2以上の直通階段を設ける場合について【2方向避難・建築基準法施行令】

2以上の直通階段を設ける場合について【2方向避難・建築基準法施行令】

避難階段

建物は火災や地震などの災害時に、使用する人々が安全に避難できるように設計されています。その主となるものが地上への『直通階段』になります。一定の条件や規模の建物になると地上へ通ずる直通階段が2系統必要になります。どのような場合に2つの直通階段が必用になるのでしょうか。

まずは法令の条文『建築基準法施行令112条』です。121条は2方向避難についての決まりごとが書かれています。

2系統の直通避難階段が必要な条件

6階より上か?5階より下か??基準の違いについて

避難施設

2系統の直通階段が必要かどうかは『用途は何か?』『何階に入居するのか?』を基準に考えます。『2以上の直通階段が必要な用途』を記します。

   用    途  
5階以下 6階以上
 劇場・映画館・演芸場
観覧場・公会堂・集会場

条件により設置

緩和規定
なし
 物品販売店舗 条件により設置 緩和規定
なし
 キャバレー・カフェー
 ナイトクラブ・バー
 性的好奇心を提供する施設
 ヌードスタジオなど
緩和規定
あり
緩和規定
なし
 病院・診療所・児童福祉施設 条件により設置 緩和規定
なし
 ホテル・旅館・下宿
 共同住宅 
条件により設置 緩和規定
あり
 その他の施設  条件により設置

緩和規定
あり

 これらの用途が入居する場合は原則『直通階段が2系統』必要になり、例外的な条件として緩和規定が設けられています。表の緩和規定ありと記載したものには、例外的に『2以上の直通階段』を緩和できるという規定があります。それはどのような場合かというと、

全てに該当することが必用
① 階の居室
床面積の合計が
100㎡以下
② バルコニー・屋外通路が
設けてあること
 ③ 屋外避難階段又は
特別避難階段の設置

この①②③が条件に合致してる場合、2以上の直通階段を設けなくてよいという緩和規定があります。下の条文で第百二十三条第二項又は第三項の規定に適合するもの又は第三項の規定に適合するもの』とは、屋外避難階段及び特別避難階段のことを指しています。

イ 六階以上の階でその階に居室を有するもの(第一号から第四号までに掲げる用途に供する階以外の階で、その階の居室の床面積の合計が百平方メートルを超えず、かつ、その階に避難上有効なバルコニー、屋外通路その他これらに類するもの及びその階から避難階又は地上に通ずる直通階段で第百二十三条第二項又は第三項の規定に適合するものが設けられているものを除く。

建築基準施行令第121条6のイ

5階以下の階で2以上の直通階段が必要になる条件

これまでは、6階以上の階、又は、キャバレー、カフェー、ナイトクラブの用途で五階以下の直通階段設置の例外を見てきました。次に、5階以下の場合で各用途の二以上の階段設置が義務になる条件を見ていきます。

1.劇場・映画館・演芸場・観覧場・公会堂・集会場

劇場、集会場

劇場・映画館・演芸場・観覧場・公会堂・集会場で、その階に客室、集会室やこれらに類するものがある場合に2の直通階段が必要になります。構造や規模、階には関係なく設置が必要になります。

必用な階の要件 備 考
客室・集会室などがある階 6階以上は緩和規定なし

一 劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂又は集会場の用途に供する階でその階に客席、集会室その他これらに類するものを有するもの  

建築基準施行令第121条1の1

※直通階段を1系統にできる緩和規定はありません

2.物品販売を営む店舗

物品販売店舗

2の直通階段が必要になります。構造や規模、階には関係なく設置が必要になります。

必要な階の要件 備考
物販店舗がある階
床面積 1,500㎡を超える階に必用
6階以上は緩和規定なし

二 物品販売業を営む店舗(床面積の合計が千五百平方メートルを超えるものに限る。第百二十二条第二項、第百二十四条第一項及び第百二十五条第三項において同じ。)の用途に供する階でその階に売場を有するもの  

建築基準施行令第121条1の2

※直通階段を1系統にできる緩和規定はありません

3.キャバレー・カフェー・ナイトクラブ・バー・ヌードスタジオ

キャバレー

必要な階の要件 備考
客席・客室がある階 5階以下に緩和規定あり
6階以上は緩和規定なし

5階以下の緩和規定

5階以下で次の3つに該当する場合は直通階段を1系統でよいという緩和規定があります。

①居室の合計が
100㎡以下
②バルコニー・屋外通路が
設けてあること
③屋外避難階段
特別避難階段

※6階以上に入居する場合は緩和規定がありませんので2系統の直通階段が必要になります。

三 次に掲げる用途に供する階でその階に客席、客室その他これらに類するものを有するもの(五階以下の階で、その階の居室の床面積の合計が百平方メートルを超えず、かつ、その階に避難上有効なバルコニー、屋外通路その他これらに類するもの及びその階から避難階又は地上に通ずる直通階段で第百二十三条第二項又は第三項の規定に適合するものが設けられているもの並びに避難階の直上階又は直下階である五階以下の階でその階の居室の床面積の合計が百平方メートルを超えないものを除く。)  

イ キャバレー、カフェー、ナイトクラブ又はバー  

ロ 個室付浴場業その他客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業を営む施設  

ハ ヌードスタジオその他これに類する興行場(劇場、映画館又は演芸場に該当するものを除く。)  

ニ 専ら異性を同伴する客の休憩の用に供する施設  

ホ 店舗型電話異性紹介営業その他これに類する営業を営む店舗

建築基準施行令第121条1の3

病院・診療所・児童福祉施設

診療所

構造 必要な階の要件 備考
主要構造部が
準耐火構造、又は
不燃材料

診療所の用途に供する階で
その階における病室の床面積
100㎡を超える
(101㎡以上)

児童福祉施設の用途に
供する階で、主たる用途に
供する居室の床面積
100㎡を超える
(101㎡以上)

6階以上
緩和規定なし
上記以外 上記と同様
50㎡を超える
(51㎡以上)
6階以上
緩和規定なし

四 病院若しくは診療所の用途に供する階でその階における病室の床面積の合計又は児童福祉施設等の用途に供する階でその階における児童福祉施設等の主たる用途に供する居室の床面積の合計が、それぞれ五十平方メートルを超えるもの  

建築基準施行令第121条1の4

※6階以上に入居する場合は緩和規定がありませんので2系統の直通階段が必要になります。

ホテル・旅館・下宿・共同住宅

共同住宅

構造 必要な階の要件 備考
主要構造部が
準耐火構造、又は
不燃材料

旅館・下宿に供する階で
客室・寝室の床面積の合計
200㎡を超える
(201㎡以上)

共同住宅に供する階で
居室の床面積の合計
200㎡を超える
(201㎡以上)

6階以上
緩和規定あり
上記以外 上記と同様
100㎡を超える
(101㎡以上)
6階以上
緩和規定あり

五 ホテル、旅館若しくは下宿の用途に供する階でその階における宿泊室の床面積の合計、共同住宅の用途に供する階でその階における居室の床面積の合計又は寄宿舎の用途に供する階でその階における寝室の床面積の合計が、それぞれ百平方メートルを超えるもの  

建築基準施行令第121条1の5

6階以上の緩和規定

①居室の合計が
100㎡以下
②バルコニー・屋外通路が
設けてあること
③屋外避難階段
特別避難階段

①②③全てが該当する場合は緩和

その他の用途

避難口の画像

構造 必要な階の要件 備考
主要構造部が
準耐火構造、又は
不燃材料

避難階の直上階
床面積400㎡を超える
(401㎡以上)

6階以上
緩和規定あり
上記以外 その他の階
床面積200㎡を超える
(201㎡以上)
6階以上
緩和規定あり

6階以上の緩和規定

①居室の合計が
100㎡以下
②バルコニー・屋外通路が
設けてあること
③屋外避難階段
特別避難階段

①②③全てが該当する場合は緩和

六 前各号に掲げる階以外の階で次のイ又はロに該当するもの

イ 六階以上の階でその階に居室を有するもの(第一号から第四号までに掲げる用途に供する階以外の階で、その階の居室の床面積の合計が百平方メートルを超えず、かつ、その階に避難上有効なバルコニー、屋外通路その他これらに類するもの及びその階から避難階又は地上に通ずる直通階段で第百二十三条第二項又は第三項の規定に適合するものが設けられているものを除く。)

ロ 五階以下の階でその階における居室の床面積の合計が避難階の直上階にあつては二百平方メートルを、その他の階にあつては百平方メートルを超えるもの

建築基準施行令第121条1の6

参考書

 

 

まとめ

  • 5階以下の階は、条件により設置する
  • 6階以上には原則2系統の直通階段が必用である
  • ホテル・下宿・共同住宅類、その他の施設には例外がある
  • キャバレー・ナイトクラブ類は5階以下の階で緩和規定がある
  • 病院・診療所・児童福祉施設類、ホテル・下宿・共同住宅類、又はその他の用途で準耐火構造又は不燃材料で施工されている場合は基準面積が倍読みとすることができる

参考:建築基準施行令 消防法の用途について

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