自動火災報知設備の検査要領に「回路導通試験」という項目があります。これは自火報工事が完了した後の消防検査で、管轄消防署が現場にやってきてチェックする項目の1つです。
この試験については国家資格である「消防設備士4類」に出題される項目でもあります。参考書を見ても今ひとつ理解でないという方に少しでもわかりやすく説明していきたいと思います。
回路導通機能は感知器回路の断線を確認できる機能
感知器のL線-C線と、その他の回路について
P型2級の自動火災報知設備の回路はこの図のように表されます。メーカーにより端子の記号は異なりますが使用するベル、ランプ、アンサー、共通線(C線)、ライン(L線)は同じです。
P型1級にアップグレードした場合は上記の端子に加え「T線テレフォン(電話)」が加わります。回路導通試験でわかる断線は火災感知器回路のL線とC線になります。それ以外の断線については別の試験により確認します。
ベル回路の断線はベルを鳴らせばわかりますし、ランプ回路の断線は表示等がつかなくなります。また「アンサー」は応答線を指し、発信機に接続するための配線です。
発信機は押し釦を押すとL線、C線、A線が同時に短絡します。A線は発報信号の蓄積機能を解除(押した瞬間に火災断定)させるために使用し、もし屋内消火栓がある防火対象物の場合はA線の短絡により消火栓ポンプが起動する仕組みになっています。
旧式受信機と新型受信機の違いにつてい
消防設備士試験の参考書に出てくるような旧式の受信機で回路導通試験を行った画像です。画像の赤く囲っている感知器断線スイッチを下に落としたまま(跳ね返りスイッチ)円形のつまみを回していきます。
円形のツマミは時計回り方向に1から警戒区域の窓の数だけ数字が振ってあります。この受信機は10回線用でしたので1から10までの数字が書いてあります。
もし断線があるときは断線ランプ(発光ダイオード)が点灯します。断線がない場合は点灯しません。このダイヤル式の受信機では回路導通試験を行わなければ断線を確認することができないので、もし断線があった場合は感知器が働かないことになりリスクがあります。
そこで新型の受信機は断線が起こると同時に火災受信機の警戒区域表示灯が点灯し警報音が発するように改良されました。新型受信機で回路導通試験を行う場合は受信機でL線を外すことで行うことができます。L線を外すと前述した警戒区域表示灯が点滅します。
回路の断線はどのように判定しているか
断線の判別には感知器の回路の末端に終端抵抗(終端器)を設置します。この抵抗を火災報知器回路の終端に設置し火災受信機で抵抗値を監視します。抵抗は通常10KΩや20KΩを使用し、火災報知器の回路抵抗値に変化があった場合に断線と判定し火災受信機でエラー表示を発します。
非常にシンプルな仕組みです。
この動画ではL10とC4につながっている抵抗(10kΩ)を外し、10番警戒に断線表示を出したものです。これが回路導通試験です。
通常はL10の端子に銅線を接続し何十メートル先の警戒区域に設置している火災感知器に接続されています。10番は別棟と設定していますが、別棟に火災感知器と末端の感知器に終端抵抗を設置し、もし回路のどこかに異常が発生した場合、動画のように断線エラーが出ることになります。
旧式の受信機ではダイヤルで検知していたものの、新型では自動に断線が確認できるようになっています。
回路導通試験によく似た共通線試験
回路導通試験によく似た試験で「共通線試験」があります。共通線の説明は少しむずかしいのですが、T、A、L線に対してC線を共通線として使います。通常これらの回路は直流回路でT、A、L回路がプラス極性、対して共通線Cがマイナス極性となっています。
共通線C(コモン)は各端子のマイナスの役割をしています。
※能美防災社製品はコモンがプラス(極性が逆)に設定されています。
各回路の役割 | |
T-Cの回路 | 発信機と受信機間の電話で使用 |
A-Cの回路 | 発信機の蓄積解除と消火栓ポンプの起動に使用 |
L-Cの回路 | 火災感知器回路で使用 |
共通線試験はこの回路のL-C間の回路の状態を確認する試験になります。Lは火災感知器回路で使用するためのものです。1警戒につき1L使用します。このL線は、共通線(C線)1つに対して7Lまで使用することができます。8L以上を1のCで使用することができません。
火災受信機のC線を外せば該当するL線の断線が表示されます。これは、先程説明した回路導通試験と同様に終端抵抗の抵抗値を拾えなくなるため受信機で断線が表示されます。CはL線のマイナス線のためもしマイナス線が断線すると終端抵抗の抵抗値を受信機で感知することができなくなります。
共通線試験はLが7線以内で使用されているかを確認する試験ですが、確認する方法は回路導通試験と同様の内容になります。
ややこしいですが理解の参考になれば嬉しく思います。
参考: 消防用設備検査基準
参考記事:断線の仕組みと対処法