💡 この記事の要点
- カットリレーとは:非常放送時に店舗等のBGM音響を自動遮断し、避難警報を聞き取りやすくする消防法上の必須設備。
- 配線方式の2パターン:「非常時通電」と「常時通電」があり、特に常時通電の施工事故リスクが高い。
- 施工時の注意点:常時通電線をショートさせると非常放送アンプのヒューズが飛び、音響が止まって損害賠償に発展する恐れがある。
- トラブル復旧方法:放送設備の復旧操作で直らない場合は、アンプ内の「カットリレー用ヒューズ」の断線を確認する。
カットリレーとは、非常放送が流れたときに店舗内のBGMなどで重要な放送が聞こえにくくならないよう設置するリレーのことです。 言い方を変えると、テナント内の音響装置を強制的に遮断(カット)するための仕組みです。
これは「BGMなどの音と区別して警報音響をはっきり聞き取れるようにする」という目的があるため、しっかりと施工する必要があります。 また、消防検査でも必ず確認される重要なポイントですので、仕組みを正しく理解したうえで確実な施工が求められます。
カットリレーの仕組み

非常放送が起動すると、カットリレー用のコンセントへ信号が送られます。この信号によってコンセントへ流れている100Vが0Vになり、BGM等に使用している音響装置の電源が自動でOFFになります。
電源が切れれば当然BGMも停止します。非常にシンプルな仕組みですが非常放送設備が起動した際には、このようなリレーを確実に働かせる施工が必要不可欠です。
カットリレー用のコンセントを見てみる
TOA社のカットリレーを開けてみます。これがカットリレー本体になります。コンセントは通常時にAC100Vが通電されますが、非常時には100Vの電圧が0Vになる仕組みです。カットリレー本体の裏面には電線をつなぐ端子が設けられています。
カットリレーの裏側には、AC100Vにつなぐ端子とDC24Vにつなぐ端子がついています。AC100V側の端子には、分電盤や近くのコンセントから引き込んできた電源線が入ります。
一方、DC24V側の端子には、非常放送アンプから伸びている信号線をつなぎます。非常放送アンプ側でDC24Vの制御(切り替え)が行われることで、カットリレー側でAC100Vの電源が入ったり切れたりする仕組みです。
カットリレーには2パターンがある
非常放送が作動したときに、カットリレーへDC24Vの供給が遮断し100Vがオフになる仕組みについて解説してきました。実はカットリレーにはもうひとつの別パターンがあり「非常時にDC24Vが送られて。100Vが遮断する」タイプも存在します。
どちらも「非常時にBGMを止める」という目的や仕組みは同じなのですが、現場での施工や運用においてはまったく別物と言えるほど違いがあります。 なぜそこまで違うのか、その理由について詳しく解説していきます。
常に24Vを供給しているカットリレー工事は要注意

通常時にDC24Vが流れているカットリレーの施工では、特に注意して作業を行う必要があります。作業中に誤ってDC24Vの配線(2芯)をショートさせてしまった場合、非常放送アンプ内部のヒューズが飛び、24Vあった電圧が0Vに落ちてしまいます。アンプ側のヒューズが飛んでしまうと建物全体のカットリレーが働くことになり、全館で音響がならなくなる恐れがあります。
カラオケ店舗やビデオボックスなど音響設備を使用する形態の用途で突然に音響が停止することになります。最悪の場合は営業補償や損害賠償問題に発展する可能性もありますので、常時24Vを供給するカットリレーを扱う際は、慎重な施工が求められます。
カットリレーが作動した場合の復旧方法
カットリレーは、非常放送設備の「復旧ボタン」を押せば、連動して自動的に電源が復旧する仕組みになっています。しかし、放送設備で復旧操作を行っても、音が戻らないケースがあります。
その場合、復旧していないエリアの近くに「個別の復旧スイッチ」が設けられていることがあるため、そちらを探して解除操作を行ってみてください(※以前の古い設備で見られた構造で、現在ではあまり見かけることがなくなりました)。
工事をする前に
施工時には、まず非常放送アンプのフタを開けてカットリレー端子の場所を確認します。その上で、その設備が「通常時から常に24Vが通電しているタイプ」「非常時だけ24Vが通電するタイプ」を事前に確認してから作業を行います。
もし施工完了後にカットリレーが作動しない場合は、アンプ内部にある「カットリレー用のヒューズ」が飛んでいる可能性があります。このヒューズは、作業中にDC24Vの配線がショートすると簡単に切れてしまいます。
ヒューズが飛んでいるかどうかは、アンプのカットリレー端子にテスターを当て、DC24Vがのっているかで確認できます。もし電圧が確認できない場合はヒューズ切れの可能性が高いため、アンプ内のヒューズを新品に交換してみてください。
カットリレーの構造は現場によって異なります
今回ご紹介しているのは「コンセントタイプ」のカットリレーです。一方で、大容量の音響設備を使用している現場などでは、音響設備自体にカットリレー機能が内蔵されているケースがあります。この場合は、音響装置の本体に直接、非常放送からの信号線を接続します。
このように、現場の状況によってカットリレーの構造や結線方法は異なります。消防設備点検などの際に「カットリレー用のコンセントがどこにも見当たらない」という場合は、音響装置本体へダイレクトに配線が接続されている可能性が考えられます。
まとめ
- カットリレー配線には「常時通電」と「非常時通電」の2パターンがある
- 事前にアンプを開けて、どちらの通電タイプか確認してから施工する
- 「常時通電タイプ」の施工時はショート事故に細心の注意を払う
- 施工後に作動しない・電圧が出ない場合はアンプ内のヒューズを確認する
- 原因がわからないトラブルも焦らず一歩ずつチェックする!

(東京都行政書士会登録番号 23080416号)
村串 大輔
2001年にメカトロニクスのエンジニアとして社会人デビュー。2005年に消防設備業界に足を踏み入れ、2011年に消防設備業である株式会社タイムランにて独立営業開始。自動火災報知設備、非常放送設備、漏電火災警報器等の電気系消防設備から、 消火栓、スプリンクラー、避難器具まで数多くの施工(実際に自らの手による施工)に携わる。今までの消防に関連する申請届出は3,000件以上。2016年 功労消防設備士として東京消防庁・予防部長より表彰。→私たちについて