津波の誘導灯、誘導標識を発見しました【沿岸の耐火構造建築物】

津波の誘導灯、誘導標識を発見しました【沿岸の耐火構造建築物】

少し前にとある場所に津波の誘導灯が設置されているという情報を入手しました。その場所とはインドネシアのバリ島、クタビーチにある商業施設です。

この建物は道路を挟んで目の前がクタビーチという立地に建っています。ビーチ下部から上部までの高さが約2メートルあり、そこから道路に出るための階段を1メートルほど下ります。そうなると道路の海抜は約1メートルということになります。その立地に3階建ての建築物があります。

津波の避難方法としては海抜の沿岸部から内陸方面に避難する「水平避難」建物の高い階に避難する垂直避難があります。クタビーチ周辺は海抜が低く、水平避難をする場合の避難経路となる道路が狭くかつ交通渋滞により円滑に避難できないことが想定されるため垂直方向の避難が非常に有効となります。

火災避難経路と津波避難経路

我々が使用する建築物の避難階は建築基準法施行令第13条第1項により「直接地上へ通ずる出入口のある階」と定義されています。火災、地震、その他何らかの理由で避難が必要なときは避難階段や避難器具類で速やかに地上へ避難する必要があります。

一方、津波の場合では水平方向に津波到達エリアを離れるか、垂直方向へ建物のより高い場所へ避難する必要がります。建物内部の垂直方向避難の場合避難経路は、火災時の経路と変わりませんが避難方向は全くの正反対になります。

この施設の津波避難ルートは各フロアから津波用避難階段(鉄扉)まで「津波用誘導灯」で誘導し、階段を登り最上階の広場である最終地点までのルートが形成されていました。この建物は敷地面積が大きく開放型の通路を持っていいることから下の階で火災が発生しても煙が外に抜けていく構造のためこのような津波用の避難経路が成立するのかと考えております。

私的に日本の建物にもこのような垂直方向に避難のための誘導標識くらいはあっても良いのではと思っております。

地震、火災、津波の避難場所

クタビーチに面するレギャン通りに避難誘導のサインが設置されていました。ピクトグラムは非常にわかりやすく、特に津波のサインが青なので津波警報を発せられたらすぐに行動に移せそうな印象です。地震と火災はビーチ方面に避難誘導を行っており、津波は建物の上階へ誘導することがわかります。

インドネシアの津波警報は、ドイツ・インドネシア共同インド洋津波早期警報システム(GITEWS)により行われます。GITEWSホームページ資料によると、地震発生から5分以内に警報が発せられ、津波警報が発せられてあと20分から80分で津波が到来すると。

日本の津波誘導標識

日本の津波標識は主に屋外の設置を対象とされており、津波の危険性があるエリアで使用されています。自分が調べた範囲では建物内を対象とする津波誘導標識類の設置例は確認ができませんでした。

津波誘導標識について一般社団法人日本標識工業会によって独自のガイドラインが公開されていますので簡単にまとめてみました。

ガイドラインのまとめ
2004年のスマトラ沖地震および2011年東日本大震災によって多くの犠牲者を出したことを教訓として、2013年6月に災害対策基本法が改正されました。

この改正によって、市町村長が指定緊急避難場所、指定避難所を事前に指定する制度が導入され2014年4月から施行されました。この事により各地区で指定避難場所の手続きが進められ、津波対策の一環として、津波標識の設置が検討されました。

津波の危険地域や避難経路、避難場所を示し、JIS規格に基づいて図記号が使用されています。しかしながら、標識に記載される情報、内容や表示方法に統一性が欠けており、矢印の形状や色、避難場所までの距離表示、外国語の併記などが一貫していないのが現状です。

標識の効果を最大限に発揮するためには図記号や表示内容の統一が重要になります。津波標識に使用される図記号は、国際規格であるISO 20712-1にも登録されており、国内、国外で共通の認識を持つことが求められています。

また、夜間や停電時でも視認できるように、蓄光機能や反射機能を持つ標識の設置が推奨されています。このことにより災害時にパニックに陥った人々が迅速安全に避難できるよう支援することが期待されています。

さらに、津波標識に使用する材料や設置場所についても詳細に検討されており、アルミニウム合金や鋼板、合成樹脂板などの耐久性や強度を考慮した基板材の使用が推奨されています。標識の設置にあたっては、見やすさや安全性に配慮した配置が求められ、津波避難誘導標識システムとして効果的に機能することを目標としています。

参考論文:津波防災のための標識デザインが持つべき共通性と独自性

参考記事:首相官邸(津波では、どのような災害が起こるのか)

参考記事:A級誘導灯を設置する場合について

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