
自動火災報知設備を初めとする消防設備は24時間365日年中無休で稼働し続けています。常に施設を監視し、生命財産を火災・災害から守ってくれています。
そんなタフな設備機器でも、使用し続けることにより経年劣化は免れず必要なときに作動しないということも考えられます。そのために、しっかりと計画を立てて定期的なメンテナンスやリニューアル工事が必要になります。
消防設備のリニューアル時期は消防法令により決まっているわけではなく、おおよその期間を目安として設定されているにすぎません。
自動火災報知設備の場合、日本火災報知器工業会が設置からの交換推奨時期を定めています。
| 火災受信機 | 15年 |
| 火災受信機・・・電子機器を多用していないもの | 20年 |
| 煙感知器 | 10年 |
| 熱感知器【半導体式】 | 10年 |
| 熱感知器 | 15年 |
| 発信機 | 20年 |
| 地区音響装置 | 20年 |
自動火災報知設備は様々機器を構成して機能しています。更新推奨時期は各機器によってまちまちです。個人的な経験からの視点で言えば、定期的にしっかりと点検やメンテナンスをしていれば示された期間より長く使えるであろうと考えております。例えば手動で火災信号を発信するための押しボタンは定期的に押さなければその状態で固まってしまいます。
消防設備点検は消防法17条の3のにより年2回行うことが義務付けられているので、もし消防署から言われたら行うというスタンスであれま間違いなく劣化が早まります。
その他劣化が早まる場合としては設置状況が悪い場合は。例えば東京のような土地の狭い場所に立っているビルでは、火災受信機や総合盤などの押しボタン類が雨や風が当たってしまうところに取り付けられていることがあります。火災受信機には防水ボックス内に取り付けれあればよいのですがそのまま屋外で風がかかりながら建物を守り続けていたりします。
このような状況下では当然に劣化が早くなります。機器類が故障しても部材手配や業者手配がすぐできるわけではないのでリニューアル時期を参考にご検討いただければよいかと思います。
火災受信機 リニューアル目安【15年・20年】

火災受信機は自動火災報知システムを制御する装置です。各所から火災信号をこの火災受信機に入力し、各階に設置している非常ベルを鳴らすための制御を行います。
また、警備会社、エレベータの停止、電気錠の解除を同時に行うことができ建物に入居する人々を安全に避難させるための仕組みが備わっています。
旧式のリレー装置を多用している火災受信機は交換の目安が20年がとされています。現行の受信機は電子部品を使用しているため旧式より若干早い15年が交換目安となっています。
劣化しやすい環境
- 湿気が多い場所に設置されている
- 開放廊下などの風通しの良い場所に設置されている
- 共用部に設置され、人の目に触れやすい場所に設置されている
湿気が多い場所や風通しの良い場所は非常に劣化しやすい環境といえます。高湿度で受信機内部のリレーや基盤が腐食したり、ホコリやチリが溜まりやすいため、基盤がショートすることで誤作動を起こす原因になります。対策としては防水ボックスを設けたり、頑丈のストロングタイプの火災受信機を使用することが挙げられます。
感知器類 10年【煙感知器・半導体の熱感知器】

煙感知器と半導体式の熱感知器は10年が交換目安とされています。
煙感知器劣化が進むと反応速度が早くなったりまたは、反応しなくなったりします。反応が早くなる感知器の特徴は空気の流れが多くあるような場所で、外気の影響を受ける場所が経験上劣化が早くなるという印象です。
煙感知器は感知器の内部設置されたLEDが常に光を飛ばし、感知器内部に煙が入ることでその光に煙がぶつかり、光を散乱させます。散乱した光は感知器内部の別の場所に設置してある受光部センサーで光を受講します。このような仕組みで煙感知器は作動します。
外気が多く煙感知器に入る場合は同時に異物も感知器内部に溜め込むことになります。そうなると感知器内部の光が受光部で受信しやすくなり誤作動が起こってしまうのです。
また、半導体の熱感知器もサーミスタを使用し電子部品により熱を感知します。劣化することでうまく機能しなくなることがあります。これらの火災感知器は10年が交換目安となっています。
熱感知器 リニューアル目安【15年】

定温式スポット型・差動式スポット型感知器はバイメタルやダイヤフラムの金属特性を使用した仕組で、基盤などは搭載されていません。これらの感知器の目安は15年とされています。この感知器は比較的安定的に長期間使用できる印象です。
画像右側のおわん型の差動式のスポット型感知器については、劣化すると誤作動をおこしやすくなります。この理由については別の記事に記載しましたのでご参照いただけますと幸いです。
発信機 リニューアル目安【20年】

発信機は手動で起動させる火災報知器です。ボタンを押して起動させることによりベルを鳴ならすことができます。また消火栓が設置されている建物では、消火栓ポンプの遠隔起動ボタンも兼ねています。
消防設備点検時に発信機ボタンを押して各種試験をおこないます。その時にベルの連動や消火栓ポンプの起動連動チェックを行いますが、未点検でボタンを押すことなく長年そのまま放置されてしまうと、ボタン自体が固着し固くなります。うまく押せたとしても戻せなくなり復旧できなくなるおそれがあります。法令通りの点検を行いしっかりとメンテナンすることが重要です。
発信機の交換は20年が目安となっています。
非常ベル リニューアル目安【20年】

非常ベルは通常DC24Vが入力されることでベルの裏側に取り付けてあるモータが動きます。そのモーターに取り付けてある機構によりモーター作動時にゴングを鳴らす仕組みです。
ベルは通常電気が流れていないものと、常に電気を送っている2種類のタイプがあります。一般型は火災発生時にDC24Vをベルに送りゴングを鳴らします。非常ベルに劣化が起こるとゴングを鳴らすためのモーター機構の動きが鈍く(固着する)なり、しっかりとベルを叩くことができなくなります。
固着する原因は屋外の雨風の影響が大きく長年外部に設置されていることでチリやホコリが侵入することです。消防設備点検実施時にベルが鳴らずに分解してみると原因のほとんどがモーター機構の固着です。固着したベルを修理しまた次回の点検時に同じベルが鳴らないことがよくあります。
ベルに関して言えば屋外に単体でベルを設置している現場では劣化が早くなるので計画的にリニューアルを交換することをおすすめいたします。屋外に設置する場合は屋外用を選択することも重要です。
20年がリニューアルの目安となっています。
リニューアルのご相談を承っております
弊社にて消防設備のリニューアルを承っております。設備についての号不明な点、ご相談などございましたらご遠慮なくお問い合わせのほどよろしくお願いいたします。
あとがき
自動火災報知設備は設置状況やメンテナンス状況により使用できる年数が変わってきます。短期間で劣化することもありますが、交換目安を過ぎていても問題なく使用できることもあります。
今までの経験から劣化は設置状況によるところが大きいという印象です。特に風が当たりやすい場所、湿気がある場所に設置されている機器類は明らかに劣化が早く何度も交換してきました。感知器などの交換が容易なものであれば比較的安全を維持できますが、火災受信機のようなすぐ対応が困難な機器類は計画を立ててリニューアルを検討していただくことを推奨いたします。
突然設備が故障してしまった場合、改修完了までの間は未警戒状態になり大変危険です。また長年使用していると交換部品がなくなることもあるため計画的な交換が望まれます。