消防設備設置の調査方法(テナント入居編)

2019.11.06
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新規でお店や事務所をつくるときは、まず実際に現地を確認し調査する現地調査(現調)から始まります。自分たちは消防設備業者なので今後使用していく建物を消防法令に適合させるのが約目です。

そのためには建物の過去、現在、そして自分たちが手を加えた未来を知る必要があります。今回は現地調査で必要なことについて弊社の経験から書いていきたいと思います。

現地調査の内容

現調の前段階として分かる情報をあらかじめ取得することが余裕をもって仕事を納めるための秘訣です。ここで言う情報とは建物の面積と用途です。この2つの情報により入居する建物にどのような消防設備が必要になるのかを消防法令に照らし合わせられます。前もって情報があれば現調のときに必要なものと実際に設置されているもの照合していけば調査はすぐ終わります。

必要な設備が設置されていない場合はどのように設置すればよいかをすぐ検討することができます。情報を早く知ることで工数を減らせ仕事が楽になります。

何を調査するか

現場工事の調査

現地調査時に何を見るかについては次の3つです。

  • 現在設置されている設備の確認
  • 既存の設備が使えそうか
  • 今後必要になる設備を

上の3点を確認します。基本的に建築物には建物の規模(延べ面積)に応じて必要な消防設備が新築竣工時から設置されていることが大半です。テナント入居工事の場合は既存で設置されている設備を移設や増設を行います。

あらかじめ設置されている消防設備があれば、その設備が実際に使用できるかの確認をすればほぼ現調は済んだと言えるのではないでしょうか。ここで終われば簡単ですがもし設置すべき設備やその配線類が見当たらない場合は、根気強く調べる必要があります。それでもない場合は新たに設置する必要があります。

現在設置されている設備をチェック

鉄鋼造に消防設備を設置

今回の物件では新築物件に美容室の新規工事を行います。既存設備は新品が設置されていてそのまま使用可能します。設置されていた設備は次のとおりです。

  • 消火器
  • 避難器具
  • 誘導灯
  • 自動火災報知設備

よくあるシンプルな構成です。この4つの設備の構成は、延べ面積2,000㎡くらいの物件でよくある設備です。2,000㎡以上になると次の設備が追加されることになります。

  • 屋内消火栓 (無窓階を除く)
  • 非常放送

また3,000㎡以上になってくるとスプリンクラーが追加されることがあります(無窓階を除く)。消防設備は建物が大きくなればなるほど必要な設備が増えることになります。どのような設備が必要になるかはあらかじめ「建築消防アドバイス」などの書籍で確認すると良いでしょう。

既存の設備が使えそうかチェック

主流になりつつあるフラットの表示灯

先にも書いたように今回は新築物件のため既存の器具はすべて再使用します。長年使用されている物件に入居する場合は器具の劣化、老朽化しているものや型式失効【法的に古くて使えないもの】が見られるので、実際に使用できるのかを全てチェックしていきます。※建物が非特定用途の場合は型式失効しても使用できますが、製造より年月が経過しているため交換をおすすめしています。

古い火災感知器は感度が不安定となり誤作動を起こしやすくなります。特に配線関連は被覆が固くなっていたり擦り切れている場合があるため交換したいところです。

今後必要になる設備をチェック

墨出しで非常ベルの位置をプロット

消防設備は建物の面積、無窓階収容人数などの複合的な要素で設置する設備が確定します。施工前に物件概要をチェックし、設置する設備に漏れがないようにチェックします。たいていの物件ではその規模に応じた消防設備があらかじめ設置されていますが(竣工から)、事務所オンリー物件や共同住宅+事務所などの非特定用途物件の一部を物販や飲食店などの特定用途で使用する場合は注意が必要です。

何度も書いていますが、消防設備は建物の面積と入居する用途により設置する設備が決まっています。設備の基準は法令により定められているので免れることはできず、必ず設置しなければなりません。今までは必要なくても全体の用途が変わってしまうことでビル全体に設置する義務が生じる場合があるので要注意です。。

  • 延べ面積・床面積 
  • 有窓階・無窓階
  • 建物、入居部の収容人数

消防設備の設置基準はこれら3つの要素により確定します。

消火設備

消火設備については消火器が何本必要かを確認します。スプリンクラーを設置する場合は配管の太さに余裕はあるか?、消火栓がある場合はボックスの移設が必要か?などを調べます。消火器異動が簡単なので後からどうにでもできますが、スプリンクラーや消火栓は先に配管工事をする必要があるため事前に調べておく必要があります。

スプリンクラーは配管の径によって設置できるヘッドの個数が決まっているので着工開始からスムーズに施工ができれば後々あせることなく納品することができます。

避難設備 

一動作式避難器具
一動作式避難器具(弊社施工)

避難設備は誘導灯と避難器具が該当します。誘導灯は図面から設計ができるため現地調査をしなくても設計が可能なことが多いです。
避難器具は階ごとの収容人数によって決まります。共用部または、専有部に避難器具の設置があればその避難器具でまかなえるかを調べます。避難器具で注意することは階ごとで使用できる避難器具の種類が変わることです。また、特定一階段等防火対象物で「避難上有効なバルコニー」がない場合は1動作式避難器具の設置が義務付けられています。細かい基準が大変多いので見落とさないように注意が必要になります。

  • 避難ロープ【2階まで可】
  • 金属製折りたたみはしご【3階まで可】
  • 避難ハッチ、緩降機は3階以上で使用可能

特定一階段等防火対象物でバルコニーがない建物に避難器具を設置する場合は1動作式の避難器具の設置が義務になりますので注意が必要になります。

警報設備

警報設備とは、自動火災報知設備、非常警報設備を指します。自動火災報知設備は面積【特定一階段防火対象物を除く】で設置が決まり、非常警報は収容人数で設置が決まります。設置基準が細かいので面積と収容人数を調べ、自動火災報知設備の設置が必要か、あるいは非常警報設備の設置が必要かを検討する必要があります。

参考記事:自動火災報知設備の設置基準

参考記事:特定小規模施設用自動火災報知設備の設置基準

参考法令:消防法施行規則第24条

まとめ

消防設備は各設備ごとに設置地基準が異なるため事前にしっかりとした調査を行った後モレなく設計していくことが必須です。設計後は管轄消防署へ設計確認してください。

現在の建物に異なる用途を入れたい場合や、建物まるごと用途変更する場合のコンサルティングを承っております。調査が必要な場合はお問い合わせください。

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