原状回復工事と消防設備の撤去・処置

原状回復工事と消防設備の撤去・処置
工事現場

テナントが退去するときに入居時の状態に戻すための工事を『原状回復工事』といいます。原状回復とは『元あった状態に戻す』という意味で消防設備についても行う必要があります。

自動火災報知設備、ガス漏れ、誘導灯、スプリンクラーなどは区画やレイアウトによって設置個数が変わってきます。原状回復工事の場合はこれらの消防設備について移設なり撤去工事が主になります。

主な返却の3パターン

消火器
  • そのままの状態で返す
  • 解体しスケルトンに戻してから返す
  • 軽量鉄骨などで天井、壁を組みボードを貼り返す

どのような形でオーナーに返すかは契約状況や話し合いにより決まることでしょう。原状回復工事をする場合は当然に消防設備も元あった状態に戻す必要があります。

原状回復工事では、すべて解体しスケルトンに戻したり、天井や壁のボードを貼り替え、間仕切りのない状態に戻すといった内容が一般的であります。

原状回復で消防設備の設置がある場合の注意点

工事現場2

原状回復工事は解体業者が行います。天井、壁、天井や壁を支える下地(軽量鉄骨や木)、電線などすべてのものを撤去します。

解体中はチリやほこりが舞っているため火災報知機が作動したり、電線を切ることで各種エラーが出てしまいます。そのようなことが起こらないよう事前に各種消防設備の撤去を行います。

解体前の各種設備と一般的な処置

消防設備 撤去の方法など
自動火災報知設備
ガス漏れ検知器
防火設備
感知器を外す
受信機や総合盤で電送を停止する
配線の処理
非常放送 スピーカーを撤去
カットリレー配線の撤去
配線の処理
スプリンクラー

SPヘッドを外しヤトイ菅を装着
天井に固定しているフレキを取り外す

フード消火 薬剤容器の電磁弁が作動しないように処置
起動装置・熱センサーの撤去
銅配管・制御盤の撤去

自動火災報知設備・ガス漏れ・防火設備などのセンサー類

センサー類は撤去、火災受信機からの電送を停止させておきます。感知器を撤去しても配線の電送が止まっていない状態では配線を切ったりすると火災信号が出てしまうためです。電送の停止は『火災受信機』『総合盤』でおこないます。

非常放送

非常放送設備は『スピーカー』『カットリレー』『アッテネーター』などの機器類が該当します。解体前にこれらの器具を撤去・処置します。スピーカー回路とアッテネーター回路は電気が流れているわけではないので配線を切ってもエラーが出るということはありません。※切った配線の銅線がショートしていた場合で放送設備を起動したときに『短絡エラー』や『放送アンプのヒューズ』がはじけることがあります。

B接点用のカットリレー配線は特に注意が必要になります。(通常DC24Vが通電)カットリレー用配線を切ったときにショートさせしてしまい、他の区画で制御している音響システムが停止するということがあります。カラオケボックスや個室ビデオボックスはカットリレーが働くと音響システムがダウンするように設計されており営業補償を求められることがあります。

スプリンクラー

スプリンクラーは天井を壊すときにSPヘッドに打撃が加わり水が出てしまうということがあります。そのための処置として『ヘッドを外してプラグ止め』『ヘッドにカバーをかける』などの処置が必要になります。

フード消火・自動消火装置

フード消火装置は火災受信機に接続され、装置が作動すると火災受信機に信号が送られる仕組みになっています。配線を切ると火災信号が出ることがあります。薬剤は厨房設備に応じた量で設置されているため水損ということにはなりにくいですが、薬剤を適切に処理する必要があるため解体前に撤去することが必要になります。

器具の再取り付け

定温式スポット

解体後はまずそれぞれの設備配線の1発目を探します。各種設備ごとの電圧や抵抗値が異なるので探していきます。そこから新た法令通り消防設備を設置していきます。

器具については『新品』の指定がなければ撤去したものが再利用できるので取っておきます。

まとめ

  • 解体前には消防設備を撤去
  • 処置をすることで発報・エラー、水損を防ぐ
  • 解体後は現況に合わせて設備を設置し警戒する
  • 法令通りの設置が必要になる

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