社会福祉施設の設置に伴う消防用設備を設置してきた!(自火報、誘導灯、避難器具、非常灯)

社会福祉施設の設置に伴う消防用設備を設置してきた!(自火報、誘導灯、避難器具、非常灯)

今回は就労支援活動を行っている法人様より自動火災報知設備と避難器具設置の依頼があり新規に設置工事を行いました。就労支援施設は消防法令でいう「6項ハ」に該当します。6項は福祉関連施設でその中での詳細を「イ、ロ、ハ」という具合に分類していきます。

6項は消防法令の中で最も厳しい規制が適用されます。理由は福祉関連施設を利用する方は障害者、高齢者あるいは体が思うように動かせなく自力による避難が困難である場合がおおく想定できるためです。

過去に起こった火災で有名なので「長崎県大村市グループホーム火災」があります。この施設は平屋で延べ面積が279.1㎡と小規模の施設でしたが死者7名を出してしましました。この火災がきっかけで高齢者グループホームのスプリンクラー設置義務が1,000㎡以上から275㎡以上に引き下げられました。その他の福祉施設の火災で「群馬県渋川市老人ホーム火災」「札幌市グループホーム火災」があります。

福祉関連施設はその他の施設と比較して火災被害が大きくなることを想定できるため消防設備の設置基準が通常のものよりかなり厳し目に規制されています。消防設備設置基準以外に防火管理関連(防火管理者の選任)の規制も厳し目に設定されています。

その他の用途については別記事をご参照ください。

消防設備設置に至った経緯について

既存の建物に設備を新規に設置するということは今までは必要がなかったということになります。簡単に新規に消防設備が必要になる条件は「建物に入居する用途が規制が厳しい用途に変わった」「建物の面積が増えた」「収容人数が増えた」「地下または3階以上に不特定多数が出入りする用途が入った」のどれかです。

今回のケースは延べ面積が350ほどの共同住宅(5項ロ 非特定用途)の一部分に福祉施設が入居することになりました。共同住宅の自動火災報知設備の設置基準は500㎡のため既存の建物の状態では設置が不必要でした。今回新たに社会福祉施設が入居することにより「特定用途複合防火対象物(16項イ 特定用途複合)」に変化しました。複合用途の自動火災報知設備設置基準は300㎡のため今までは未設置でOKだった設備が義務化されることになります。

自動火災報知設備とは別に避難器具の設置も必要になりました。避難器具の設置基準は福祉施設の場合は20人以上(その階の人数)で必要になります。今までは共同住宅だったので30人(その階の人数)で良かったのですが福祉施設の入居となる場合は30人→20人と規制が厳しくなります。
※避難器具の設置は下の階に飲食がある場合などは更に厳しくなるので原則の規定で記載しております。

避難器具の設置基準は別記事で記載しております。

設置工事前の基礎設計と消防署打ち合わせ

消防設備は自分勝手に設置することができず必ず法令に則った手続きを経て行う必要があります。自動火災報知設備を設置する場合は「着工届」を工事に着手する10日前までに届け出を行う必要があります。この届け出の趣旨は我々のような設備業者が設計した内容について管轄消防署が法令に適合しているかを審査し、法令に適合しない設置工事を行った場合のやり直しにかかる時間、材料などの経済的コストを最小化する目的があります。

法令に適合していない場合は審査期間の10日の間に消防署から設計変更の連絡や、ココはこうしてほうしい等の行政指導があります。また工事に着手する10日前の工事は「受信機や感知器を設置する日」であり「配線をする日」は含まれないため機器類の設置場所などについて熟知している業者は着工届を届け出る前に配線工事を行うことがあります。

更には消防設備は人命を守る性質上、未設置物件で設置が急がれる場合には消防署と相談の上10日を待たずに着工できる場合はあります。例えば、消防設備が急に故障してしまった時、消防設備を設置する命令が出ている時、違反物件としてHPに公表されているなどがあります。これらは直ちに設置する義務があるためです。

自火報、誘導灯、非常灯配線工事について

今回依頼いただいた電気系設備は自動火災報知設備、誘導灯、非常灯の3種類です。非常灯は建築基準法令による設置基準に則り設置していきます。建築基準法令なので消防署は管轄外の設備のため届出も消防検査もありません。

先に着工届についての記載をしたとおり届出に記載した場所付近に配線を持っていきます。既存の物件に設備工事をしていくため実際に現場へ行ってみないとわからないことが多く、作業のほぼすべてが現場合わせで行っていきます。当然図面で設計した通りにはならないので完了後の届出「設置届」で内容を修正します。

弊社は隠蔽配線を売りにしているため可能な限り配線を埋め込んで施工していきます。壁や天井が駆体で仕上がっている場合は埋め込むことは不可能なので保護モールなどの部材を活用し見栄えがすこしでもよくなるように工夫しながら施工します。

上画像の手前は隠蔽で配線し熱感知器(差動式スポット型)を設置しています。奥に見える総合版(ベル、ランブ、発信器が収納している箱)の配線がALC壁のため埋め込めずMKダクトによる配線となりました。駆体に穴をあけたり掘ったるすることもできますが、駆体壁は防火区画を形成していたり、建物自体が壁構造で建築されているものがあるので注意が必要になります。

非常灯の設置は建築基準法令に基づくことを節のはじめに記載しました。テーマは違いますが過去に非常灯に触れた記事を書いているのでよろしければご参照ください。

避難器具の設置と福祉施設特有の注意点

避難器具の設置基準は原則的に階の収容人数で決まります。福祉施設の場合は20人以上で設置義務となります。※特定一階段等防火対象物を除く。

今回の物件では入居する階の収容人数が20人以上になるので避難器具の設置が確定しました。次に使用する避難器具を選定していきます。避難器具は「避難ロープ」「吊り下げはしご」「避難ハッチ」「緩降機 かんこうき」「滑り台」「救助袋」「避難橋」などがあります。

避難ロープや吊り下げはしごは比較的安価で入手でき工事代金も他の避難器具よりは設置が容易です。この安価に設置できる避難器具には次の制限があります。

避難ロープ 2階まで
吊り下げはしご 3階まで

これらの避難器具は高い階では安全かつ安定的に避難することが見込めず低層階でのみ使用することが認められています。吊り下げはしごをイメージすると「ビル最上階から泥棒がヘリコプターで逃げるときに使うようなはしご」です。吊り下げはしごを3階のベランダや腰壁から避難階まで吊り下げ降りていきます。

福祉施設の場合は用途の性質上使用できるはしごに制限が加えられ通常より規制が厳しくなり、3階で吊り下げはしごが使用できません。滑り台、救助袋、緩降機、避難橋のどれかから選択する必要があります。この中で物件に合わせた器具を選択すると今回の場合は「緩降機」となりました。

緩降機は滑り台、救助袋、避難橋よりも設置が容易で費用がかかりません。また着用具という体に巻き付けて着用するリングがガッチリ体に食い込み降下していく避難器具のため安全に避難階に到達することができる設備です。

6階以上 滑り台・救助袋・避難橋
4  階
5  階
滑り台・救助袋・緩降機・避難橋
3  階 滑り台・救助袋・緩降機・避難橋
2  階

滑り台・避難はしご(吊り下げ)・救助袋・
緩降機・避難橋・避難用タラップ

1  階 不要
地  下 避難はしご・避難用タラップ

ということで緩降機を設置させていただきました。
今回の物件は鉄骨造のALC構造のため壁や床にアンカーを打つことができませんでした。ALC用のアンカーはありますが緩降機(避難器具全般)を取り付けるための強度を確保できるとは言いいにくいものがあります。

ALCに避難器具を取り付ける場合は「鉄骨に溶接する」「ALC壁の両サイドを鉄板などで挟み込む」「コンクリートデッキ床にアンカーを打ち込む」「床の上下で鉄板などを挟み込む」などの工法により行います。今回はいい場所に鉄骨があったので溶接工法により施工しました。

あとがき

今回は記事に記載したとおり福祉施設に消防設備を設置してきましたがもし設備についてのごご相談がございましたらご連絡お待ちしております。

参考:消防法施行規則

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