置工事はこれに該当します。

保存行為は保存登記、妨害排除、補修などが該当します。各共有者に対してメリットとなるため各々単独で行うことができます。

変更行為 管理行為 保存行為
利用行為 改良行為
共有者の全員の同意 持ち分の価格の過半数 各共有者単独で
例:共有物の売却 例:全体の賃貸、改修工事など 例:保存登記、妨害排除、補修

共有不動産に全体に自動火災報知設備の設置工事を設置する場合、条文に当てはめると「管理行為」となります。消防設備は消防法令による設置となるケースがほとんどですが、民法上の運用ではこのような場合でも持ち分の価格の過半数で決めるということになります。

(共有物の管理)
共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。

e-gov:民法第252条

民法上の費用分担について

費用の分担については民法253条に「各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。」という記述があります。原則このことからその持ち分に応じて費用を分担することになります。

共有不動産の場合、持ち分と実際の使用範囲が異なるケースがあります。このような理由により費用の分担などで話がまとまらずなかなか前に進まないことがあります。消防署から何度も行政指導を受けているにもかかわらず話を先延ばしにすると、違反物件による「公表」や「処分」を受ける場合があります。

実際に弊社が受けた相談で自火報が未設置のまま放置されてしまい、共有所有者の一人から相談を受けたことがあります。その対処法として「とりあえず自分の持分についてのみ消防設備を設置して可動させる」方法で対応いただきました。

自動火災報知設備は「受信機」「総合盤」を共用設備として設置します。その共用設備から各居室や階段、エレベーターシャフト内に火災感知器類を取り付けます。先に設置しても後に設置しても最終的には接続し1つの設備として機能させることが可能なのでこのような対応を取っていただきました。

民法253条2項を見てみると、管理行為で費用を払わなかった共有者は、他の共有者が相当のお金を支払えば共有持分を取得することができるという記載もあるので、管理行為についてはしっかり持ち分の価格に従って行う必要があるということになります。

(共有物に関する負担)
各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。

2 共有者が一年以内に前項の義務を履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができる。

e-gov:民法第253条 

 まとめ

  • 共有不動産に自動火災報知設備を設置した
  • 共有物には変更行為、管理行為、保存行為がある
  • 建物も全体の設置は管理行為に該当
  • 管理行為は持ち分の過半数で行う
  • 費用は持ち分に応じで分担する
  • 共有者に義務不履行がある場合他の共有者が持ち分を取得できる場合がある

共有不動産の管理が大変らしく売却を検討している共有者がいらっしゃいました。売却のほうが大変なのでは?と思いましたが、このようなケースに対応するサービスを見つけたのでリンクを張ってみます。

参考記事:消防法令違反物件と公表制度について解説

 

 

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