消防署の立ち入り検査や封書にて「防火管理者」を選任するよう命じられることがあります。防火管理者とは火災等の被害を防止するために必要な業務に従事する責任者で、防火管理に関する業務を指揮監督します。
今回は防火管理者の選任までの手順について記載していきます。防火管理者については消防法第8条により明文化されています。
第八条
消防法第8条 防火管理者
学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店(これに準ずるものとして政令で定める大規模な小売店舗を含む。以下同じ。)、複合用途防火対象物(防火対象物で政令で定める二以上の用途に供されるものをいう。以下同じ。)その他多数の者が出入し、勤務し、又は居住する防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちから防火管理者を定め、政令で定めるところにより、当該防火対象物について消防計画の作成、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備、火気の使用又は取扱いに関する監督、避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わせなければならない。
簡単に書きますと、特定の建物には防火管理者を選任して、消防計画を作成し、消防訓練を行い、消防設備の維持管理の監督を行い、収容人員の管理、その他の業務を行うということです。
防火管理が必要な「特定の建物」については下記リンクを参照ください。
手順1 防火管理者の資格を取得する
防火管理者になるには「防火管理者」の資格を取得する必要があります。この資格は、事前に特定の学習が必要というわけではなく、指定講習機関が実施する講習を受講することで免状が交付されます。
申し込みは各消防署、消防署分署又は消防出張所にて行えます(東京消防庁管内)。東京以外の地域でも大抵は消防署にて申し込めると思いますが、ご心配の場合は管轄消防署へお問い合わせくださいませ。
費用は5,500(乙種防火管理者は1,700円)
防火管理者には甲種と乙種の2種類があります。2つの種類分けはざっくり比較的大きい建物が甲種、小さい建物が乙種となります。これらの基準も細かい設定があるので、どちらにすればよいかわからない?という方は甲種を受講しておけばよいかと思います。基準については下記リンクをご参照ください。
ちなみに甲種は2日間、乙種は1日間の講習になります。
参考記事:防火管理者の選任基準【甲種・乙種 防火管理者講習について】
手順2 防火管理者選任届と消防計画を提出
防火管理者選任届
防火管理者講習が終了したら「防火管理者終了証」が交付されます。交付後の手続きとして「防火管理の選任」を行う必要があります。この選任には「防火管理者選任届」という書面で行う必要があり、必要事項を記載した書面を管轄の消防署へ提出します。
② 前項の権原を有する者は、同項の規定により防火管理者を定めたときは、遅滞なくその旨を所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。これを解任したときも、同様とする。
消防法第8条2項
消防計画
次に消防計画を作成します。消防計画は少し複雑で、それぞれの方が使用する建物の形態に合わせてオリジナルに作成する必要があります。火災や地震の際どのように行動するかをあらかじめ計画として記載する書面のため、各事業所でよく話し合う必要があります。
消防計画には事業所の平面図に避難経路を記入した図面を添付する必要がありますので忘れずに。
上記「防火管理者選任届」「消防計画」は正副2部届出し、1部が副本として返却されます。副本は追々必要になることがあるので大切に保管する必要がありますが、内容については次節にて記載します。
これらの副本が必要になるとき
「防火管理者選任届」と「消防計画」は届出後副本が返却されます。この副本が後々必要になることがあります。それはどのような場合かというと、
- 防火(防災)対象物点検を実施するとき (消防設備業者が実施)
- 消防設備点検を実施するとき (消防設備業者が実施)
- 消防署立ち入り検査を行う際
などです。防火管理者は防火防災の維持管理責任者として業務を行います。そのため、上記に記載した点検を行う場合でも防火管理者として記名箇所があります。そのような情報を点検業者から求められるので、常に「防火管理者選任届+消防計画」は最新の状態にて保管しておく必要があるのです。
まとめ
- 防火管理者講習を受講して修了証を手に入れる
- 防火管理者選任の届出を行い選任する
- 消防計画を作成し届出をおこなう