スプリンクラ設備とスプリンクラーヘッドの設置を省略できる場所について
スプリンクラー設備は火災により熱を受けることによって分解したスプリンクラーヘッドから自動的に放水をすることができる設備です。スプリンクラー設備は自動消火機能を有するため合理的かつ安全に消火活動を行うことができます。
非常に合理的な設備であることは明白ですが全ての部分においてスプリンクラーヘッドを設置することまでは求められていません。例えば「安全な場所」にはヘッドを設けてもあまり効果が期待できません。また「電気室、機械室」は水による消火が適しません。このような場所にもスプリンクラーヘッドを設けなくてよいことになっています。
ヘッドの省略ができる部分については消防法施行規則13条3項1~12号に明文化されています。今回はこの条文を基にSPヘッドが省略できる部分について触れていきたいと思います。
SPヘッド作動と設置根拠
SPヘッドの作動温度と原理について
スプリンクラーヘッド(SPヘッド)は通常天井や壁に設置されており、火災が発生したときの熱がスプリンクラーヘッドに伝わり一定の温度で作動する仕組みです。スプリンクラーが作動する温度は設置する場所によって異なり、一般的な居室では「72℃」、厨房などの多少温度が高くなる場所は「98℃」、サウナ等高温の場所では「139℃」など様々です。
作動原理は非常にシンプルで、ヘッド内部に温度で溶ける機構が設けられており、一定の温度が加わったときに金属が分解し放水を開始するといったものです。原理については別の記事(動画あり)に書いていますのでよろしければご参照ください。
スプリンクラーヘッド設置についての根拠条文
スプリンクラーヘッドは、前項第二号に掲げる防火対象物にあつては舞台部に、同項第八号に掲げる防火対象物にあつては指定可燃物(可燃性液体類に係るものを除く。)を貯蔵し、又は取り扱う部分に、同項第一号、第三号、第四号、第六号、第七号及び第九号から第十二号までに掲げる防火対象物にあつては総務省令で定める部分に、それぞれ設けること。
消防法施行令第12条2項1号
スプリンクラーヘッドを設置するときの法的根拠は消防法施行令第12条2項1号の条文となります。細かい内容が書かれていますが、施行令12条2項1号以外の場所については総務省令(消防法施行規則)に委任しています。
話がそれますが、細かい内容を下位に委任する理由は、法令改正の手続きが上位法令と比較して容易となるためです。総務省令の改正は総務大臣が行うことができるので消防法や消防法施行令と比較するとかなり簡単な手続きによって行うことができます。
話を戻し、その委任されたスプリンクラー設置の根拠となる条文は施行規則13条3項1~12号になります。1項に後半に「以外の部分」と書いてあるので条文に書いている部分についてはスプリンクラーヘッドを設置する必要がないということになります。引用した条文を記します。
令第十二条第二項第一号の総務省令で定める部分は、次の各号に掲げる部分以外の部分とする。
一 階段(令別表第一(二)項、(四)項及び(十六の二)項に掲げる防火対象物並びに同表(十六)項イに掲げる防火対象物のうち同表(二)項及び(四)項に掲げる防火対象物の用途に供される部分に設けられるものにあつては、建築基準法施行令第百二十三条に規定する避難階段又は特別避難階段(第二十六条において「避難階段又は特別避難階段」という。)に限る。)、浴室、便所その他これらに類する場所
二 通信機器室、電子計算機器室、電子顕微鏡室その他これらに類する室
三 エレベーターの機械室、機械換気設備の機械室その他これらに類する室
四 発電機、変圧器その他これらに類する電気設備が設置されている場所
四 発電機、変圧器その他これらに類する電気設備が設置されている場所
五 エレベーターの昇降路、リネンシュート、パイプダクトその他これらに類
六 直接外気に開放されている廊下その他外部の気流が流通する場所する部分
六 直接外気に開放されている廊下その他外部の気流が流通する場所
七 手術室、分娩べん室、内視鏡検査室、人工血液透析室、麻酔室、重症患者集中治療看護室その他これらに類する室
八 レントゲン室等放射線源を使用し、貯蔵し、又は廃棄する室
九 令別表第一(一)項に掲げる防火対象物並びに同表(十六)項イ及び(十六の三)項に掲げる防火対象物のうち同表(一)項の用途に供される部分(固定式のいす席を設ける部分に限る。)でスプリンクラーヘッドの取付け面(スプリンクラーヘッドを取り付ける天井の室内に面する部分又は上階の床若しくは屋根の下面をいう。次条において同じ。)の高さが八メートル以上である場所
九の二 令別表第一(六)項イ(1)及び(2)並びにロに掲げる防火対象物並びに同表(十六)項イ、(十六の二)項及び(十六の三)項に掲げる防火対象物のうち同表(六)項イ(1)若しくは(2)又はロの用途に供される部分(当該防火対象物又はその部分の基準面積が千平方メートル未満のものに限る。)の廊下(第六号に掲げるものを除く。)、収納設備(その床面積が二平方メートル未満であるものに限る。)、脱衣所その他これらに類する場所
十 令別表第一(十六)項イに掲げる防火対象物で同表(十)項に掲げる防火対象物の用途に供される部分のうち、乗降場並びにこれに通ずる階段及び通路
十の二 令別表第一(十六の三)項に掲げる防火対象物の地下道で、通行の用に供される部分
る。)、同条第一項第四号及び第十号の防火対象物並びに同項第十二号の防火対象物(令別表第一(十六)項ロに掲げるものに限る。)の階(地階又は無窓階を除く。)の部分(令別表第一(五)項ロに掲げる防火対象物の用途に供される部分を除く。)で、前項第一号(令第十二条第一項第三号の防火対象物(令別表第一(十六)項イに掲げるものに限る。)のうち、同表(一)項から(六)項まで又は(九)項イに掲げる防火対象物の用途に供される部分が存しない十階以下の階に適用する場合にあつては、前項第一号ニ中「二百平方メートル」とあるのは、「四百平方メートル」と読み替えるものとする。)又は第二号に該当するもの
十二 主要構造部を耐火構造とした令別表第一(十六)項イに掲げる防火対象物(地階を除く階数が十一以上のものを除く。)の階(地階及び無窓階を除く。)の同表(七)項、(八)項、(九)項ロ又は(十)項から(十五)項までに掲げる防火対象物の用途に供される部分のうち、これらの用途に供される部分以外の部分と耐火構造の壁及び床で区画された部分で、次のイ及びロに該当するもの
イ 区画する壁及び床の開口部の面積の合計が八平方メートル以下であり、かつ、一の開口部の面積が四平方メートル以下であること。
ロ イの開口部には、前項第一号ハに定める特定防火設備である防火戸を設けたものであること。
施行規則13条3項1~12
ここに書かれている場所についてはスプリンクラーヘッドを設けなくてよいことになります。よく考えてみると安全な場所に消火設備を設けても効果が期待できないし、機械室関連では消火活動で使用する水が消火上適さないし、手術室や分娩室などの場所は衛生的に問題があることはなんとなくですが想像できるのではないでしょうか。
スプリンクラーヘッドを省略できても補助散水栓は必要
スプリンクラー設備の配管に直結されている消火栓設備を補助散水栓と呼びます。スプリンクラーヘッドが設置されていない場所については補助散水栓によって警戒することになります。補助散水栓は屋内消火栓とよく似た設備です。違いはスプリンクラー配管に接続されているか、消火栓専用の配管に接続されているかです。
補助散水栓は水平距離が15mに1基、設置することになります。ヘッドを設けなかった部分についてはこの水平距離で包含できるように設置する必要があります。この根拠は消防法施行規則13条の6、4項1号に記載されています。補助散水栓については別記事にかいていますのでよろしければご参照いただけますと幸いです。
参考記事:補助散水栓の設置について