避難経路図の記載事項について【ホテル旅館で生存確率を上げるために必要なこと】

避難経路図の記載事項について【ホテル旅館で生存確率を上げるために必要なこと】

みなさんはホテルや旅館に到着したらまずどのようなアクションをとるでしょうか?素敵な部屋に心ときめかせたり、窓外に広がる壮大な景観に鳥肌を立てているかもしれません。

私はそのような施設になかなか泊まる機会がないビジネスホテル専のためか、真っ先に「避難経路」を確認してしまいます。居室から誘導灯をたどって避難階段までのルートをすべて確認します。

民泊施設は避難経路が1系統ということもある

6階層以上あるホテルでは原則、2以上の直通階段を設ける必要があるため、避難経路は複数のルートが設けられることになります。これらのルートをすべて実際に歩いて確認することで、火災が起こった場合でも煙に巻かれる前に地上まで避難できるかもしれません。

開業要件がホテル旅館よりも緩い民泊施設では、階層が低い物件が多く、避難経路が1系統であることが多いので、メインとなる避難経路以外に窓の外をチェックし最悪飛び降りることが可能かまたは、シーツやベッドカバーを蜘蛛の糸のように使い避難できるか(シーツをどこに縛るか等)を確認すると生存確率があがるかもしれません。

都市部の建物が連なるエリアではパルクールのように隣接ビルに飛び移れば避難できることもあるので一応シミュレーションをしておくとよいかと思います。

避難経路以外の避難方法を検討する

これらができるか否かはさておき、災害時をイメージすることで生存確率はかなり高くなるので、、ホテル旅館に到着後、一息ついたタイミングで居室入口の扉に掲示してる「避難経路図」を確認し、そのフロアの避難階段までの「避難経路」は必ず確認していただきたいものです。

避難階段は防火区画になっているので煙や火が入ってきにくい構造になっています。避難階段までたどりつければ生存確率は格段に上がります。客室から避難階段までのルート確保は生命を防衛する命綱となります。

避難経路図を確認しよう

避難階段

ホテルや旅館を始め、法令で定められた用途には地上に通じるまでのルートを記載した避難経路図を掲出しなければなりません。この決まりは「自治体の条例」によって制定されています。次の条文は東京都の火災予防条例で避難経路図についての決まりです。

※条例は各自治体の議会で制定されるので都市によって内容や文言が異なります。

(避難経路図の掲出)
第五十二条 
旅館、ホテル又は宿泊所には、宿泊室の見やすい場所に、当該宿泊室から屋外へ通ずる避難経路を明示した避難経路図を掲出しなければならない。

e-GOV:東京都火災予防条例

東京都火災予防条例の避難経路図に関する条文では、旅館やホテルなどの宿泊所には見やすい場所に避難経路図を掲示しなければならないと言っています。民泊に関しても用途がホテルや旅館と同等(消防法施行令別表第一:5項イ)と扱われるため、宿泊室の見やすい場所に掲出が必要になります。平屋の一戸建てで民泊を行っていて窓から避難可能な場合でも掲出することになります。

避難経路図に記載する内容

避難経路図に記載する内容の細目については「東京都火災予防条例施行規則」に定めてあります。条例施行規則はなかなか聞き馴染みがない言葉かと思いますが、東京都議会で成立した条例の細目を東京都知事の権限で制定したものが条例施行規則です。このことは地方自治法15条に記載されていますが、ここで条文を引用すると内容がブレるためパスします。

(避難経路図)
第十一条の二の六 条例第五十二条の規定による避難経路図には、次に掲げる事項を記載すること。

 避難施設及び避難器具の設置位置
 避難経路
 宿泊者に対する火災の伝達方法
 避難上の留意事項

東京都火災予防条例施行規則

この規則によって避難経路図には「避難施設および避難器具の位置」「避難経路」「宿泊者に対する火災の伝達方法」「避難上の留意事項」の4項目について記載する旨を明記されています。

1.避難経路図に避難階段や避難器具(非難はしご、緩降機、救助袋)の位置を書くことで地上までのアプローチ確率を上げることができます。

2.避難経路は図面上に記した矢印←↑→↓ で、避難階段までのルートを目視で確認できます。

3.4.の、火災の伝達方法や避難上の留意事項は「文字情報」で、非常放送による誘導予告や、避難時にエレベーターを使っては行けない等の注意書きを指しています。

これらの情報があれば馴染みのない場所でもあらかじめ情報をインプットしておくことで生存確率を格段に上げることができると断言できます。旅行先や出張先で滞在する施設では必ず避難経路図を確認し、誘導灯をたどり、避難階段までのルートや避難器具の設置位置をあらかじめ確認する習慣を身につけることを強くおすすめいたします。

各主要都市の火災予防条例

札幌市

札幌市火災予防条例(避難経路図の掲示等)
第59条の2 

百貨店、旅館、ホテル、宿泊所及び病院には、次の各号に掲げるところにより避難上必要な措置を講じなければならない。

(1) 売場、客室、廊下、待合所等の見やすい箇所に避難経路図を掲示するとともに、宿泊者及び利用者等に対し、避難口、避難階段、避難器具の設置場所、災害発生時の通報、避難方法等について周知させること。

(2) 百貨店にあつては従業員が常時いる場所ごとに、旅館、ホテル、宿泊所及び病院にあつては客室又は病室ごとにそれぞれ携帯用電灯を常備すること。

横浜市

横浜市火災予防条例(避難経路図の掲出)

第64条 旅館、ホテルまたは宿泊所には、宿泊室の見やすい場所に当該宿泊室から屋外へ通ずる避難経路を明示した避難経路図を掲出しなければならない。

2 劇場等、百貨店等、地下街、病院その他火災が発生した場合に人命に危険を生ずるおそれのある防火対象物で、消防長が指定するものにあっては、廊下、売場、待合室、病室等の見やすい箇所に前項に規定する避難経路図を掲出しなければならない。

横浜市火災予防規則(避難経路図の掲出)

第20条 条例第64条第1項に規定する避難経路図には、次に掲げる事項を記載しなければならない。

(1)避難施設の設置位置
(2)現在地及び2方向以上の避難経路
(3)宿泊者等に対する避難時の注意事項
(4)消火器、屋内消火栓等の設置位置
(5)その他避難に必要な事項

名古屋市

名古屋市火災予防(避難経路図の掲示等)
第64条の2

劇場等、百貨店(延べ面積が1,000平方メートル以上の小売店舗を含む。)、旅館、ホテル、宿泊所、病院、特殊浴場(蒸気浴場、熱気浴場その他これらに類する公衆浴場をいう。)及び地下街については、次の各号に定めるところにより、避難上必要な措置を講じなければならない。

(1) 各室及び廊下、待合所等多数の者の目にふれやすい場所に避難経路図を掲示するとともに、入場者、利用者等に対して、避難口、避難階段、避難器具の設置場所、火災が発生した場合の通報、避難の方法等について周知させること。

(2) 従業者が常時勤務する場所には、適当な数の携帯用メガホン及び携帯用電灯を常備すること。

(3) 旅館、ホテル及び宿泊所にあっては、就寝場所に適当な数の携帯用電灯を常備すること。

京都市

京都市火災予防条例(避難経路図の掲示等)
第54条 

劇場等、個室型店舗、百貨店等、旅館、ホテル、病院その他火災が発生した場合に多数の人命に危険を生じるおそれのある防火対象物においては、次に掲げるところにより、避難上必要な措置を講じなければならない。

(1) 各室(遊興個室を含む。)及び廊下、待合所その他の人目に触れやすい場所に避難経路図を掲示するとともに、入場者、利用者等に対し、避難口、避難階段、避難器具の設置場所、災害発生時の通報、避難方法等について周知させること。

(2) 就寝施設を有するものにあっては、収容人員数に応じ、就寝場所に適正な数の携行用電灯を常備すること。

福岡市

福岡市火災予防条例(避難経路図の掲出等)

第38条の2 劇場等、百貨店等、旅館、ホテル、宿泊所、病院その他火災が発生した場合に多数の人命に危険を生ずるおそれのある防火対象物で消防長が指定するものにあつては、次の各号に掲げるところにより避難上必要な措置を講じなければならない。

(1) 各室及び廊下、待合所等人の目にふれやすい場所に避難経路図を掲出するとともに、入場者、利用者等に対し避難口、避難階段、避難器具の設置場所、災害発生時の通報、避難方法等について周知に努めること。

(2) 就寝施設を有するものにあつては、就寝場所に携行用電灯を常備すること。

各主要都市の火災予防条例を引用し並べてみました。条文に多少の違いはありますが内容的には同じようなことが書かれています。1点違う点をあげてみると、福岡市火災予防条例のみ「避難口、避難階段、避難器具の設置場所、通報、避難方法」の周知が努力義務となっていることです。

避難経路図設置の有無や記載されている内容の項目にかかわらず、旅の拠点に到着したらまず、そこから脱出するルートを確認、確保することが重要です。

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