連結送水管はあらかじめ防火対象物に消火用の配管を設置し、火災時に駆けつけた消防隊がすぐさま消火活動に入れるようにすることを目的として設置される消防設備です。
消防法施行令29条ではどのような場合に連結送水管を設けるかが記載されており、細目については消防法施行規則第31条に記載があります。ここでは施行令の基準について書いていきたいと思います。
連結送水管を設置する基準
設置が必要な防火対象物
まず、連結送水管を装備する必要がある防火対象物を見ていくと
- 地下を除く階が7以上
- 地下を除く階が5以上で延べ面積が6,000㎡以上
- 地下街で延べ面積が1,000㎡以上
- 延長50mのアーケード
- 防火対象物で道路に使用する部分
上記の条件に合うものは連結送水管を設置する必要があります。消防設備点検を実施していると上記以外の場合でも装備されている建物があります。
そのような場合は、各自治体による条例や行政指導で設置されていることがあります。
設置及び維持に関する技術上の基準
連結送水管は配管を使用しポンプ車から水を送り込むことで消火活動を行います。水を送る側を「送水口」、消火活動を行う側を「送水口」といいます。
水を放出する側の放水口は各階に設置し、その階を規定の水平距離で包含できるように設置していきます。また、階段室や非常用エレベーターホールなどの消防隊が消火活動を行いやすい場所に設ける必要があります。
設置する場所 | 水平距離 |
・地下を除く階が7以上 |
50m【3階以上の階に設置】 |
・地下街で延べ面積が1,000㎡以上 |
50m |
・延長50mのアーケード |
25m |
・防火対象物で道路に使用する部分 |
25m |
配管・送水口
配管
主配管の内径は原則100ミリメートル以上のものである必要があります。例外的に総務省令で定める場合は100mm以上でなくてもよい場合があります。その条件については消防法施行規則31条の4に記載があります。
消防長や消防署長が建物の構造や設備状況を考慮しつつ、フォグガン等を使用し定格放水量が毎分200リットル以下のもののみを使用する場合、主管の内径が設計値よりも大きい場合100mm未満でもOKですと読み取れます。
かつ、非常用エレベーターがあり放水用具を容易に運べることも付け加えられています。条文にあるように、消防長や消防署長が認めなくてはダメということなので、消防判断になることが前提となります。
(連結送水管の主管の内径の特例等)
消防法施行規則第31条の4
第三十条の四 令第二十九条第二項第二号ただし書の総務省令で定める場合は、消防長又は消防署長が、その位置、構造及び設備の状況並びに使用状況から判断して、フォグガンその他の霧状に放水することができる放水用器具(次条において「フォグガン等」という。)のうち定格放水量が二百リットル毎分以下のもののみを使用するものとして指定する防火対象物において、主管の内径が水力計算により算出された管径以上である場合とする。
2 令第二十九条第二項第四号ハただし書の総務省令で定めるものは、非常用エレベーターが設置されており、消火活動上必要な放水用器具を容易に搬送することができるものとして消防長又は消防署長が認める建築物とする。
連結送水管のメイン配管の多くは配管用炭素鋼鋼管【SGP】100Aを使用していますが、100Aの場合は内径が105.3mmとなります。建物によってはスケジュール管【STGP】を使用する場合がありますが、その場合でも内径が102.3mmとなります。
余談になりますが、スケジュール管は通常より高圧で使用する場合に配管用炭素鋼鋼管に替えて設置します。条文をみてみるとノズル先端圧力が0.6メガパスカルを超え、送水圧力が1メガパスカルを超える場合には・・・ということで、そのような条件に該当する場合はスケジュール管を使用します。
※地域によっても細部の基準が異なるので要確認
第三十一条五項ロ
消防法施行規則第31条
日本産業規格G三四四二、G三四四八、G三四五二、G三四五四若しくはG三四五九に適合する管又はこれらと同等以上の強度、耐食性及び耐熱性を有する管を使用すること。ただし、配管の設計送水圧力(ノズルの先端における放水圧力が〇・六メガパスカル(フォグガン等を使用するものとして消防長又は消防署長が指定する防火対象物にあつては、当該フォグガン等が有効に機能する放水圧力として消防長又は消防署長が指定する放水圧力とする。)以上となるように送水した場合における送水口における圧力をいう。以下この号において同じ。)が一メガパスカルを超える場合には、日本産業規格G三四四八に適合する管、G三四五四に適合する管のうち呼び厚さでスケジュール四十以上のもの若しくはG三四五九に適合する管のうち呼び厚さでスケジュール十以上のものに適合するもの又はこれらと同等以上の強度、耐食性及び耐熱性を有する管を用いなければならない。
送水口
送水口は双口で消防ポンプ車が容易に接近できることが要求されています。ポンプ車と送水口をホースで接続し建物内の消火用水を送り込むための設備なので、送水口と駐車スペースが近いに越したことはありません。
その他の基準【地下を除く階が11以上の建物に設置する場合】
地下を除く階が11以上の建物に設置する場合は別に基準が設けてあります。
- 11階以上に放水口を設置する場合は双口
- 非常電源を附設したポンプを設ける
- 放水用器具を格納したボックスを設ける【※例外あり】
高層階の消火活動は極めて困難です。そのためホースが複数使用できるように双口ということになっています。また、高層階に水を送るためには停電時でも使用できる加圧ポンプを設ける必要があります。
最後になりますが、高層階にはあらかじめ消火用放水器具【ホース、放水ノズル】を設置しておく決まりがあります。消防隊が装備を現場まで持っていく手間が省け素早い消火活動が期待されます。そのためには日頃のメンテナンスが非常に重要であります。
連結送水管に関する基準の細目は消防法施行規則31条に明文化されています。
関連条文
(連結送水管に関する基準)
消防法施行令29条
第二十九条 連結送水管は、次の各号に掲げる防火対象物に設置するものとする。
一 別表第一に掲げる建築物で、地階を除く階数が七以上のもの
二 前号に掲げるもののほか、地階を除く階数が五以上の別表第一に掲げる建築物で、延べ面積が六千平方メートル以上のもの
三 別表第一(十六の二)項に掲げる防火対象物で、延べ面積が千平方メートル以上のもの
四 別表第一(十八)項に掲げる防火対象物
五 前各号に掲げるもののほか、別表第一に掲げる防火対象物で、道路の用に供される部分を有するもの
2 前項に規定するもののほか、連結送水管の設置及び維持に関する技術上の基準は、次のとおりとする。
一 放水口は、次に掲げる防火対象物又はその階若しくはその部分ごとに、当該防火対象物又はその階若しくはその部分のいずれの場所からも一の放水口までの水平距離がそれぞれに定める距離以下となるように、かつ、階段室、非常用エレベーターの乗降ロビーその他これらに類する場所で消防隊が有効に消火活動を行うことができる位置に設けること。
イ 前項第一号及び第二号に掲げる建築物の三階以上の階 五十メートル
ロ 前項第三号に掲げる防火対象物の地階 五十メートル
ハ 前項第四号に掲げる防火対象物 二十五メートル
ニ 前項第五号に掲げる防火対象物の道路の用に供される部分 二十五メートル
二 主管の内径は、百ミリメートル以上とすること。ただし、総務省令で定める場合は、この限りでない。
三 送水口は、双口形とし、消防ポンプ自動車が容易に接近することができる位置に設けること。
四 地階を除く階数が十一以上の建築物に設置する連結送水管については、次のイからハまでに定めるところによること。
イ 当該建築物の十一階以上の部分に設ける放水口は、双口形とすること。
ロ 総務省令で定めるところにより、非常電源を附置した加圧送水装置を設けること。
ハ 総務省令で定めるところにより、放水用器具を格納した箱をイに規定する放水口に附置すること。ただし、放水用器具の搬送が容易である建築物として総務省令で定めるものについては、この限りでない。
参考記事:連結送水管の設置基準と耐圧試験について