ここ数年、建物の全部または一部を福祉施設や民泊などの宿泊施設で使用するために、新規に自動火災報知設備を設置するというケースが増えてきております。
弊社のブログを見てくださった方や既存顧客のご紹介でこのような案件をいただくことが大変多くウェブサイトで掲載できるいくつかのケースについて紹介させていただいております。
今回のミッションは新築竣工検査直後の建物に「P型1級の自動火災報知設備」を設置することです。また、エレベーターシャフト内の感知器は「遠隔試験対応型」煙感知器を使用します。よろしければ最後まで御覧ください。
自動火災報知システムの種類
自動火災報知システムは大きく分けて「R型」「P型」に分けることができます。さらにP型は「P型1級」と「P型2級」に分けることができます。R型は火災感知器にアドレス情報を持てるシステムで大規模物件で使用されます。P型は小規模や中規模で使用される一番普及しているシステムです。
1級と2級の違いは、警戒できる回線の限界値で、2級は5回線以下までとなります。5回線で足りないような中規模物件はP型1級にアップグレードしてシステムを設置することになります。
警戒は原則1回線(1警戒)あたり「1フロア」と「1警戒あたり600㎡まで」という条件となっています。また階段やエレベーターなどの竪穴区画は1回線必要となります。フロアの数がいくつもあり、階段に加えてエレベーターが設置されている建物はP型2級では賄えないのでP型1級を使用することになります。
工事前の下準備
今回の物件は建物竣工検査直後から施工ができるという条件でしたので、入居者はおらず完全に弊社主導で行えるラッキー物件でした。入居者がいる場合はスケジュール調整に時間がかかったりするためです。
このような場合では初めにどの場所にどの器具を設置するかをあらかじめ決めておき天井にプロットしておくと効率がよいのですべての箇所をチェックして落とし込んでいきます。感知器が設置できる場所は法令により定められているため、あらかじめ感知器の場所を決めることができれば配線ルートが確立させやすくなります。
火災感知器は誤作動を防止するためにエアコンなどの空気の吹き出し口から1.5m以上離れている場所に設置する必要があります。また、煙感知器は壁や梁から60cm以上離隔しなければいけません。
居室によってはすべての条件を満たして設置させると設置することができない場合があります。エアコンから遠ざけると壁に近くなってしまいどちらも規定の数値以上の離隔を確保できない場合です。このような場合は状況にもよりますが居室の出入りする扉付近に設置することになります。
余談ですが、関東の某消防本部の予防課担当者より「設置できないなら壁を壊せ」と言われたことがあります。その物件の状況では壁を壊しても面積が増えるわけではないので結果は変わらないのですが結構強い口調でいわれたことがあります。結局署内で壊さなくてよいことになりました。
配線ルートの確保
弊社は埋め込み配線に命をかけているので壁の中や天井内部で確認できるところをすべてチェックします。事務所や店舗と違って点検口はほとんどありませんのでダウンライトやコンセント、その他いろいろな場所をかなりの時間をかけてルート探索を行います。
初めから保護モールで施工するというやり方もありますが、単なる作業となりがちなので隠蔽率100%を攻略するゲームのような感覚で望んでいます。ただ、すべて隠蔽ということは難しかったりもするので、色付きの保護モールなどを使用することで目立たなくさせたり、逆にアクセントとして強調させたりすることができるので時と場合により使い分けて作業させていただいております。
建物初見時は難しそうに感じていても実際に施工するとなんとかなってしまうことがあります。というかむしろ上手くいくことのほうが7割を超えているように思えます。壁と天井がすべて打ちっぱなしのような物件ではそもそも隠蔽が不可能なのでアクセントをつけて違和感なく設置できるよう望んでおります。
共用部には受信機と総合盤を設置
自動火災報知設備の配線は親機(火災受信機)から各階の総合盤(押しボタン、ベル、ランプが収容している盤)送られた後に各フロアの火災感知器に配線をしていきます。共用部には火災受信機と総合盤を世知します。総合盤は居室内部でも問題ないのですが、どうしてもランプが赤く光る関係で居室にいれると居住性が低下することに繋がります。そのため共用部に設置されることが多くなっています。
共用部の配線は縦方向に上げていく必要があるので基本的には電気配線用シャフト(EPS)を使用して上げていきます。建物によってはシャフトを設けていないものがあるので、駆体内部に打ち込んである配管や床を貫通させて縦方向に露出配線をするという方法があります。
今回はシャフトを使用して施工いたしました。シャフト内部は電気で使用する配線があるため、自動火災報知設備で使用する弱電線と一定の離隔を保って施工していく必要があります。そのような場合は「金属管」「PF管」などの配管材料を使用すれば安全に離隔させることができます。配管を使用しない「ケーブル露出工事」は認められている工法なので配管を使用しなくても問題はありません。
エレベーターシャフトに感知器を取り付ける
自動火災報知設備は階段やエレベーターシャフトなどの竪穴区画にも設置することが義務付けられています。エレベーターシャフトに火災感知器を設置する場合には点検用の小窓を設置することが一般的です。しかし、鉄筋コンクリート物件の駆体を壊し開口を設置するとなると結構なリスクが生じます。
そのような場合では遠隔試験が可能な中継機を使用した煙感知器を設置することで問題をクリアすることができます。エレベーターシャフト内部に立ち入ることは容易ではないため遠隔試験ができればどのようなタイミングでも感知器の状態を確認することができます。
ただ1点、注意が必要です。火災受信機すべてがこの遠隔試験に対応しているわけではありません。対応している受信機はメーカーによっても異なるのでしっかりと確認したうえで機器類の選定が重要になります。
配線が終わったら器具を設置する
感知器の取り付けは照明のラインに合わせて行えばスッキリします。また照明の器具の距離の中間に設置すればバランスもよく感知器の存在感を和らげることができます(先述しましたが感知器は設置方法が法令により決められているため法令優先となります)。
火災感知器だけでなく、誘導灯や非常照明配線も埋め込んでいきます。非常灯の場合は埋込み型と露出型がありますが、可能な限り埋込み型を使用しています。露出型は存在感が出るため居住性を考えると可能な限り埋め込んだほうがよいことは間違いありません。ということで完了です。
まとめ
今回の工事はほぼ全て隠蔽配線で行えたので仕上がりが非常に満足が行くものとなりました。既存の工事は配線でほとんど決まります。配線をどのようにするかは建物の調査に時間を掛ける必要があります。調査に時間を掛けた結果残念ながら隠蔽することができないということもあります。その用場合は工数が無駄になってしまいますが、弊社は今までその調査にかなりの時間を使ってきており建物のパターンを把握しています。もし隠蔽配線で施工したいという方がいらっしゃいましたらご連絡いただけますと幸いです。