非常放送のスピーカーの設置基準について【設置が必要な場所と省略できる場所】

非常放送のスピーカーの設置基準について【設置が必要な場所と省略できる場所】

非常放送工事

非常放送スピーカーの確実に聞こえるように設置するために

非常放送スピーカーの役割

非常放送スピーカーの設置方法については、消防法施行規則第25条の2項3号ロ、ハに明文化されいます。取り付け方については消防設備の参考書や放送設備会社のカタログで簡単な解説が記載されていますが、せっかくなので今回は条文を基にした設置基準について説明していきたいと思います。

非常放送は単なる音声案内放送を目的として設置される場合と、自動火災報知設備の非常ベル機能を兼ねて設置する場合があります。非常警報設備はある程度大きめの施設に設置される設備です。大きい建物では非常ゴングベルによる火災の周知よりも音声による周知が向いています。音声放送を行うことで「どこで火災が発生した」などの情報を周知させ避難誘導を行うことができます。自動火災報知設備と放送設備を連動させることでより安全な避難誘導が可能となっています。
参考記事:自動火災報知設備と非常放送の働き(動画説明あり)

音声警報や避難誘導を確実に在館者に届けるために消防法によりスピーカーの設置基準が設けられています。内容を聞き漏らしたり、聞き取れないまたは、放送自体に気付かないと人命に危機が生じる恐れがあります。そのためにはしっかりと基準に則った方法により設置することが必要です。

スピーカー設置基準の根拠について

消防法施行規則第25条の2項3号ロ、ハ

(ロ) スピーカーは、階段又は傾斜路以外の場所に設置する場合、放送区域ごとに、当該放送区域の各部分から一のスピーカーまでの水平距離が十メートル以下となるように設けること。ただし、居室及び居室から地上に通じる主たる廊下その他の通路にあつては六平方メートル以下、その他の部分にあつては三十平方メートル以下の放送区域については、当該放送区域の各部分から隣接する他の放送区域に設置されたスピーカーまでの水平距離が八メートル以下となるように設けられているときは、スピーカーを設けないことができるものとす。

(ハ) スピーカーは、階段又は傾斜路に設置する場合、垂直距離十五メートルにつきL級のものを一個以上設けること。

消防法施行規則第25条の2項3号ロ

非常放送スピーカーの設置基準は「そのフロアごとに設置する」水平系統と「階段、エスカレーター」などの縦系統の設置基準があります。その他の基準に「スピーカー音圧に関する規定」があります。非常放送用スピーカーは性能の良い順にL級、M級、S級の設定があります。設置場所によりどの等級を使用する等の規定がありますが、現行でほぼすべてが一番性能の良いL級が使われていることから、音圧の大きさに関する規定を除外して設置方法についての設置基準に触れていきます。

(ロ・原則)水平区画のスピーカー設置基準

ロ) スピーカーは、階段又は傾斜路以外の場所に設置する場合、放送区域ごとに、当該放送区域の各部分から一のスピーカーまでの水平距離が十メートル以下となるように設けること。ただし、居室及び居室から地上に通じる主たる廊下その他の通路にあつては六平方メートル以下、その他の部分にあつては三十平方メートル以下の放送区域については、当該放送区域の各部分から隣接する他の放送区域に設置されたスピーカーまでの水平距離が八メートル以下となるように設けられているときは、スピーカーを設けないことができるものとす。

消防法施行規則第25条の2項3号ロ

(ロ)は階段、エスカレーター、スロープ以外の場所に設置する場合の規定が書かれて言います。これは居室関連を指しており、水平系統を設計する場合はこの条文どおり設置していくことになります。

スピーカーをどのように設置するのか?

原則
・各部からスピーカーまでの水平距離が10メートル以下
【スピーカーを中心とした半径が10メートル以下となるように、居室の各場所がスッポリ漏れなく入るように設置するということです。図面上で半径10mの円を書いて間仕切りを除いたすべての部分が包含できている必要があります。】

例外
・居室、居室から地上に通じる主たる廊下その他の通路は6㎡以下、その他の部分は30㎡以下の場合は他に設置されているスピーカーからの水平距離が8メートル以下となるように設置できる。
【居室から地上に通じる主たる廊下その他の通路が6㎡以下、その他の場所が30㎡以下でれば、【原則】に書いた部分に設置したスピーカーからの半径が8m以下であれば、この部分の設置は省略できる。】

言葉ではわかりにくいので図にしていきます。
原則は単純にスピーカーから半径が10mとなるように設置していけばよいのです。円を居室や通路、廊下に当てはめると下のような図になります。

スピーカーを中心とした半径10mの円を各居室ごとに届かない場所がないように当てはめます。このように設置すれば法令に適合した正規の設置方法になります。もし居室の角がギリギリ入らない場合はスピーカーの配置を変更するか、スピーカーを1台増設して再度円がしっかりとはまるように設置する必要があります。余裕を持って設置することをおすすめいたします。

(ロ・例外規定)スピーカーの設置を省略できる部分

ただし、居室及び居室から地上に通じる主たる廊下その他の通路にあつては六平方メートル以下、その他の部分にあつては三十平方メートル以下の放送区域については、当該放送区域の各部分から隣接する他の放送区域に設置されたスピーカーまでの水平距離が八メートル以下となるように設けられているときは、スピーカーを設けないことができるものとす。

25条の2項3号ロのただし書き

25条の2項3号ロのただし書きにスピーカーを省略できる場所についての記載があるります。居室から地上に通じる主たる廊下その他の通路はその面積が6㎡以下、その他の場所については30㎡以下であればすでに設置されているスピーカーからの半径が8m以下で包含されていれば省略できることになります。

参考書、放送メーカーのカタログでは「応接室」や「リネン室」と書かれていることがあります。応接室は居室になるため6㎡以下、リネン室は居室ではなく、条文で言う「その他の場所」と見られるため30㎡以下で省略になります。

(ハ)階段、傾斜路にスピーカーを取り付ける基準

(ハ)スピーカーは、階段又は傾斜路に設置する場合、垂直距離十五メートルにつきL級のものを一個以上設けること。

消防法施行規則第25条の2項3号(ハ)

階段や傾斜路は竪穴区画として扱われ、階ごとで警戒する水平警戒ではなく、垂直方向で警戒区域を設定します。条文を見ると垂直距離が15mに1個非常スピーカーを設置する必要があると書かれています。仮に、1階あたり約3mとすると、1階と5階に設置すればよいことになります。

話がそれますが、竪穴区画には自動火災報知設備の煙感知器を設置する必要があります。この設置基準も非常用スピーカーと同様15mに1個設置する必要があります(特定一階段等防火対象物は7.5mに1個)。

音響を確実に聞こえるようにするための「カットリレー」

非常放送時に施設内に流れているBGMが鳴っていると非常放送の内容が聞こえにくくなります。内容を聞き取れず避難に障害があるおそれがあるため、その問題解決手段として「カットリレー」が使用されます。

カットリレーは、施設内部で使用されているBGMや、カラオケ店舗の機器類、個室ビデオの場合はTVモニターなどの機器を強制的に遮断する装置です。非常放送制御装置が非常放送モードに切り替わると同時に各施設の音響装置が遮断、強制停止させます。

各音響装置が遮断されれば非常放送の内容を明確に聞き取ることができます。迅速確実に施設内の方々へ情報を共有することが可能になります。

カットリレーは主に100Vが遮断されるタイプが設けられますが、大容量のアンプの場合、アンプ自体に非常遮断端子が設けられておりその部分に直接接続することでカットリレー回路を形成することができます。

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