現代の消防設備士は部材や施工法の進化の恩恵を受け、とても恵まれていると思うことがあります。同時に、先代の設備士さんのスゴサや当時の大変さを知ることができます。現代っ子設備士は古めの消防機器や配線周りを見ると、戸惑い気味になってしまい普段の施工・工事よりも時間がかかってしまうのではないでしょうか。
例えば、火災報知設備を設置する際に使用する電線類です。我々の世代では線ごとにカラフルな色分けがされており、簡単に認識することができます。また、当時と比べて線自体が細く、軽く、取り扱いが非常に楽になっています。
当時の配線は全て同じ色であったり、良くても4・5色で、重く太い線を使用しています。配線が全て単色であった場合、作業が困難になり電線迷子になってしまう確率が上がってしまいます。複数ある線はそれぞれの役割があり制御することになりますため、接続ミスは命取りになります。
配線同士を接続する部品についても、昔は線同士をよじってからロウ付けし、最後に絶縁テープを巻くと言った工程でしたが、今は圧着スリーブ、圧着ペンチを使うと1動作で完了してしまいます。
消火設備のスプリンクラー設備は、複雑な配管ルートでも全て鉄配管にねじ切りをし、溶接し施工していましたが、今ではフレキシブルの蛇腹配管があります。ねじって、まげて、ひねっての作業が自由自在のため、工数を圧倒的に減らすことができます。
昔と今の電線材
昔の配線は先にも書いた通り、色分けが少なく同じような配線がたくさんあり、分からなくならないよう施工する必要がでてきます。
編組(あみそ)により電線を順番に編み込み、それぞれの配線がどの役割をしているかを記録し確実に接続することが必要になります。特に消火栓ボックスや、総合盤などの縦系統の幹線が集中しているような場所では要注意です。
太い線は取り回しがしにくい
電気配線と同じ太さを使用していた
当時の配線は現行の配線より太く硬く取り回しが簡単とは言えません。配線被覆に付けられている色も現代では何通りもありますが、当時のものは似たような色をたくさん使用しています。
接続を間違えたりすると当然に機能しなく、ショートしたり故障の原因になる場合があります。不具合が発生したらこれらの線を一つ一つ調べていきます。色で線の特定が困難なので、電圧特性や、抵抗値でどの線なのかを探っていくことになります。
また、耐熱電線同士を接続する場合には、接続部分の耐熱処理が必要になる場合があります。耐熱処理はリングスリーブや閉端子でカシメたあと、耐熱テープを巻きます。今ではスリーブ自体に耐熱処理がされている製品があります。1動作で圧着+耐熱処理が完了してしまいます。
金属管による施工が多かった
当時は金属管を使用する施工が多く行われていましたが、今ではその逆となっています。金属管による施工は現代でも行われていますが、PF管(プラスチック製のフレキシブル蛇腹)などに取り替わっています。PF管は軽く取り回しが楽にできます。
金属管配管工事はPF管工事と比べて手間がかかり、技量がいるため施工できる技士が当時に比べてかなり減っていると聞いております。スケルトン天井に金属管工事を行うと非常にかっこよく仕上がるため、金属管が得意な方であればそれなりに需要があるのではないでしょうか。