エレベータシャフト内の火災感知器点検

2019.10.19

自動火災報知設備が必要な建物にはトイレなど一部の部分を除きすべての場所に火災感知器を設置しなければなりません。エレベーターのかごが収まっている区画のてっぺんには法令の規定により煙感知器を設置します。

6ヶ月に1度行う消防設備点検では火災感知器を検査します。エレベーター最上部にはエレベーター機械室というエレベーターの制御を行う小部屋があり、かごを上下させるワイヤーやモーターが設置されています。

エレベーター用の煙感知器は通常この機械室に設置されますが、油圧式のエレベーターを採用している建物では機械室が地上階にあったりします。このような場合煙感知器は機械室ではなくエレベータ区画の上部に取り付けてあり、外部から点検ができるように小窓が設置されています。小窓を開け感知機器を取り出し点検をすることができます。

エレベータシャフトと火災感知器

エレベータのかごが収まっている空間を「エレベーターシャフト」と呼び、この区画を「竪穴区画」といいます。

竪穴区画は建物の縦方向の区画を指し、例えば1階で煙が発生したらその煙が縦方向に広がっていきます。火や煙を止めるためには縦から横に行くルートを断つ必要があり、原則竪穴区画では縦方向の空洞がある場合はその空洞に面した扉は防火区画をすることになっています。

竪穴区画の上部には火災感知器設置を設置しますがこの感知器の種類は煙感知器を設置しなければなりません。この感知器の設置基準は消防法施行規則第23条5項に記載され、階段、傾斜路、エレベーターシャフト、リネンシュート、パイプダクトには煙感知器を設置することになります。

令第二十一条第一項(第十二号を除く。)に掲げる防火対象物又はその部分のうち、第一号及び第三号に掲げる場所にあつては煙感知器を、第二号及び第三号の二に掲げる場所にあつては煙感知器又は熱煙複合式スポット型感知器を、第四号に掲げる場所にあつては煙感知器又は炎感知器を、第五号に掲げる場所にあつては炎感知器を、第六号に掲げる場所にあつては煙感知器、熱煙複合式スポット型感知器又は炎感知器を設けなければならない。

一 階段及び傾斜路

二 廊下及び通路(令別表第一(一)項から(六)項まで、(九)項、(十二)項、(十五)項、(十六)項イ、(十六の二)項及び(十六の三)項に掲げる防火対象物の部分に限る。)

三 エレベーターの昇降路、リネンシュート、パイプダクトその他これらに類するもの

消防法施行規則23条5項

エレベーターシャフトの開口部は防火遮煙性能が必要

特定防火設備のエレベーター扉
エレベータの扉は国土交通大臣認定の防火設備

エレベータシャフトの開口部には防火性能のある防火設備が必要になります。エレベターシャフトのような竪穴区画は火災時の煙突効果によって煙が建物内に広がっていきます。そのため竪穴区画自体を防火区画として、竪穴区画の開口部に防火設備を設置します。また、開口部には遮煙性能も必要となります。

2002年の建築基準法令改正によりエレベーター開口部に遮煙性能が義務付けられました。近年ではエレベータの扉自体に遮煙性能がある国土交通大臣の認定品が製造されています。この製品を使用すればエレベーターの開口部に防火遮煙性能がみとめられるよになりました。

エレベーターシャフト内の自動火災報知設備

エレベーターシャフトの煙感知器
最上階のシャフト部にある点検小窓
内部には煙感知器が収納されている

エレベータシャフトは点検員以外の人間が入ることが困難です。そのため最上階のエレベータシャフト付近または天井点検口を開けた位置に点検小窓が設置されています。小窓を開けると煙感知器が収納されており発報試験を簡単に行うことができます。

まれに特定一階段等防火対象物などの既存改修工事で後付ができなかった場合などは小窓を設置せずシャフト内部にそのまま設置されていたりします。そのような場合はエレベータの点検日にあわせて実施したりします。

毎回エレベータ点検時に合わせることが大変なので遠隔試験用の中継機を設置し中継機からエレベータシャフトに専用の煙感知器を設置することでこの竪穴部分のみを遠隔試験対応型とすることも可能です。この場合は遠隔試験に対応した火災受信機が設置されている必要があるのでご注意願います。

火災時エレベーターは使用してはいけません

エレベーター休止中
火災や地震発生時に安全に停止する機能

火災時は階段を使って避難をします。エレベーターシャフト内部には酸素が多く存在しています。エレベーターシャフト近くで火災があり可燃性ガスである一酸化炭素(不完全燃焼)がたまっているとき、シャフト内部の酸素と結びつくことでバックドラフトという大爆発を起こします。エレベータシャフト内部は爆発により大惨事となります。

このようなことがあるため火災時にエレベータを使用して避難することは大変危険です。近年のエレベータでは火災が発生すると同時にエレベータ停止する仕組みになっています。また、避難階まで自動的に移動してからシステムが停止たしります。

非常用エレベータ

話が若干それますが、非常用エレベーターは高さ31mを超える建築物に設置されています。このエレベータは消防隊が救助活動に使用する設計となっています。

このエレベーターの設置基準である31mはどこからきているかというと、はしご車が届く限界が31mとされています。なので31mを超える建築物では非常用エレベーターを設置する決まりになっています。

非常用エレベーターは通常のエレベーターとは別に専用の防火区画がなされ、予備電源として自家発電装置が使用されます。

参考記事:防火ダンパーが動かない!レリーズの不作動について

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