消防設備士として独立するために必要なこと【未経験者向け】

消防設備士として独立するために必要なこと【未経験者向け】

先日将来的に消防設備士として独立したいと相談ををいただきました。正直ワタクシは人にアドバイスできる立場にあると今だに思ってません。まだまだ半人前で発展途上の中にいると思っています。ですが、せっかく私を頼ってきてくださったこともあり、生意気ながらも完全なる主観を語らせていただきました。

私は今まで目の前のことを真剣にやってきだだけで、特にこうなりたいという目標があったわけではありません。クライアントの求めに対応していたら現在のようになったという感じです。ただそれだけで非常にシンプルです。

と、ここで話が終わると元も子もないので、自分がやりたい方向性(ジャンル)を決めて邁進することが重要かと思います。そのためにの基礎となるものは「資格」と「経験」です。この資格と経験をどのように肉付けしてばよいかについて完全に私の偏見で書いていきたいと思います。

消防設備の仕事のジャンルは幅広い

まず消防設備士が従事するであろう業務は大きく分けて以下となります。

  • 消防設備点検
  • 消防設備工事

まず、この2つの業務が基礎となります。この2は全く性質が異なります。
設備点検は仕事の数が多いので安定的な経営が可能となります。しかし、参入障壁が低く競合が多いため価格競争が激しくなる傾向があります。何かしらのアドバンテージがなければ満足の行く金額で受注することは困難となります。

一方、消防設備の工事は設備点検ほど案件数はありません。また点検作業者と比較して工事作業者が少ないので、比較的単価を上げやすく、安定的に受注することができれば高収益を目指すことが可能です。

高単価な仕事の受注は難しい

どの仕事をするにしても共通するのは高単価案件の受注は難しいということです。もし高単価案件を受注したいのであればより上流で請負として依頼を受ける必要があります。仕事を請け負うためにはそれなりの経験と仕事を完成させるまでの資金が必要になります。また請負の序列が上がるほど責任が大きくなります。

仕事に対する主な発注主について簡単な表にしてみます。

仕事の主な発注主

  新築物件 既存物件
点検業務 ・管理会社 ・ビルオーナー
・建物管理会社
・点検マッチング会社
工事業務 ・建設会社直請け
・電気工事業者
・設備関係会社
・消防設備業者
・ビルオーナー
・建物管理会社
・電気工事業者
・設備関連会社
・消防設備業者
・工事マッチング会社

 

消防設備の仕事をする場合、施主指名で受注する場合を除き、大抵この票にあるところ受注することになります。記載順の上から単価が高くなります。もし高単価で受注したければ表の上に入り込む必要があります。

今後は作業員が減少することを想定すると受注単価が上がることが想定されるのでどの部分で受注してもそれなりの収益を出せる可能性があります。そのために工事をしっかりみっちりこなせるようなっておく必要があります。

工事ができれば点検もできる

消防設備点検は比較的スケジュールを建てることが容易で、シフト対応で業務を行うことができます。一方で工事の場合は工程に左右されたり、クライアントの都合で変更になったりします。そのような結果、点検作業がやりたいという方が多数派のように感じています。

ワタシ的には、消防設備点検は非常に難しいものであると考えております。なぜかというと、設置基準を完全に理解していないと点検の判定をすることができないからです。

もし初めての現場で合否をジャッジすることになった場合、現行法令を熟知していなければ当然に正しい報告書を作成することができません。そういった意味で点検作業は非常に難しいと考えております。

工事ができればより効率的になる

もし、点検作業員に工事スキルがあった場合、点検時にどのようなエラーでどのように改修すればよいかがわかります。工事ができれば点検と同時に調査も行え、軽微な改修の場合は「別日にて改修のための現場調査」を省ける可能性がでてきます。これはクライアントにとっては非常にプラスなことです。

みっちり消防設備の仕組みとシステム、関係法令を理解することでシームレスな作業が可能となります。そのためにはとりあえず工事をひたすら繰り返すことが重要となります。

工事をひたすらこなしてパターンを覚える

消防設備は多種多様なトラブルが頻繁に発生します。
例えば「エラー表示が消えない」「機器が誤作動を起こす」「ヒューズが飛んでしまう」「絶縁が悪い」消火設備では「配管の圧力が下がる」などが挙げられます。これらのことで工事作業を敬遠するという方もいらっしゃることでしょう。

しかし、それは非常にもったいないことだと思います。エラーやトラブルには必ず原因があります。しかもそのエラーある程度パターン化されているので、トラブルを1巡経験すればなんとなく原因がつかめるようになります。

確かにトラブルシューティング中は何もわからないまま時間だけが過ぎていくということもあります。食事も取れず、家にも帰れないということもあるでしょう。でも心配不要です。その果てしない時間は未来の投資となり、いつかトラブルを瞬殺できる日がやってきます。これは経験談なので間違いありません。

もし就職先の選定で迷っているなら、工事がメインの会社に入社し、みずがら進んでエラーに飛び込むことをおすすめします。

資格を取得する

誘導灯画像

消防設備士として従事するには「消防設備士」という国家資格が必要になります。資格がないと業務あたることができません。今すぐ取得することをおすすめいたします。

また関連する資格として「電気工事士」が必要になることがあります。自動火災報知設備や消火栓ポンプ類には電源の受電が必要になります。そのための電源供給工事は電気工事士として行います。「第二種電気工事士」があれば問題ありません。

消防設備士は1類~7類まで消防設備に応じで分けられています(特類を除く)。

消防設備士資格の類 消防設備の種類 おすすめ度
特類 特種消防設備

特種消防設備

★★
1類 水系消火設備 スプリンクラー
屋内消火栓
屋外消火栓
★★★★★
2類 泡系消火設備 二泡消火設備 ★★★
3類 ガス系消火設備 酸化炭素消火設備
ハロゲン化物消火設備
イナートガス系消火設備
★★★
4類 警報系消防設備

自動火災報知設備
ガス漏れ火災警報設備
非常放送設備

★★★★★
5類 避難器具系消防設備  避難はしご
緩降機
★★★★
6類 消火器・大型消火器 粉末消火器
強化液消火器
二酸化炭素消火器
★★★★★
7類 漏電火災警報機 漏電火災警報機 ★★★

また甲種と乙種に分かれています。甲種は工事ができ、乙種は点検を対象としています。難易度的には甲種が若干難しくなりますがさほど変わらないかと思います。

種  別できる作業
甲  種工事および点検
乙  種点   検

消防設備士の資格は他の国家資格と異なり年間数回も試験があります。また、都道府県別に試験を行っているため、他の都道府県に同時に願書を申し込めば同時期に同類の試験を複数回受験することができます。早ければ1年ほどでコンプリートが可能です。

消防設備点検資格・防火対象物点検資格者

「消防設備士点検資格者1種、2種」「防火対象物点検資格者」を取得することをおすすめいたします。
消防設備点検資格者については、消防設備士甲種をンプリート+電気工事士があれば不要です。しかし、忙しく5年に1度の講習を受けられないということがあるかもしれません。また、定員オーバーで申し込めないということもありえます。

防火対象物点検に関しては必須と言えます。必ず依頼はきますので取得する必要があります。

現場に関する以外の資格、知識について

日商簿記3級

現場では消防設備士と電気工事士資格が必要になりますが、実務をするうえで「簿記3級」の知識があるとなおよいかと思います。簿記3では会計の基礎を学べ、お客さんから得た収入(売上高)をどのように使って最終的な利益(当期純利益)へ導き出すのかがわかります。

お金の流れがわかると何にどのようなお金を使ったのか、また、どのようなお金を使って売上を上げていくかについて戦略が立てやすくなります。私は業界に貼っていすぐ検定を受けましたが、やってよかったと思っています。

甲乙どちらか迷ったら甲種1択で

甲種と乙種の事件を迷ったら迷わず甲種です。そもそも独立を目指しているので当然に甲種1択となります。

甲種消防設備士には受験資格ががあります。その中に「電気工事士」「建築士」「消防行政3年」「機械、電気、工業化学系大学、高校卒」「無線従事者」などの参入障壁が設けられています。このあたりがハードルが高くなる場所です。

しかし心配は要りません。先述した「無線従事者」には1日の講習で取得することができる「第3級陸上特殊無線技士」が含まれています。この講習を受講することで甲種消防設備の受験資格を得ることができます。

自身に受験資格がない場合は今すぐ「第3級陸上特種無線技士」をGETしてください。

どの類を取得するのか

受験資格を得ている場合はどの類から受験すればよいでしょうか。結論は全てです(特類を除く)。独立をするのであれば当然に全てあったほうが良いです。実際に施工する設備の類に該当しない場合でも知識として持っていれば応用が効くようになります。また、クライアントの安心度も増し同業者から一目置かれるかもしれません。

ビルメンさんの中に果てしなく優秀な方がいらっしゃいます。特類を始め各類コンプリートされているだけでなく、関連する建築設備についても熟知されています。我ながら本当にすごいと思います。

このような方々と対峙する場合、当然専門職である我々もそれなりの準備が必要になります。現場担当者との類似性により、知識の共有で仲良くなれる確率が上がり良好な関係値で仕事をすることができるかもしれません。

資格取得に要する時間(独断と偏見による)

私が取得した20年ほど前とは難易度が変わっている可能性がありますが独断と偏見によるおおよその時間を書いていきます。

消防設備士の類 目安時間(個人差あり)
1類 水系消火設備 約 100時間~200前後
2類 泡系消火設備 約 100時間前後(1類取得後)
3類 ガス系消火設備 約 100時間前後(1類取得後)
4類 警報系消防設備 約 100時間~200前後
5類 避難器具系消防設備  約 100時間前後
6類 消火器・大型消火器 約 60~120時間前後
7類 漏電火災警報機 約 60~120時間前後(4類取得後)

個人差があると思いますが1日2から3時間勉強して1~2ヶ月で取得するというのが一般的かと思います。試験に受かることも大切ですが内容を理解することのほうが重要です。運良く合格したとしても、実務に直結する知識として蓄積されていなければ再度勉強することになります。なので表に書いた時間以上かかっても全く問題はありません。

全類(特類を除く)の取得まではそれなりに時間がかかりますが、努力は裏切りません。酒飲を飲みテレビ、ネットを見て一日を終わらせるか、毎日コツコツ知識を積み上げて終わるか。

10年後の結果全く別物になることでしょう。前者を否定するつもりはありません。自分は各々自由に好き勝手やればいいと思っていますが、独立を目指すならコツコツやるしかありません。

※特類を除くというのは、あくまでも自分の考えで「特類が必要な消防設備を触る機会がほとんどないから」という理由です。それだけです。

勉強のコツ

消防設備の勉強は非常にわかりくいと思います。20年以上消防設備の職人として業務していますが、今テキストを見ても言葉が専門的であり、内容が抽象的に思えます。初学者の方はいきなりテキストの内容を見ても理解は難しいでしょう。なので、理解を前提としないで読み物として1週読んでみることをおすすめします。

具体的な内容を理解するには全体の概要を理解することが必要になります。全体像が見ていないまま具体的な事柄を理解することは非常に困難です。一連の流れを理解してある程度整理できたら次に具体的な内容に触れていくことをおすすめいたします。

また、読んで覚えるのは非常に困難です。なぜかというと受動的に得た知識は習得しにくいからです。では受動的でない学習はどのようなものかというと「問題集による学習」です。問題集は自ら問題を解きに行く能動的学習法です。脳へのインプットの質が全く異なります。なので、問題集を基にした参考書をひたすら繰り返すことが合格への近道となります。

問題集を10周くらいやってテキストを読んでみると不思議なくらい理解できます。反対にテキストを10回読んで問題集を解いても合格点に達するかは微妙なところです。

問題集を基に知識を蓄積し、問題の中にある関連する知識をテキストで拾って行く作業を繰り返すことが効率的な学習法であると断言できます。なので、まずテキストをざっと1週読んでみてから問題集を何周もできるようになるまで繰り返す。そして、できるようになった問題はスルーし、間違えた問題のみを何度も繰り返すことで基準点に達するようになります。

問題集ベースのテキストをひたすら何回もやり直すことが重要です。

学習パターン
テキストで全体像を確認 → 問題集を繰り返し → できない問題を繰り返し

ひたすら仕事をする

受信機基盤交換

結局のところ現場経験が物を言います。どんなに知識があっても現場は別物です。現場で得られる知識はテキストに書いていないことが多く、知っていてもなかなか教えてもらえません。当然飯の種を好き好んで教えるというような人はなかなかいません。

現場知識がある人は自ら経験して習得しているのですから、人よりも経験することが必要となります。毎日新しい知識を得て次の日に備えることができれば最高です。

また、大量の知識が手に入るのは「緊急対応」かと思います。緊急対応は誰もが嫌がりますが知識の宝庫です。トラブルシューティングは原因を消去法で潰していくことが多い為原因の特定まであらゆる仮設と検証を繰り返します。その過程で様々な知識を短時間で得ることができます。緊急対応は将来への投資だと思って果敢に挑んでください。

トラブルの原因がわかることのメリット

緊急対応で得た知識によって享受できる最大のメリットがあります。それは誤作動を起こさないための施工方法が身につくということです。もし独立したあと不動産を預かり自ら施工することになったとします。

今までの知識があればトラブルが起こりそうな施工を避けることができます。また、点検時に怪しい箇所を未然にチェックすることができます。緊急対応自体を減少させ、緊急対応があったとしても特定まで時間はかかりにくくなることでしょう。

昔書いた記事:トラブルを楽しもう!

いよいよ独り立ち

これまで果敢に頑張ってきたことで間違いなくサポートしてくれる人は誰かしら現れると思います。

仕事に打ち込む姿勢。得た知識を困っている人のために提供したこと。だれもやりたがらない緊急対応で得た信頼。これらのことは関係する人々はしっかりと見ています。あなたがイなければ会社が成り立たないと思われたらもう勝利しています。

お世話になった方々と良好な関係を維持できれば成功する確率は高いのではないでしょうか。ということを偉そうに語ってしまいました。申し訳ありません。

今後とも精進していきたいと思います。

・消防法
・消防法施行令
・消防法施行規則

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