消防設備配線の絶縁抵抗試験について【自火報を例に説明します】

消防設備配線の絶縁抵抗試験について【自火報を例に説明します】

配線関連で言う絶縁とは配線内部の内部の伝導体(銅)が絶縁物(被覆)によってしっかり守られている状態をいいます。その反対は「漏電」です。

漏電を簡単に説明すると、配線被覆が何らかの理由で損傷し、内部の銅線が剥き出しになり建物の何処かの伝導体(金属部分)に触れ電気が逃げていくことをいいます。

もし自動火災報知機の回路電圧から電気が漏れてしまった場合は火災感知器が適切に作動しなくなります。火災報知器回路には常にDC24V程度の電圧がかかっています。煙感知器や半導体を使用した火災感知器は電気を利用することで働く仕組みになっているため、もし電圧が低下した場合は感知器が機能しなくなります。

そのため、配線の絶縁状態は非常に重要であり必ず良好な状態で維持させる必要があります。

漏電がおこると地面に電気が逃げていく

上の図は建物の中に自動火災報知機が設置されている状態を表しています。天井裏には火災感知器の配線があり煙感知器(Sマークの図)が接続されています。この配線回路の被覆が破け電線の心線(銅)が軽鉄に触れてしまい、電気が軽鉄から建物の鉄骨を伝い地面に流れていきます。

このようになると火災感知器回路が機能しなくなります。火災感知器には作動電圧の範囲が設定されています。日本初の火災報知器メーカーである「ホーチキ社」の一般的な製品を例にあげると、煙感知器は「15V~30V」、熱感知器が「8.5V~30V」で作動するように設計されています。

もし作動するために必要な電圧が低下してしまうと感知器が適切に作動しなくなり未警戒状態となってしまいます。そのために絶縁抵抗試験を行い配線の絶縁状態をチェックする必要があるのです。

絶縁試験の項目は通知282号配線に規定されている

絶縁抵抗試験は、消防用設備等の試験基準である「通知282号」に記載されています。この通知は各種消防設備の試験要領が書かれており、外観試験と、機能試験について分かれています。

その中で配線については「第28」に記載されており、絶縁試験の方法については次の引用文がそのまま書かれています。

電源回路、操作回路、 表示灯回路、 警報回路等の電圧電路について大地間及び 配線相互間の絶縁抵抗を絶縁抵抗計を用いて測定する。
ただし、 試験を行うこと により障害を与えるおそれのある電子部 品等を使用している回路においては省略 することができる。 なお、 この試験は、 他の法令に基づく 試験と兼ねて行うことができる。
消防予第282号第28配線「絶縁抵抗試験」

 

絶縁試験の対地間と線間

引用文にある「対地間および配線相互間の絶縁」とあります。今までの説明は対地間(電線~地面)での絶縁についての説明です。線間の絶縁は、例えば配線にビスがねじ込み配線の間で短絡(ショート)があった場合は絶縁が悪くなります。

天井の下地が木(絶縁体)で、天井材料を固定するためにコースレッドなどのビスで配線をもんでしまった場合、下地が木なので電気は対地に流れていきません。その場合は電線がショートしているので火災感知器が働いた状態と同じで火災信号を受信機に送ります。

回路がショートしているので受信機で復旧ボタンを押しても復旧することはなく火災信号を出し続けます。その場合は短絡箇所を探して配線を元通りにする必要があります。

絶縁抵抗試験は絶縁抵抗計(メガー)を使う 

弊社では昔から日置電機のローボルトメガーを使用しています。この計測器は電圧と絶縁抵抗値を図ることができます。計測の前に重要なことは「火災受信機の主電源を切る」ことと「バッテリーを外す」ことです。この2つは絶対に忘れてはいけません。

電源関連の処置が終わったら、機器黒線のワニ口クリップにアース端子を挟みます。赤線のラインを計測したい端子に接触させます。後はメガーの計測ボタンを押すことで絶縁抵抗数値を測ることができます。

計測するためにはいくつか注意事項があります。それは絶縁抵抗計の左下にある計測レンジを適切にする必要があります。基本的に火災受信機回路は弱電回路なので50V以下のレンジで使用します。

レンジの大小については、数値が大きいと計測精度が高くなりますが受信機や接続している機器を損傷するおそれがあります。一方、電圧が低いと計測の精度が低くなるおそれがあります。

自動火災報知機の回路は24V程度で使用されるので50Vで行いたいところですが、基盤や周辺機器類のことを考慮すると25Vレンジで行っている方が多いかと思います。

個人的には50Vでも問題ないと考えておりますが、絶縁が悪ければ25Vでも反応するのでとりあえず25Vで計測しています。※R型や半導体を使用した自火報設備の場合は注意が必要です。そのことは後の節で記載したいと思います。

計測のイメージ画像 ↓

画像の0.1MΩと書いている絵が絶縁抵抗計(メガー)です。絶縁抵抗計を火災受信機の黒(ワニ口クリップ)をアース部分にはさみ、赤線先端の金属部分に火災受信機の該当する端子に接触させる。これで試験ボタンを押せば計測できます。

自火報設備の計測数値 0.1MΩ以上

計測した数値が 0.1MΩ以上であれば合格となります。単位の呼び方は「メグオーム」と呼びます。最近では「メガオームと」言ったりするみたいです。省令の条文では「メガオーム」と書いてあります。

話を戻して、この数値は測定する回路の対地電圧により決められています。数値の根拠は「電気設備に関する技術基準を定める省令第58条」です。その条文を引用し記載します。

電気設備に関する技術基準を定める省令第58条

電気使用場所における使用電圧が低圧の電路の電線相互間及び電路と大地との間の絶縁抵抗は、開閉器又は過電流遮断器で区切ることのできる電路ごとに、次の表の上欄に掲げる電路の使用電圧の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる値以上でなければならない。

電路の使用電圧の区分 絶縁抵抗値
300V以下 対地電圧(接地式電路においては電線と大地との間の電圧、非接地式電路においては電線間の電圧をいう。以下同じ。)が150V以下の場合 0.1 MΩ
その他の場合 0.2 MΩ
300Vを超えるもの 0.4 MΩ

自動火災報知設備の回路は表で言うと「対地電圧が150V以下」に該当するため絶縁抵抗値が0.1MΩ以上あれば合格となります。

絶縁抵抗試験の例外規定

これまで絶縁抵抗試験について書いてきましたが、例外として試験を省略できる場合があります。どのような場合かというと「絶縁試験により機器類に障害を与えるおそれがあるとき」です。

例えばR型システムや半導体を多様に使用する自動火災報知設備の場合は絶縁抵抗試験により障害を起こす場合があります。このような場合は絶縁抵抗試験を実施することはできないので、下の通知文の但し書き以下の例外規定により検査を省略させています。

電源回路、操作回路、 表示灯回路、 警報回路等の電圧電路について大地間及び 配線相互間の絶縁抵抗を絶縁抵抗計を用いて測定する。
ただし、 試験を行うこと により障害を与えるおそれのある電子部 品等を使用している回路においては省略 することができる。 なお、 この試験は、 他の法令に基づく 試験と兼ねて行うことができる。
消防予第282号第28配線「絶縁抵抗試験」

まとめ

  • 絶縁測定前に主電源を落とす
  • 予備電源(バッテリー)を外す
  • アースにワニ口クリップ(黒)をはさむ
  • 絶縁抵抗計のレンジを計測したいレンジに合わせる
  • 試験ボタンを押す
  • 計測するラインにライン(赤い柄の棒)を接触させる
  • 測定値が 0.1MΩ以上であれば合格

といった流れになります。もし絶縁が悪い場合は不良箇所を探して処置する必要があります。探しても見つからない場合は線を引き換えてしまったほうが早いかもしれません。

参考:回路導通試験とはどのようなものか

Blogカテゴリの最新記事