火災予防条例による自動火災報知設備の付加設置基準について
自動火災報知設備の設置基準は消防法施行令第21条により規定されています。設置基準については基本的に「用途」×「面積」で義務になるか否かが決定します。この基準は法令によるもののため日本全国の建物について適用されます。
ここで安心するのは少し早いです。都道府県及び市区町村は議会の議決に基づき条例を制定することができます。この条例には当然に消防設備に関する条例(いわるゆ火災予防条例)が制定できるため、それぞれの自治体の風土に合わせた設置基準を設けることができます。
全ての自治体で条例が制定されているわけではないので、ご自身の物件や、業者の場合は自分が業務しているエリアの基準を把握しておくことが重要になります。弊社は東京を中心とした首都圏で業務を行っているため、首都圏の火災予防条例による付加設置について簡単に見ていきたいと思います。
(自動火災報知設備に関する基準)
e-gov:消防法施行令
第二十一条 自動火災報知設備は、次に掲げる防火対象物又はその部分に設置するものとする。
自治体により異なる条例による設置基準
東京都の場合【東京都火災予防条例41条】
東京都火災予防条例41条 自動火災報知設備の付加設置基準 | ||
共同住宅 5項ロ |
非特定 複合用途防火対象物 16項ロ |
非特定 複合用途防火対象物 16項ロ |
主要構造部が耐火又は準耐火構造以外のもの | 主要構造部が耐火又は準耐火構造以外のもの | 延面積1,000㎡以上 |
延面積200㎡以上 | 2階以上に共同住宅があり、延面積300㎡以上 | - |
指定数量の500倍以上の紙類などを貯蔵し取り扱う指定可燃物貯蔵取扱所 |
共同住宅は法令の基準によると500㎡以上で設置することになりますが、木造などの耐火、準耐火構造でない場合は条例により200㎡以上で設置する必要があります。共同住宅は火災時に死傷者を出しやすい用途のため条例により基準を絞ってあります。
用途の用途は令別表第一にて規定されていますのこここちらをご参照ください。
第四十一条
東京都火災予防条例
次に掲げる防火対象物には、自動火災報知設備を設けなければならない。
一 令別表第一(五)項ロに掲げる防火対象物(主要構造部を耐火構造としたもの又は建築基準法第二条第九号の三イ若しくはロのいずれかに該当するものを除く。)で延べ面積が二百平方メートル以上のもの
二 令別表第一(十六)項ロに掲げる防火対象物(主要構造部を耐火構造としたもの又は建築基準法第二条第九号の三イ若しくはロのいずれかに該当するものを除く。)のうち、二階以上の階を同表(五)項ロに掲げる用途に供するもので、延べ面積が三百平方メートル以上のもの
三 令別表第一(十六)項ロに掲げる防火対象物で、延べ面積が千平方メートル以上のもの
四 前各号に掲げるもののほか、別表第七に定める数量の五百倍以上の紙類等を貯蔵し、又は取り扱う指定可燃物貯蔵取扱所
京都市の場合【京都市火災予防条例41条】
京都市火災予防条例41条 自動火災報知設備の付加設置基準 | |
非特定 複合用途防火対象物 16項ロ |
非特定 複合用途防火対象物 16項ロ |
主要構造部が耐火又は準耐火構造以外のもの | 延面積1,000㎡以上 |
テレビスタジオ、工場の上階に共同住宅があり、延面積300㎡以上 |
- |
引用元:京都市火災予防条例
京都市の場合はテレビスタジオや工場の上階に共同住宅がある場合に自動火災報知設備の設置が300㎡以上に必要となっています。
福岡市の場合【福岡市火災予防条例34条の7】
福岡市火災予防条例34条の7 自動火災報知設備の付加設置基準 | |
共同住宅 5項ロ |
非特定 複合用途防火対象物 16項ロ |
主要構造部が耐火又は準耐火構造以外のもの | 延面積1,000㎡以上 |
延面積200㎡以上 | - |
福岡市火災予防条例は東京都の火災予防条例に似た規定になっています。耐火又は準耐火構造でない共同住宅は火災により死傷者数が増えてしまうため延面積でも200㎡あれば自動火災報知設備の設置が必要になるということです。
(自動火災報知設備に関する基準)
福岡市火災予防条例
第34条の7 次の各号に掲げる防火対象物又はその部分には、自動火災報知設備を設けなければならない。
(1) 令別表第1(5)項ロに掲げる防火対象物(主要構造部を耐火構造としたもの又は建築基準法第2条第9号の3イ若しくはロのいずれかに該当するものを除く。)で、延面積が200平方メートル以上のもの
(2) 令別表第1(16)項ロに掲げる防火対象物で、延面積が1,000平方メートル以上のもの
沖縄の場合【那覇市火災予防条例40条】
那覇市火災予防条例40条 自動火災報知設備の付加設置基準 |
非特定 複合用途防火対象物 16項ロ |
延面積1,000㎡以上 |
沖縄は那覇市の火災予防条例を見てみます。非特定の複合用途防火対象物は延面積1,000㎡以上で自動火災報知設備の設置が必要になります。非特定の用途を例に取れば【共同住宅、学校、図書館、博物館、美術館、神社、お寺、工場、映画スタジオ、事務所、美容室、リラクゼーション等】の用途です。
これらの用途が複数入る建物を非特定用複合防火対象物といいます。これらが複数入居する場合は延面積1,000㎡以上あるい場合は自動火災報知設備の設置が条例により義務なります。
(自動火災報知設備に関する基準)
那覇市火災予防条例
第40条 令別表第1(16)項ロに掲げる防火対象物で、延べ面積が1,000平方メートル以上のものには、自動火災報知設備を設けなければならない。
2 前項の規定により設ける自動火災報知設備は、令第21条第2項及び第3項並びに法施行規則第23条、第24条及び第24条の2の規定の例により設置し、及び維持しなければならない。
3 第1項又は令第21条第1項の規定により自動火災報知設備を設ける防火対象物には、次に定めるところにより警戒区域を設定しなければならない。(1) 地階の警戒区域は、法施行規則第23条第1項の規定にかかわらず別の警戒区域とする。
(2) 地階の階段と地上階の階段をそれぞれ異なる警戒区域とする。
(3) 階段が2以上ある場合は、それぞれ異なる警戒区域とする。
(4) 階段とエレベーター昇降路及びパイプダクト等は、それぞれ異なる警戒区域とする。
(5) 延べ面積が600平方メートル以上の防火対象物の天井の屋内に面する部分と天井裏の部分(床下の部分を含む。)をそれぞれ異なる警戒区域とする。
ざっくりとした内容ですが、自動火災報知設備を始めとした各種消防設備には条例により法令の基準をさらに細かくきていした基準を設けることができます。設備を設置する際はしっかりとリサーチすることが非常に重要です。