消防に関する処分・行政指導を行政庁・行政機関に求めることができます。

消防に関する処分・行政指導を行政庁・行政機関に求めることができます。

取引先のビルオーナーが「テナントがなかなか改修をしてくれなくて困っている」と嘆いていました。もしこの状態で火災が起こったら取り返しがつかないと非常に悩んでいました。

例えば、賃貸区画でテナントが間仕切りを変更した場合には火災感知器、誘導灯、スプリンクラーの増設、移設が必要になります。また、収容人数を増やし、規定の人数以上になった場合は避難器具の新規設置が必要になります。

賃貸借契約上テナント工事に関する消防設備の増設、移設、新設は、一般的にテナントサイドで行うことが多く、もしテナント側で消防設備工事を行わなかったら、あとはオーナーサイドは自腹を切るかどうかになってしまいます。

本来はテナントが負担することなので営利目的のオーナーとしても決断が非常に難しいことでしょう。

オーナー側がとれる対策について

まず、オーナー側としては改修にかかる見積をテナントに提示することです。オーナー側が働きかけている事実がないと防火管理者(管理権原者)の責務を全うしたということになりません。

それでも一向に改善の余地がみられない場合はどのような方法を取れば良いでしょうか。このような場合は行政機関に対して「処分等の求め」を申し出ることができます。

また、入居者がオーナー側に対して「消防設備点検を実施してくれない」「消防設備を修繕してくれない」などにも法令の根拠があれば「処分等の求め」ができます。例えばマンションに住んでいるけど点検業者が現れないなど。

処分等の求めとは【行政手続法36条の3】

鉄骨造に耐火被覆

処分等の求めとは行政手続法36条の3により、法令に違反する事実がある場合で是正のためにされる処分や行政指導がされていないと思われるものは、消防長や消防署に対して、処分や行政指導をする旨を申し出ることができるとされています。

そして、消防長、消防署は申し出があったときは必要な調査を行い、必要がある場合は処分や行政指導をしなければならないということになっています。

処分と行政指導の違い
処   分
【命令:~しなさい ~するな】
行政指導
【おねがい】

行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為

行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において、一定の行政目的を実現するために特定の者に一定の行為、不作為を求める指導、勧告、助言、その他の行為であって処分に該当しないもの

第三十六条の三 
何人も、法令に違反する事実がある場合において、その是正のためにされるべき処分又は行政指導(その根拠となる規定が法律に置かれているものに限る。)がされていないと思料するときは、当該処分をする権限を有する行政庁又は当該行政指導をする権限を有する行政機関に対し、その旨を申し出て、当該処分又は行政指導をすることを求めることができる。

 前項の申出は、次に掲げる事項を記載した申出書を提出してしなければならない。
 申出をする者の氏名又は名称及び住所又は居所
 法令に違反する事実の内容
 当該処分又は行政指導の内容
 当該処分又は行政指導の根拠となる法令の条項
 当該処分又は行政指導がされるべきであると思料する理由
 その他参考となる事項

 当該行政庁又は行政機関は、第一項の規定による申出があったときは、必要な調査を行い、その結果に基づき必要があると認めるときは、当該処分又は行政指導をしなければならない。

e-Gov行政手続法

申出書に記載すること
記載事項 記載事項の例
申し出る人の名前 誰でも申出できる
法令に違反する事実 テナントが火災感知器を設置しない
処分又は行政指導の内容 火災感知器を設置する命令(処分)
処分又は行政指導の根拠となる法令の条項 消防法施行令21条1項3号イ

処分又は行政指導がされるべきであるとする理由

火災感知器未設置(未警戒)のため、火災時発生に生命の危機を及ぼす恐れがあるため。

その他参考資料

消防設備点検報告書
平面図・天伏図・地図等

処分等の求めは誰からでもできる

消防車画像

処分等の求めは「何人も法令に違反する事実がある場合にいて」とかかれているため、違反があれば誰からでもすることができます。

極端な例ですが、自分がものすごく好きな飲食店があったとします。その飲食店は非常に素晴らしいけど、避難階段に物がギッシリで火災発生を想定すると怖くて行けないと言った場合でも処分等の求めができるとされています。

また、処分等の求めは、その根拠となる規定が法令によるものでなければならないことになっています。例えば火災予防条例21条により共同住宅に自動火災報知設備が設置されていないという場合は「行政手続条例」を根拠として処分等の求めを行うことになります。

共同住宅の自動火災報知設備の設置基準
消防法施行令21条
【内閣が定めた命令】
東京都火災予防条例41条
【東京都議会の議決にて制定】
通常階 延面積
500㎡以上
耐火、イ準耐火構造以外で
延べ面積 200㎡以上

一般的な木造住宅などが該当
※準耐火・耐火構造の木造があるのでそれ以外の木造
地階
無窓
3階以上
床面積
300㎡以上
11階以上の階 全て

参考:消防関係法令の構造について

第三十六条 
何人も、法令又は条例等に違反する事実がある場合において、その是正のためにされるべき処分(その根拠となる規定が条例等に置かれているものに限る。)又は行政指導(その根拠となる規定が法律又は条例に置かれているものに限る。)がされていないと思料するときは、当該処分をする権限を有する行政庁又は当該行政指導をする権限を有する都の機関に対し、その旨を申し出て、当該処分又は行政指導をすることを求めることができる。

2 前項の申出は、次に掲げる事項を記載した申出書を提出してしなければならない。
一 申出をする者の氏名又は名称及び住所又は居所
二 法令又は条例等に違反する事実の内容
三 当該処分又は行政指導の内容
四 当該処分又は行政指導の根拠となる法律又は条例等の条項
五 当該処分又は行政指導がされるべきであると思料する理由六 その他参考となる事項

3 当該行政庁又は都の機関は、第一項の規定による申出があったときは、必要な調査を行い、その結果に基づき必要があると認めるときは、当該処分又は行政指導をしなければならない。

東京都行政手続条例36条

まとめ

  • 法令に違反する事実がある場合は処分等の求めができる
  • 行政庁や行政機関は必要な調査を行わなければならない
  • 申出に記載事項を記入しなければならない
  • その結果により必要であれば処分、行政指導をしなければならない

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