ほぼ駆体の建物に自動火災報知設備を設置してきた【コンクリート打ちっぱなし物件】

ほぼ駆体の建物に自動火災報知設備を設置してきた【コンクリート打ちっぱなし物件】

壁・天井ボードがほぼない物件への自火報新規設置工事

有り難いことに2024年-2025年シーズンも快調に自動火災報知の既存新規取り付け工事を受注し続けております。今回の物件は「壁天井がほぼコンクリート打ちっぱなし」物件です。このような防火対象物への消防設備工事はスケルトン店舗の消防設備工事以外受注したことがなく、また新規に自火報を設置するのは正直初めての経験です。

建物はほぼ新築物件で延べ面積が500㎡弱の共同住宅です。今後おいおい宿泊施設で使用できるように今のうちに自動火災報知設備を設置ておきたいというオーナーの意図で受注に至りました。クライアントの希望は極力配線を目立たせないようにしてほしいということで、無線式の自動火災報知(ホーチキ社エアシリーズ)システムを提案したところ初期費用と、10年後にかかる想定コストを勘案し現行の有線式自火報で受注する運びとなりました。

打ちっぱなしコンクリートと配線保護材料

 

下地が軽鉄LGSで組んであり(木のときもある)、石膏ボード材料等で仕上げた自火報工事では、ほんの一部の箇所を除き隠蔽配線が可能です。隠蔽配線を行うためには事前調査に重点をおき、じっくりと時間をかけてから施工を始めます。意外と抜け道が見つかったり、意外なところから線を通したりすることが可能です。

しかし、今回のような八方が駆体で覆われているような防火対象物の配線は保護材料を使用するしかありません。保護材料の代表格は「金属管」「MKダクト」「エフモール」などです。この中で打ちっぱなしRCで違和感がないのは断然金属管です。RC駆体あえて金属管を使用する内装デザインも多く見られます。

ただ1点、金属管を使用する場合、金属管を曲げる(加工する)ための工数や継手、ボックス関係で樹脂よりも費用がかかってしまいます。一部天井がある場合では金属管を使用する部分が少なくて済むためそれほど影響はないのですが、オール駆体となれば納期にも影響がでます。

そこで今回はモールを使用することになりました。

配線保護樹脂モールを目出させなくする方法

配線保護モールは樹脂製のため独特な光沢があり、チョイスする色によっては内装の色に溶け込まないツヤ感を感じたりすることがあります。施設利用時に豪華な吹き抜けや高天井と違い一般的な高さの天井を見ることは少ないと言われていますが、施主や我々職人の立場からすると居住者に快適に過ごしていただくために余計なものは目出させたくないというのが本音です。

打ってあるコンクリートは薄い灰色(ライトグレー)なので使用するモールの色は「同系色の灰色」がセオリーとなります。同系色のモールを壁伝いに設置していけばきれいな仕上がりになると考えていました。

私は無難に灰色で提案したところ、クライアントからは「黒でいきましょう!」という回答が返ってきました。話をうかがったところ「灰色の駆体に灰色のモールを使用すると逆に隠している感がでてしまう」というものでした。「アクセントのためにあえて黒」を使用する。提案する立場からすると無難な色合いの選択になりがちですが、このようなアヴァンギャルドな回答をいただけると我々の職人魂に火がつき、よりかっこよく仕上げたいという気持ちになります。このような提案は非常に嬉しいものです。

早速施工をしていくことに

 

まずは駆体にの内部をあらかじめ通してある配管でルートを確認していきます。このルートが確認できると露出配線をすることなく配線をワープさせることができます。ただ我々が使用する配線は弱電線なので100Vの電源用の線と同居はできません。その場合は配管は諦め露出工事となります。

今回は配管の空きが厳しかったため共用部の配線(自動火災報知システムの縦系統に引く幹線)は露出工事をすることになりました。

自火報の配線系統は縦系統と横系統があります。縦系統の配線は幹線と呼ばれ、火災報知システムに使用する「ベル」「ランプ」「電話」「各階の火災感知器用の線」が1つの束になっている線です。

横系統はその階の中継盤である「総合盤、機器収容箱」から火災感知器の配線を取り出し各居室に設置する火災感知器と繋いでいく系統です。これらの線は通常「0.9mmや1.2mmの線が4本入っているケーブル」です。AE線、OP線と呼ばれています。

消防設備士試験画像
自動火災報知系統図の例

これらの線を上手く配置できれば綺麗に仕上がることになります。そのためには「総合盤」の設置位置がとても重要になります。総合盤の位置は勝手に決めることができず、消防法令に則った方法であらかじめ消防署に届出を行い審査してもらう必要があります。

モールを使用する場合は必ずビスを打っておく

樹脂モールにはあらかじめ強力な両面テープが張っており、フィルムをはがせばそのまま貼り付けて使用することができます。かなり強度があるので、クロスに一度貼っていしまうとクロスが剥がれてしまうくらい強力です。室内の温度や湿度の条件が良ければ両面テープによる固定でも長期的に使用することが可能な場合があります。

モールをの中には各種配線を格納することによりそれなりの重量になります。室内の条件が良くなければ徐々に剥がれて落下し危険です。そのために両面テープで固定しつつコンクリート用のビスを打っておきます。特に天井面に貼る場合は壁面と違って重力に引っ張られるためビス打ちは必須です。

モールを両面テープで貼り、ビスで止め、配線を入れ込無作業をひたすらに行っていきます。天井のパターンがどの部屋も違うので最適なルートを考えながら作業を進めていきます。

共用部の幹線はMKダクトを使用し配線を格納する

共用部に設置する縦用の幹線は若干太さがあるため居室に使用したモールよりも若干大きいMKダクトを使用します。MKダクトは角ばっているので配線を何本か収納するのにも扱いやすく大変重宝しています。この部材も黒を選択し施工していきます。

今回の物件は階段の手すりもサッシ枠も共用部天井も黒で統一されていたのでMKダクトが黒いとこのデザインに溶け込みアクセントになっています。黒の場合遠目かる見ると金属なのか樹脂なのか判別は難しく、特に樹脂製ということにより違和感は感じられませんでした。かなり上手く収まったと思っています。

デザインを重視したい方でお困りな方がいらっしゃいましたらご連絡お待ちしております。

番外編:延面積 300㎡未満の防火対象物は特小が使えるようになった

現行の特定小規模用自火報

2024年7月に「火災報知設備の感知器及び発信機に係る技術上の規格を定める省令及び特定小規模施設における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令」の一部が改正され、延べ面積が300㎡未満の防火対象物に「特定小規模施設用自動火災報知設備」が使用できるようになりました。この省令改正により、民泊施設で使用しているような簡易的な火災感知器を使用でき設置に要する時間も大幅に短縮できるようになりました。

ただ、現在電波問題が解決しておらず、法令の整備は整っているのですが現行法令に対応した特定小規模用の火災感知器がありません。この件に関しましては別の記事に書いていますので参照していただけますと幸いです。

参考記事:特定小規模施設用自動火災報知設備の使用範囲が広がりました

施工ギャラリー

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