特定小規模施設用の自動火災報知設備が多くの施設で使えるようになりました【省令改正2024.7.23公布・施行】
特定小規模施設における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令2条1項イを読み解く
2024年7月23日に「火災報知設備の感知器及び発信機に係る技術上の規格を定める省令及び特定小規模施設における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令の一部を改正する省令」が公布、施行されました。
また「特定小規模施設における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令」も公布、施行されたことにより特定小規模施設の定義の範囲が大幅に広がり特定小規模施設用自動火災報知の設置条件が大きく緩和されました。
これらにより「特定小規模施設」かつ「技術上の規格」が要件を満たしている自動火災報知設備であれば無線式の自動火災報知設備(特定小規模施設用)を設置することが可能となります。
参考記事:省令改正の省令とは?法令の構造について
改正条文について(特定小規模施設の定義)
第二条
特定小規模施設における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令2条1項、2条1項1号イ
この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 特定小規模施設 次に掲げる防火対象物又はその部分をいう。
イ 令第二十一条第一項(第三号から第六号まで、第八号、第十一号、第十二号、第十四号及び第十五号を除く。)に掲げる防火対象物又はその部分のうち、延べ面積又は床面積が三百平方メートル未満のもの
令第二十一条一項
自動火災報知設備は、次に掲げる防火対象物又はその部分に設置するものとする。
三 次に掲げる防火対象物で、延べ面積が三百平方メートル以上のものイ 別表第一(一)項、(二)項イからハまで、(三)項、(四)項、(六)項イ(4)及びニ、(十六)項イ並びに(十六の二)項に掲げる防火対象物ロ 別表第一(六)項ハに掲げる防火対象物(利用者を入居させ、又は宿泊させるものを除く。)
四 別表第一(五)項ロ、(七)項、(八)項、(九)項ロ、(十)項、(十二)項、(十三)項イ及び(十四)項に掲げる防火対象物で、延べ面積が五百平方メートル以上のもの
五 別表第一(十六の三)項に掲げる防火対象物のうち、延べ面積が五百平方メートル以上で、かつ、同表(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項又は(九)項イに掲げる防火対象物の用途に供される部分の床面積の合計が三百平方メートル以上のもの
六 別表第一(十一)項及び(十五)項に掲げる防火対象物で、延べ面積が千平方メートル以上のもの八 前各号に掲げる防火対象物以外の別表第一に掲げる建築物その他の工作物で、指定可燃物を危険物の規制に関する政令別表第四で定める数量の五百倍以上貯蔵し、又は取り扱うもの
八 前各号に掲げる防火対象物以外の別表第一に掲げる建築物その他の工作物で、指定可燃物を危険物の規制に関する政令別表第四で定める数量の五百倍以上貯蔵し、又は取り扱うもの十一 前各号に掲げるもののほか、別表第一に掲げる建築物の地階、無窓階又は三階以上の階で、床面積が三百平方メートル以上のもの十二 前各号に掲げるもののほか、別表第一に掲げる防火対象物の道路の用に供される部分で、床面積が、屋上部分にあつては六百平方メートル以上、それ以外の部分にあつては四百平方メートル以上のもの
十四 前各号に掲げるもののほか、別表第一に掲げる防火対象物の十一階以上の階
E-GOV:消防法施行令21条1項
十五 前各号に掲げるもののほか、別表第一に掲げる防火対象物の通信機器室で床面積が五百平方メートル以上のもの
この条文を見てもよくわからないと思うので下にまとめます。
劇場、集会場、ナイトクラブ等、飲食店、物販、無床診療所、無床助産所(、特定複合用途、地下街等、保育園等
・延べ面積500㎡以上で下記のもの
共同住宅、学校、図書館、浴場、駅や空港(乗り降り目的のみの場合)、工場、駐車場、倉庫
・地下街等の類で500㎡以上で下の施設(300㎡以上)が入るもの
劇場、集会場、遊技場、ナイトクラブ等、飲食店、物販、ホテル類、福祉施設関係、蒸気浴場
・神社、教会関連、事務所、美容室、リラクゼーション、フィットネスジム関係で延べ面積が1,000㎡以上
・指定可燃物を危険物の規制に関する政令別表第四で定める数量の五百倍以上貯蔵し、又は取り扱うもの
・地階、無窓階、3階以上の階で床面積が300㎡以上のもの
・道路として使用される部分で床面積が【屋上部分:600㎡】【それ以外:400㎡】以上のもの
・11階以上の階
・通信機器室で床面積が500㎡以上のもの
上記以外の部分でかつ、延面積または床面積が300㎡未満の防火対象物は「特定小規模施設用の無線式感知器」が使用できるということになります。
延べ面積300㎡未満の特定一階段等防火対象物でも使用可能
特定一階段等防火対象物を簡単に説明すると「地下or3階以上に不特定多数を収容する「特定用途」が入居 + 屋内階段が1系統のもの」を指します。
特定一階段等防火対象物に該当すると面積に関係なく自動火災報知設備の設置が義務となります。どんなに小さい建物でも設備の設置が必要になります。
今回の改正により有線式の自動火災報知設備に替え「特定小規模用自動火災報知」が使用することが可能となります。
特定小規模施設における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令2条1項、2条1項1号イの規定から特定一階段等防火対象物(消防法施行令21条1項7号)が除外されていないため延面積が300㎡未満であれば特定小規模施設用の無線式感知器が使用できる
【消防法施行令21条1項7号条文(特定一階等防火対象物)】
防火対象物以外の別表第一に掲げる防火対象物のうち、同表(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項又は(九)項イに掲げる防火対象物の用途に供される部分が避難階以外の階に存する防火対象物で、当該避難階以外の階から避難階又は地上に直通する階段が二(当該階段が屋外に設けられ、又は総務省令で定める避難上有効な構造を有する場合にあつては、一)以上設けられていないもの
この条文が「特定小規模施設」の定義から除外されていない
参考記事:特定一階段等防火対象物
隠れ優良民泊物件が見つかる可能性がある
民泊を運営したいが見つけた物件が3階以上の階にあるとします。この場合は前述した「特定一階段等防火対象物」に該当し建物全体に自動火災報知設備を設置することになります。新規に設備を設置するとそれなりに費用がかかります。
こうしたケースで民泊や旅館業の運営を断念された方が多くいらっしゃることでしょう。どんなに素晴らしい物件でも有線の自動火災報知設備を設置すると投資金額を回収できず断念することになります。
もし3階以上で空き物件がある場合で建物の延べ面積が300㎡未満であるときは特定小規模施設用自火報(無線式)が使用でき採算がとれる物件が見つかる可能性でてきました。
現行の特定小規模感知器は使用できない可能性があるので注意が必要
無線式感知器の問題点その1:使用できる器具
下の条文は特定小規模施設用自動火災報知設備の構造についての条文です。条文の赤文字に「火災の発生を感知した場所を周知する音声」とあります。現行で特定小規模用の感知器を製造しているメーカーはパナソニック社と能美防災社の2社です。
音声により火災発生場所を設定できるのはパナソニック社製です。パナソニック社の感知器は感知器作動時に「1階で~」「2階で~」「階段で~」などの音声を設定できます。条文でいう「火災の発生を感知した場所を周知する音声」と合致します。
一方、能美防災社の製品は「1番」「2番」などの番号で音声警報を発します。番号を音声で読み上げるプログラムのため現状使用できる感知器はパナソニックの製品が該当すると思われます。
ハロにより火災信号を受信した場合に、確実に火災警報を発することができるものであること。この場合において、火災の発生した警戒区域(火災の発生した区域を他の区域と区別して識別することができる最小単位の区域をいう。第四十三条第一項第一号レにおいて同じ。)を特定することができるものにあっては、その火災警報が警報音並びに火災である旨の情報及び火災の発生を感知した場所を周知する音声(音圧及び音色が、他の警報音又は騒音と明らかに区別して聞き取ることができるものに限る。)を組み合わせたものであること。
火災報知設備の感知器及び発信機に係る技術上の規格を定める省令及び特定小規模施設における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令の一部を改正する
省令18条1項ハ
無線式感知器の問題点その2:電波通信について
無線式感知器は障害物がない状態で約100m飛ぶように設計されています。特定小規模用感知器は建物の中で電波通信を行います。天井や壁、竪穴区画の場合は鉄扉などが設置されいるため階をまたぐごとに電波が届きにくくなります。
前節で特定小規模用の感知器は「パナソニック社」と「能美防災社」の感知器について書きました。この2社の感知器には設計上の違いがあります。
まずパナソニック社製の感知器は「親器」に対して「子機」がぶら下がる設計となっています。また「親機」に対して「子機」が14台まで設定可能で合計15台まで接続可能です。もし電波が届き15台で完結できる場合は同社製品が使用できるものと思われます。
一方、能美防災社製の感知器は「親機」「子機」の関係はパナソニック社と同じですが「親機」1台に対して「子機」が15台まで設定可能で16台まで接続可能です。
また同社製品は親機同士を中継機で接続することができ親子関係を4グループまで設定できます。中継機を使用することで最大58台の感知器を接続可能です。電波問題はクリアできる可能性高いですが音声警報の問題に課題が残ります。
パナソニック社 | 能美防災社 | |
火災発生場所音声警報 | あり | なし |
接続可能個数 | 親1に対して子14 計15 | 親1に対して子15 計16 |
接続個数 | 最大1グループ 最大15台まで可 |
最大4グループ 中継機を使用することで感知器最大58台まで可 |
製品について | 音声警報には対応できているが設置個数と電波が届くかが鍵となる | 親機同士の中継が可能なため電波対策については期待できる。火災発生場所の音声警報が対応できておらず着工審査が通るかが現状不明 |
現行法令に対応し実質的に使用できるようにするための改良点 | 中継機で他グループと接続できるようにする | 火災発生警報時の音声を番号読み上げから火災発生場所へ変更する |
これらのことから法令改正に適合する新製品が製造されるものと思われる(憶測です)
特小感知器設置するための資格について
特定小規模施設用自動火災報知機の設置には資格が必要ありませんでした。今回の改正に伴い中継機を使用する場合については「消防設備士甲種4類」の国家資格が必要になります。
一方で中継機を使用しない単独グループで特定小規模自火報を設置する場合はどなたでも設置可能となります。設置には管轄消防署への事前相談および各種届出、立会検査が必要になります。
弊社は行政書士事務所も兼ねているので一連の消防申請手続き関連業務を行政書士法に則り承ることが可能です。
第一報のまとめ ※情報が入り次第更新します
- 省令改正により特定小規模施設用自火報が使える範囲が広がった
- 延べ面積300㎡未満の特定一階段等防火対象物でも使用可能
- 現行品は「パナソニック社」「能美防災社」の2社が製造
- 現行の製品は実質使用することが難しいことが想定できる
- 法令改正にあった製品が製造される可能性がある
- 中継機を使用し感知器を設置する場合は資格が必要
- 改正されたばかりなので詳細把握はもう少し時間がかかります